「にわか」の提案~W杯後のラグビーのために
アジアで初めて開催されたラグビー・ワールドカップ2019日本大会は、概ね成功裏に終わった。台風被害により3試合が中止になり、災害対応について課題を残したとはいえ、ビル・ボーモント会長が「開催国として最高だった」と激賞したのは、まんざらお世辞でもあるまい。
この大会で、日本国内でもラグビーへの注目が一挙に上がり、「にわかファン」なる言葉が流行語化している。
決勝戦も視聴率20%超え
日本代表の活躍で、テレビの視聴率もうなぎ上り。
11月3日付朝日新聞によると、9月6日に日本テレビが生放送したテストマッチ、日本―南アフリカ戦の平均視聴率は6%台だった。それが、本番になると、こうなった。
ビデオリサーチ社によると、1次リーグの日本戦4試合のいずれかのテレビ生中継を、リアルタイムで視聴した人は、日本全国で推計約7,903万人に上る、とのことだ。
日本が敗退した後にも、10月27日に日本テレビ系で生中継された準決勝、ウェールズ対南アフリカ(午後5時45分~8時03分)の平均視聴率は19.5%、試合終了の場面での瞬間最高視聴率は26.9%を記録。南アフリカ対イングランドの決勝戦も平均視聴率が、関東地区で20.5%に達した。決勝戦は、NHK-BS1でも中継していた。そちらを見た人も少なくなかったろうから、実際にリアルタイム視聴した人はかなりの数になるのではないか。
「にわか」の声も聞いて
スポーツ関係者は口々に、この大会でラグビーの魅力を知った「にわかファン」をどう定着させるかが、今後の課題だと指摘している。その通りだろう。
問題は、どうやって、という点。様々な専門家が知恵を出すのだろうが、「にわか」の意見も聞いてもらいたい。
私自身、前回、2015年のイングランド大会で、日本代表が南アフリカを破るなど大活躍をしたのをテレビで見て、「にわかファン」になった。それが、4年間、そこそこのファンを続けられ、今回でさらにラグビーを熱愛するようになったのは、よき「師匠」に恵まれたお陰だ。
「ナマ」で知る競技の魅力
「1度ナマの試合を見てみたいな」
イングランド大会の直後、「にわかファン」となった私のそんなつぶやきを聞いて、あるラグビー好きの友人が、秩父宮ラグビー場で行われるトップリーグの試合観戦に誘ってくれた。広々したスタジアムの解放感、スクラムで体と体がぶつかり合う音も聞こえ、迫力のある勝負にワクワクした。
その後、この友人の誘いでトップリーグやスーパーリーグのサンウルブズの試合を見に行くようになった。これらの試合では、審判の判断などについて会場の大型モニターで説明があり、加えて友人が「師匠」として隣でルールや選手についての解説をしてくれるので、「にわか」でも十分楽しめた。
2016年4月に、サンウルブズがジャガーズ(アルゼンチン)を相手に36対28で歴史的な初勝利をした時も、秩父宮ラグビー場で観戦し、応援し、大興奮した。こういう体験をすると、次にまた見に行きたくなる。贔屓のチームが負けた時には残念だが、たいていは力の差なのであきらめがつき、「もっと強くなって」と応援したくなる。
そんなことを繰り返していくうちに、今回のワールドカップを迎え、さらにハマることになった。オペラや歌舞伎もそうだが、やはりナマには格別の魅力がある。1度ナマを経験した後だと、テレビで観戦していても、現実の空間をイメージする想像力が働いて、なお楽しい。
ラグビー好きは、よき「師匠」になって
まもなく、トップリーグ2020年のチケット販売が始まる。ワールドカップで活躍した強豪国の選手のプレーが、トップリーグでも見られる。決勝で最優秀選手に選ばれた南アフリカのフェルミューレン選手はクボタスピアーズの一員だし、ニュージーランドのキーラン・リード主将がトヨタ自動車ヴェルブリッツに入り、日本代表の姫野和樹選手のチームメイトになる。さらに、全国大学選手権や全国高校ラグビーもある。
ラグビーの経験者やラグビー好きでずっと見ているというオールドファンは、どうか近くにいる「にわか」をナマの試合に誘ってあげて欲しい。観戦時や試合後のお茶やビールの時に、ルールなどをちょこちょこと解説してあげると、なおよい。こういう「師匠」役になる人が、身近にいるかいないかで、「にわか」がファンとして定着するか、熱が冷めてしまうか分かれるのではないか、と思う。
以上、「にわか」からの提案です。