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新型「CRF250L&ラリー」試乗インプレ速報 乗った瞬間「飛べる!」と実感できるガチオフ性能だ!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
Honda CRF250L 写真:渡辺昌彦/ホンダモーターサイクルジャパン

昨年末にフルチェンジして発売開始となったホンダの新型「CRF250L」と「CRF250 RALLY」のメディア向け試乗会に参加してきたので早速レポートしたい。

扱いやすさそのままにオフロード性能をアップ

▲CRF250L
▲CRF250L

まずは新型CRF250シリーズの概要について。従来から定評のあったオンロードでの扱いやすさはそのままに、オフロード性能をより高める方向で出力特性の改良と軽量化を進めてきたのがポイントだ。

エンジンは基本的には従来モデルの水冷4ストDOHC249cc単気筒を踏襲しつつも、吸排気系のチューニングにより、市街地やオフロードで多用する低中回転域を中心に強化。クラッチ操作の荷重も約20%低減され、新たにアシストスリッパークラッチを採用することでシフトダウン時の安定性も確保している。

また、ギヤ設定も1~5速をローレシオ化、6速をハイレシオ化することで、街乗りでの使い勝手やオフロードでの力強い加速、快適な高速クルーズを実現している。

車体面ではオフロード性能の向上を狙い、剛性バランス最適化と軽量化を図った新設計フレームを投入。エンジン搭載位置を従来比で20mm高くし、クランクケース形状を見直すことで従来モデルより30mm高い最低地上高を実現するなどオフロードでの走破性を向上。

また、前後ABSを標準装備(後輪ABSはキャンセル可能)としてオフロード走行に対応している。

街乗り向きのSTDとダート向きの「S」を設定

CRF250Lについては、フルLED化されデザインも市販モトクロッサー「CRF450R」と似たアグレッシブなイメージとなり、車重も従来比4kg軽量化。

なお、新型では日常での扱いやすさと足つき性に優れるSTD版のCRF250L(最低地上高245mm、シート高830mm)と、前後サスのストローク長を伸ばしてオフロード性能をさらに高めた「S」仕様(最低地上高285mm、シート高880mm)の2タイプを設定している。

▲CRF250L S
▲CRF250L S

▲CRF250L S
▲CRF250L S

一方、CRF250 RALLYはダカールラリー参戦マシン「CRF450 RALLY」の設計思想を受け継ぐ大型ウィンドスクリーン&カウル、フレームマウントの左右非対称2眼LEDヘッドライトなどを装備。

新たに容量12Lの大型フューエルタンクを採用した他、ハンドルウェイトやステップにラバーを追加するなどの熟成により、さらに快適なツーリング性能を実現。

また、こちらにもSTD版のCRF250 RALLY(最低地上高220mm、シート高830mm)と、前後サスストロークを伸長した「S」仕様(最低地上高275mm、シート高885mm)が用意されている。

オフロード風からリアルオフローダーへ進化

まずはCRF250Lから試乗。今回の試乗車はオフロード向けに前後サスストロークを伸ばした「S」仕様だ。見た目はボディラインがシェイプされて脚長で小顔になった感じ。よりモトクロッサーに近いデザインで、見るからに走りそうだ。

跨ってみると、しっとりとした前後サスペンションのストローク感で、スリムな車体と相まって従来比5mmアップの880mmのシート高でも、それほど高い感じはしない。グリップ位置もやや手前に引かれて、ハンドル操作もしやすくなった。すぐにスタンディングしてみたくなるライポジだ。

扱いやすいパワーでスライドも自在

エンジンをかけると弾ける排気音が小気味よく、人差し指一本でも楽に操作できるクラッチをつなぐと極低速から粘り強いトルクでスルスルと走り始める。スロットルは開けしなのレスポンスは柔らかく、絶妙の間をおいてリニアに付いてくる。基本穏やかで必要な時には力強い瞬発力を発揮する、まさにオフロード向きのパワー感だ。

高性能マシンにありがちな、パカッと開いてズルッとくる感じではなく、ジワーッときてズリズリーッとなるので、ダート走行ではコーナーでもスロットルを開けやすく、パワースライドしながら少しずつ向きを変えるなどのテクニックも使いやすい。

フレーム剛性も横方向のしなりを重視しているらしく、乗り味が柔らかいのだ。また、スリッパークラッチも付いたことでコーナー進入でのホッピングの心配をせずに大胆にシフトダウンもできる。車体も軽くなったおかげで姿勢をコントロールしやすい等々、良いことずくめだ。

脚長、腰高、スリムと3拍子揃ってフワリと飛ぶ

脚長になって最低地上高もアップし、尚かつ軽量化されているとくれば、答えは火を見るよりも明らかで、走り出した瞬間に「飛べる」マシンになったと分かる。トルクフルな出力特性によって短い助走で加速し、フワッと宙に舞い上がる。

着地も猫足でソフトランディング。前後ABSはオフロードにも対応したタイプで、試しにヌタヌタの路面で思い切りブレーキをかけてみたが、安定して減速することができた。ABSをオフにすれば、フロントでしっかり止めつつ最後にブレーキターンで向きを変えるなどのテクニックも使いやすい。

モトクロッサーなどの競技用マシンなどに比べれば、エンジンは穏やかで足まわりの当たりはずっとソフトなので、コース走行では初中級レベルでも扱いやすいだろうし、林道ツーリングにはまさにもってこいだと思う。

ツーリング派におすすめのCRF250 RALLY

CRF250 RALLYのほうはというと、大型スクリーンにカウル、大容量タンクとワイドシートが付いて高速クルーズでの快適性と利便性が格段にアップしている分、車重はCRF250Lに対して12kg重くなったことで運動性能の面ではやはり一歩譲る部分はある。フロントがややヘビーな感じでそれが安定感につながっているが、ダートでは振り回して乗る感じではない。航続距離の長さを生かして、林道をつなぎながらの長距離ツーリングなどは特におすすめだろう。

▲CRF250 RALLY
▲CRF250 RALLY

▲CRF250 RALLY
▲CRF250 RALLY

ということで、双方合わせて4タイプの設定があるので、目的や好みに応じて自分好みの一台をチョイスすれば間違いないと思う。総じて良くできた新型モデルで、オンもオフも存分に気持ちよく走れたのが印象的だった。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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