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トランプ米大統領が派遣したとされる艦隊は「無敵艦隊」にあらず

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 該当打撃群の主軸艦、空母カール・ビンソン(写真:ロイター/アフロ)

朝鮮半島情勢の緊迫化の中で、先日トランプ米大統領は米国のニュース専門局Fox Newsのインタビューに答える形で、状況に対応するための行動として艦隊を派遣したと言及した。ただしこれについてマティス米国防長官は「特定の事案に関連したものでは無く、将来に備えてもっとも正しい配置にしたまで」としている。

今件に絡んで日本の通信社、時事通信と共同通信は相次ぎ「無敵艦隊を派遣」と伝えている。

【ワシントン時事】米メディアによると、トランプ大統領は12日に放送予定のFOXビジネス・ネットワークのインタビューで、北朝鮮対応について「『無敵艦隊』を派遣した」と語った。

出典:北朝鮮へ「無敵艦隊」派遣=挑発容認しないと米大統領(時事通信)

【ワシントン共同】トランプ米大統領は11日、経済専門チャンネルFOXビジネスのインタビューで、原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群を朝鮮半島付近に向かわせたことについて「無敵艦隊を派遣した。空母よりずっと強力な潜水艦も持っている」と述べ、北朝鮮をけん制した。

出典:「無敵艦隊を派遣」と米大統領 北朝鮮をけん制(共同通信)

いずれもFox Newsのインタビュー内容を一次ソースとするものだが、これに関するFox News自身の該当公知内容は次の通りとなっている。

DONALD TRUMP, PRESIDENT OF THE UNITED STATES: We are sending an armada, very powerful. We have submarines, very powerful. Far more powerful than the aircraft carrier that I can tell you. And we have the best military people on earth and I will say this, he is doing the wrong thing.

出典:Newt Gingrich and Robby Mook weigh in on Trump's foreign policy strategy(Fox News)

「無敵艦隊」に該当する部分は「an armada」に該当する。しかしながらこれは「無敵艦隊」とは読まない。「the Armada」(「armada」の頭が大文字)ならば、歴史上有名なスペインの無敵艦隊(1588年にアルマダの海戦で英国海軍に敗北し、スペインの植民地政策は大打撃を受けた。この事から「無敵艦隊」とは単純に「最強の艦隊」だけでなく「過剰な自信」「最強であると威勢を張っているが将来負ける予兆がある」的な皮肉をも意味する)を指し、記事の通り「無敵艦隊」の言及で正しいが、本文の限りでは「an armada」なので「(大規模な)艦隊」以上の意味は無い。

ちなみに言及内容は直訳すると「我々は大変強力な艦隊を派遣した。また、大変強力な潜水艦群を有している」となる。またそのままヤフー翻訳とグーグル翻訳にかけても、「無敵艦隊」の文言は出てこない。

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↑ それぞれ原文をヤフー翻訳とグーグル翻訳にかけた結果
↑ それぞれ原文をヤフー翻訳とグーグル翻訳にかけた結果

同じソースを基にしたロイター電では「無敵艦隊」ではなく「強力な艦隊」と正しい訳を用いている。

[平壌/ワシントン 11日 ロイター]- トランプ米大統領が「強力な艦隊」と呼ぶ空母打撃群が西太平洋に向かうなか、北朝鮮の国営メディアは11日、米国による先制攻撃の兆候があれば米国に核攻撃すると警告した。

出典:「強力な艦隊」派遣とトランプ氏、北朝鮮は核攻撃を警告(ロイター)

「無敵艦隊」とは単純な誤訳の可能性もある。しかし共同通信と時事通信双方が同じ誤訳を同じタイミングで成すのも奇妙な話ではある。「トランプ大統領だからこれぐらい威勢のよい表現の方が良いだろう」との意図、印象論的な観点で、あえて「無敵艦隊」の表記を用いたとするのなら、まさにこれこそがフェイクニュースと評されても仕方がない事案ではある(さらに「無敵艦隊」は上記説明の通り、皮肉も多分に混じった表現)。どちらが真相なのかは通信社の中の人のみぞ知る、ではあるのだが。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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