【目黒区】学芸大学で立呑み席オンリーで勝負、ツゥを唸らせるメニューがずらりの「立呑み 鉄砲玉」
学芸大学駅東口から商店街を進み、「恭文堂書店」の手前を右に曲がって徒歩約1分。厨房をL字型に囲むカウンター席は10名ぐらいが利用できます。
今回、「立呑み 鉄砲玉」大将である正木勇貴(まさき ゆうき)さんにインタビュー。お店オープンまでのいきさつや人気メニューなどについてご紹介したいと思います。
「立呑み 鉄砲玉」は、学芸大学の繁盛店「ラーメンBARスナック、居酒屋」の2号店
「立呑み 鉄砲玉」は、同じ学芸大学にある「ラーメンBARスナック、居酒屋<通称:おっぱいラーメン(R)>」を経営している早川貴子さん(株式会社シゲキがほしい)がオーナー。
大将の正木さんが早川さんと旧知の仲だったことから、店長兼総料理長として就任したそうです。
正木さんは学生時代、野球に打ち込むスポーツ少年。実家は高知県で、割烹料理店を営むご両親のもとで育ちます。
高校卒業後、地元の料亭に就職するものの20歳で上京。六本木ヒルズの「焼きとり 八兵衛」などで腕を磨きました。
その後、高知に一度戻ったそうですが25歳の頃に再び東京へ。学芸大学の「立呑み晩杯屋(現在は閉店)」の立ち上げに携わったことで、立呑み酒場の面白さに感銘を受けたそうです。
「晩杯屋の仕事をする前は、高価格帯のお店で働いていたので、来店するお客様は高いお金を払って飲食できる人たちばかり。
しかし、立呑み酒場には実にいろいろな人が来る。お金持ちもいれば、年金暮らしという人もいます。
若い人から年配者まで幅広い世代が集まり、分け隔てなく楽しくお酒を飲んでいく。古くて懐かしくて楽しい、立呑み酒場にはイマドキの飲食店にはない、ワクワクするような活気にあふれていたんです」と正木さん。
おっぱいラーメン(R) 2号店として、「立呑み 鉄砲玉」の話をもらったときは、二つ返事で引き受けたそうです。
最近の飲み屋は、同じ年代の人だけが集まる店ばかりでつまらない
「最近の飲食店を見ていると、ターゲットを明確に絞り過ぎていて、若者だけが集まる店、大人だけが楽しい店、というように、いろんな世代が縦に繋がるような場所が少なくなっている気がします」と正木さん。
確かに最近、たまたま居酒屋に入り、若者ばかりで居づらい思いをしたことがあります。
数十年前は、どの酒場もいろんな世代が出入りし、たまたま近くにいた人と意気投合して、一緒に仕事をする、草野球チームを作って遊ぶ、ということがよくありました。
お酒を飲むことは遊びと仕事の延長。しかし、最近ではすっかりそういう機会が失われてしまったなと、私も感じています。
「立呑み 鉄砲玉」は、若者から年配者まで幅広い客層が集まる店になっている
お店がオープンして約1か月、大将の正木さんの狙い通り、いろいろな世代のお客様が来店し、毎日賑やかに、楽しくお酒を飲む場となっているようです。
「今のところ、15時にお店を開けてどの時間帯も比較的途切れずに、いろいろな顔触れのお客様が来店してくださっています。
一応、お1人様ワンドリンク、ワンフードの注文、混雑時には1時間で切り上げるなどのお願いは掲示していますが、実際はお客様の判断にお任せしている」と正木さん。
数千円飲んで、食べてさっと帰る方もいれば、1万以上も使って帰る方も。混雑してきたら会計して、後から来たお客様に席を譲るなど、皆さん自然に振舞っていらっしゃるようです。
腰を落ち着けてじっくり飲むのもいいですが、こういうお店でワイワイ楽しく飲んで、気持ちよく帰るって面白い、と感じる方は意外に多いのではないでしょうか。
「立呑み 鉄砲玉」の看板メニューは生のマグロを使ったお刺身
正木さんは「立呑み 鉄砲玉」オープン前、マグロ専門の立呑み屋「おぐろのまぐろ 池袋ロサ店」の店長を務めていました。
豊洲市場直送、マグロの目利きが仕入れる本マグロがウリのお店。この時の人脈を活かして「立呑み 鉄砲玉」では希少な「生のマグロ」を仕入れる独自のルートを持っています。
毎日入荷した本マグロの様々な部位をお刺身に盛り合わせて提供。取材した日は大トロに限りなく近い中トロと赤身をいただきました。
上品な脂のトロとさっぱりとした赤身。冷凍物に比べ、舌触り、奥行きのある味わいが格別でした。
丁寧な下ごしらえで、絶品に仕上がっている「名物 牛モツ煮込み」
もう一つ、「立呑み 鉄砲玉」でぜひ食べて欲しいのが「名物 牛モツ煮込み」。私がお邪魔した際は、まだ開店前ということで煮込みが足りないと正木さんはおっしゃいますが、それでも十分においしいです。
モツをていねいに下ごしらえしているのがわかります。普段、あまり肉類を好んで食べないのですが、この牛モツ煮込みは別格でした。
