4マス全体への業種別広告費の10年間の変化をさぐる(変化率や特定業種動向)
・「2017年 日本の広告費」によれば2007年から2017年の10年間に4マスへの広告費を増やした業種は「情報・通信」「家庭用品」のみ。
・10年間に4マスへの広告費を減らした業種の、減らした度合いはさまざま。「案内・その他」のように6割以上も減らした業種もある。
・4マスへの広告費の2005年以降の動向を見ると、多くの業種でリーマンショックで大きく減らしているが、その後回復した業種もあれば、ほぼそのまま減少が継続している業種もある。
電通は2018年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2017年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に広告を出稿した業種の4マス(4大従来型メディア。テレビメディア、ラジオ、新聞、雑誌。今件記事ではテレビメディアにおいて衛星メディア関連は除かれている)全体における広告費の10年間での変化を確認する。
直近分となる2017年における媒体別広告費を10年前の2007年分と併記したのが次の図。
単純な総額(4大従来型メディア限定)では2007年が3兆5699億円、2017年が2兆6638億円とほぼ3/4に減少。増加したのは「情報・通信」「家庭用品」のみで、あとはすべて減少。この10年間でどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。
これを金額では無く、10年の経過における増減比率で見たのが次のグラフ。
10年で金額を上乗せできたのは2業種「通信・情報」「家庭用品」のみだが、それ以外の業種の下げ度合は一様では無く、大きな違いを見せていることが分かる。
50%を超える下げ幅、つまり半減を超えた減り方を示しているのは「案内・その他」のみ。しかしその2つ以外にも3割4割減は当たり前な状況。
もっとも、これら下げ幅の大きい業種が、すべて同じ理由によって広告費を落としているとは限らない。「エネルギー・素材・機械」などのように業界そのものが不調なもの、「家電・AV機器」のようにインターネット広告をはじめとした4大従来型メディア「以外」との相性がよいためにそちらにシフトした結果によるものなど、いくつかの複数理由が考えられる。
変移が気になる業種を4つほど抽出し、2005年以降の動向を記した。また変移の具合が分かりやすいように、それぞれの業種における2005年の額面を基準とし、どれほど増減をしたのかを比率算出したグラフも併記する。金融危機・リーマンショック後に大きな減少を示していること、「情報・通信」はその後回復して今後も伸びが期待できるが、「自動車・関連品」「金融・保険」は回復ぶりが弱く、この数年では失速している。「飲料・嗜好品」は回復を果たせず、実質的には失速状態を継続している。
残念ながら「日本の広告費」では4大従来型媒体以外の業種別出稿額推移は公開されていないので、単に4マスから距離を置き他メディアにシフトしているのか、広告費そのものを減らしているかまでは判断が難しいが、該当業界で広告媒体に対する評価の点において、大きな動きが生じていることに違いは無い。
蛇足ではあるが、「出版」の広告費を抽出した結果が次のグラフ。
金融危機・リーマンショックで大きく下げた状況は他業種と変わらないが、その後上昇の動きが無い。震災翌年にはわずかに上昇しているが、その後は下降する一方。「飲食・嗜好品」と動きが似ており、少なからぬインターネット広告へのシフトが生じているものと考えられる。同時に出版業界の苦しい実情もうかがいしれよう。
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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。
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