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稲垣啓太、日本代表首脳陣からの「厳しい話」に感銘。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
身長186センチ、体重116キロの32歳(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 日本代表としての誇りを持ち、日本代表としての責任を果たしたいと誓う。具体的に何をすべきか、明確に理解する。

 稲垣啓太。運動量が豊富でかつ理論派の左プロップとして、ワールドカップには過去2大会に出場してきた。同フランス大会を今秋に控え、いまは埼玉パナソニックワイルドナイツの一員として国内リーグワンを戦う。

 リーグワンが休息週に入った2月中旬の週末には、水面下で開かれた日本代表のミーティング合宿へ参加。気持ちを新たに、18日に再開のリーグワン中盤戦を見据える。

 16日、埼玉県内での練習後、記者団に応じた。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

——リーグワンは休息週を挟みました。

「個人にとってもチームにとってもいい時間でした。休み方って、人それぞれ。僕は1週間、何もしないことはないので、1週間のうちに3~4日はトレーニングを。(身体を)動かしながら、休みを入れていく。普段とやることは変わらないです。それが自分の能力向上に繋がると思うので。ただ、バランスを取ってしっかり休むことはできた。久しぶりにチームで集まったら、(それぞれ)いい顔をしていた」

——週末は、都内で日本代表の選手が集まったようですが。

「大事なことだと思いますよ。日本代表って、日本代表でプレーして結果を残したいから、招集され、それを名誉だと思ってやっているので。それが嫌なら行かなきゃいいだけの話で、そこで結果を出したいのなら、なおかつ今年ワールドカップがあるのなら、こういうスケジュールのなかで(集まりが)あるのは当然だと思います。僕は。それがバイウィークにあった。自分のこと、チームのこと、この先のこと…。すごく、いい時間が取れたと思います」

——ミーティングでは。

「いまは皆、リーグワンでプレーしているわけだけれども、(代表首脳陣は)リーグワンの結果を見ているのではない。リーグワンの試合のなかで、個人個人がやろうとしていること、課題が、できているかどうかを見ている…と。そこ(課題)に取り組めていないのであれば、取り組む必要がある。それはチーム(各所属先)のためにもなる。また、それができないのであれば、日本代表には、入れない…そういう、厳しい話がありました。

 選手間だけでコミュニケーションを取るのではなく、今後はスタッフも濃いコミュニケーションを取る…。そういう、スケジュールの話もありました。

(日本代表が)どういうラグビーを目指すのかは、変わらずに持っている。ただそれを目指すにあたって、現状、こうだよね、という、皆がわかっていることをデータとして出してきたことも。フィジカルの数値、フィットネスの数値が、何パーセント、低下したか、向上したか。いい結果が出た時はいつだったか。その時には戻れないのか。…という話もありました。

 リーグ戦(リーグワン)の評価についての話は、ないです。その評価は、これからしていくと。

 じゃあ、どの評価をされたのか。

 ストレングスの数値、フィットネスの数値の単純比較です。また代表でプレーした時のスタッツ(各種プレーなどの統計)。『この試合の時はこうだったが、なぜ平均するとここまで下がるのか』などを、個人、個人が(コーチ陣ひとりひとりと)1対1で話し、受け入れた」

——「スタッツ」とは具体的に。

「直近で言えば、オールブラックス戦(昨年10月のニュージーランド代表戦)からフランス代表戦(11月下旬)のスタッツの平均、なおかつ、その前年度、さらにその前年度、2019年(ワールドカップ日本大会)…と、それぞれがどう変化しているのか、低下することで、向上することで、どんな変化が生まれているか…というところを見ました」

——日本大会までの間とは準備状況が異なる。

「2019年の時は、この時期、リーグ戦はもうなかったですよね(2018年12月までにトップリーグは終了)。サンウルブズ、ウルフパック(日本代表を支える組織体)に行ったり来たりし、代表と密にコミュニケーションを取っていた。そのコミュニケーションを(5月までリーグワンを戦いながらワールドカップを見据える)このスケジューリングでも、やらなくてはいけない、ということです」

——今回のミーティングを受け、これから稲垣さんはどんなことにフォーカスしていきたいですか。

「代表でも、ここ(ワイルドナイツ)でも、僕の役割は変わらないです。まずはセットピースでボールを出すこと、プレッシャーをかけること。それがプロップの第一前提です。

 その次に何をしなきゃいけないのか。アタックでは相手ディフェンスをトラップすること。まぁ、寄せることですよね(結果、別な場所にスペースが生まれる)。寄せるために何をするかのディテールは、皆さん、わかっていると思います。さんざん、僕が(これまでの取材機会で)言ってきたので。そこの強化を、もう一度やる。これは僕ひとりができても意味がない。全員ができるようにしないと。コミュニケーションを取って、やっていけたらと。

 また、相手にプレッシャーをかけるディフェンスをする。そのためにはリセットスピードを速くする。タックルして、起き上がることは速くできる。ただ、どこをもってリセットとするか。起き上がって、次のポジショニングにいかに速く入れるかです」

 来るべき大一番へ着々と準備を重ねる。18日は本拠地の熊谷ラグビー場で、チームの開幕8連勝を懸けて花園近鉄ライナーズとぶつかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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