「鉄砲玉」では一味唐辛子と七味唐辛子を用意しているので、好きな方を選んで牛モツ煮込みにかけていただけるのは嬉しいですね。
めったにお目にかかれないくらかけ豆を使った「枝豆より美味しい浸し豆」
長野県産の希少なくらかけ豆を絶妙なお出汁で味付けした「枝豆より美味しい浸し豆」です。他の居酒屋でも出しているところはあまりないのではないでしょうか。
くらかけ豆とは馬に鞍をかけたような模様が特徴の青大豆のこと。生産量が少なく、スーパーなどではまず売っていないそうです。
海苔のような風味と大豆本来の甘みがあるといわれていますが、ともかく豆の風味がしっかりしてて、味わい深いやさしいおいしさ。お出汁がしみていて食べ始めると止まらなくなりました。
酒呑みにはたまらない自家製肉味噌を添えた「パリパリピーマン」
メニューを見ていてすごく気になったのが「パリパリピーマン」。正木さんのご厚意でちょっぴり試食させていただきました。
水と塩に漬けてパリっとさせたみずみずしいピーマンに、豚肉と2種類の味噌で手作りしたオリジナルの肉味噌をつけていただきます。
本当にピーマンがパリパリでびっくりするくらい! シャキッとした歯ごたえに感動しました。
添えられている肉味噌の風味がよくこれだけでお酒が飲めると思ったら、やっぱりいらっしゃいました。肉味噌だけを注文するお客様。呑兵衛の考えることはみな同じです。
この他、居酒屋定番のポテサラは、マヨネーズ少なめで生クリームとマグロの酒盗で味付けしたオリジナルの「酒盗ポテトサラダ」。
通常、ちくわの磯辺揚げは衣に青のりを混ぜて揚げたものですが、こちらの「鯛ちくわ磯辺揚げ」は、明石産の海苔を使った自家製海苔の佃煮とわさびをつけて食べるユニークな一品となっています。
「豚の唐揚げ(どろソース)なども人気。ダシ巻き玉子を注文すると目の前で焼いて出してくれるのは、料亭などで腕を磨いてきた正木さんならではです。
定番メニューの他、その日のおすすめはホワイトボードに手書き。お値段を見ると学芸大学とは思えないリーズナブルさで、それだけでもワクワクが止まりません。
人気のドリンクは「なかのお代り」OKのサワー3種類
「立呑み 鉄砲玉」では2杯目に「なかのお代り」が頼めるシステムとなっています。生レモンサワーや最高級梅干しサワー、玄米茶割りは人気のトップ3ドリンク。
例えば、生レモンサワーの1杯目は430円(税込)、2杯目は250円(税込)とかなりリーズナブル。人気があるのもうなずけます。
私が気に入ったのは「最高級梅干しサワー」。ごろりと大きい梅干しと梅シソが入っています。
梅の香り、風味が素晴らしく、少しずつ果肉をつぶしながらいただきました。おそらくもう2杯、「なかのお代り」いけます。
玄米茶割りは「なかのお代り」を想定し、あえてティーバッグで提供。抹茶が入っているので見た目も涼し気で、グリーンのグラデーションがきれいです。
そしてもう1杯、ユニークなのがすだちポン酢サワー。これが意外においしくてびっくりです。すだちを絞って香りをプラスするととってもさわやか。
暑い夏、元気がでますし、脂っこいメニューと合わせてもいい気がしました。
日本酒は1合から、オリジナルロゴを入れた徳利と枡で提供。
おいしいマグロ刺しにはやっぱり日本酒が合いますよね。
麦焼酎は「情け嶋」、芋焼酎は「明るい農村」をラインナップ。もちろん生ビールもあります。
学芸大学で、あえて正統派の立呑みに挑戦、女性1人でも気兼ねなく飲める「立呑み 鉄砲玉」
立呑みはともかく、「立っていられないほど酔っぱらう前に帰る」が鉄則。滞在時間は1時間制なので、さっと訪れて、さっと帰るが粋ですね。
仕事帰りや食事前の景気づけに、友人との待ち合わせにもぴったりです。
数十年前、大阪・梅田で初めて立呑み酒場に行き「こういう店が東京にもあったら」と思ったことを覚えています。
学芸大学では立呑み席があるお店でも、テーブル席やベンチシートなども設けてあるところばかりです。「立呑み 鉄砲玉」のように潔く、オールスタンディングで真向勝負する店は学芸大学駅周辺では見かけません。
名店で腕を磨いてきた正木さんならではのこだわりや工夫のあるメニュー。居酒屋らしい気取らないラインナップですが、器や盛り付け、下ごしらえ、味付けなど、隅々まで目配りが行き届いているのがわかります。
舌の肥えた方でも満足させる凄い立呑み酒場が誕生しました。わざわざ学芸大学に足を運びたいと思わせる「立呑み 鉄砲玉」。
このお店が学芸大学に立呑み文化を根付かせてくれるのではと、期待しています。女性1人でも気兼ねなく楽しめますので、皆さんもぜひ。
■取材協力
立呑み 鉄砲玉
【店舗概要】
立呑み 鉄砲玉
営業時間:15時~23時、不定休
住所:東京都目黒区鷹番3-3-19 吉田店舗101
問合せ:03-4400-8974