トランプ米大統領が派遣したとされる艦隊は「無敵艦隊」にあらず
朝鮮半島情勢の緊迫化の中で、先日トランプ米大統領は米国のニュース専門局Fox Newsのインタビューに答える形で、状況に対応するための行動として艦隊を派遣したと言及した。ただしこれについてマティス米国防長官は「特定の事案に関連したものでは無く、将来に備えてもっとも正しい配置にしたまで」としている。
今件に絡んで日本の通信社、時事通信と共同通信は相次ぎ「無敵艦隊を派遣」と伝えている。
いずれもFox Newsのインタビュー内容を一次ソースとするものだが、これに関するFox News自身の該当公知内容は次の通りとなっている。
「無敵艦隊」に該当する部分は「an armada」に該当する。しかしながらこれは「無敵艦隊」とは読まない。「the Armada」(「armada」の頭が大文字)ならば、歴史上有名なスペインの無敵艦隊(1588年にアルマダの海戦で英国海軍に敗北し、スペインの植民地政策は大打撃を受けた。この事から「無敵艦隊」とは単純に「最強の艦隊」だけでなく「過剰な自信」「最強であると威勢を張っているが将来負ける予兆がある」的な皮肉をも意味する)を指し、記事の通り「無敵艦隊」の言及で正しいが、本文の限りでは「an armada」なので「(大規模な)艦隊」以上の意味は無い。
ちなみに言及内容は直訳すると「我々は大変強力な艦隊を派遣した。また、大変強力な潜水艦群を有している」となる。またそのままヤフー翻訳とグーグル翻訳にかけても、「無敵艦隊」の文言は出てこない。
同じソースを基にしたロイター電では「無敵艦隊」ではなく「強力な艦隊」と正しい訳を用いている。
「無敵艦隊」とは単純な誤訳の可能性もある。しかし共同通信と時事通信双方が同じ誤訳を同じタイミングで成すのも奇妙な話ではある。「トランプ大統領だからこれぐらい威勢のよい表現の方が良いだろう」との意図、印象論的な観点で、あえて「無敵艦隊」の表記を用いたとするのなら、まさにこれこそがフェイクニュースと評されても仕方がない事案ではある(さらに「無敵艦隊」は上記説明の通り、皮肉も多分に混じった表現)。どちらが真相なのかは通信社の中の人のみぞ知る、ではあるのだが。
■関連記事: