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食費7万6円、医療費は1万6514円…年金暮らしをしているお年寄り夫婦のお財布事情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
年金生活をしているお年寄り夫婦のお財布事情は。(写真:アフロ)

職場から引退し、年金、そして蓄財の取り崩しで生活を営むようになった無職高齢層は、今後さらに数を増加することが予想されるため、その生活様式には大いに注目が集まっている。今回は総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果を基に、世帯主およびその配偶者のみの夫婦世帯で、その双方が65歳以上、そして有業者がいない高齢年金生活世帯における、平均的なライフスタイルの現状を、お財布事情の観点から確認する。

次以降に示すのはお金のやりくりの内容。実収入(勤め先収入や事業収入、内職収入、財産収入、社会保障給付など実質的に資産の増加となる収入を集めた収入)と、実支出(税金や社会保険料などの支出を集めた「非消費支出」と、生活費を意味する「消費支出」、黒字(実収入から実支出を引いたもの)の合計)の内訳を、具体的金額と比率の面からそれぞれ見ていく。

なお今件世帯においては、実収入だけでは生活費をまかないきれないため、実支出と帳尻を合わせるために貯蓄の取り崩しが行われている。実収入の部分に「+不足分」が加わっているのはこのため。当然黒字の類はない。

↑ 家計収支の構成(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、円)(2019年)

↑ 家計収支の構成(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、比率)(2019年)
↑ 家計収支の構成(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、比率)(2019年)

↑ 家計収支の構成(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、支出のみ、円)(2019年)
↑ 家計収支の構成(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、支出のみ、円)(2019年)

収入は年金(社会保障給付)やその他の収入(株式の配当などの財産収入、仕送り金)など。それだけでは実支出をわずかにカバーしきれず、不足分は貯蓄の取り崩しで補っている。これが936円。実質的にほぼ年金でまかなえてしまっていると解釈してもよい金額。

非消費支出は11.3%。住居費は7.0%と小さめだが、その分食費の割合は大きく26.4%とおおよそ1/4を示している。食へのこだわりが見えている。交通・通信費も負担が大きく1割強。さらに医療費などは1万6000円強を示しており、若年層世帯(二人以上世帯のうち勤労者世帯で世帯主年齢が29歳以下では1万89円)と比べて1.5倍ほどにふくらんでいる。また「その他の消費支出」が15.5%と大きめだが、これは交際費によるところが大きい。

今件はあくまでも平均的な無職高齢夫婦世帯のお財布事情。その年齢に達するまでの過ごし方で、実情は大きな違いを見せる。今属性にあるすべての人が、同じような内情にあるわけではないことに注意が必要である。

他方、今後ますます増加する年金生活で日々を過ごす無職高齢夫婦世帯の内部事情を推し量るのには、有益な値であることに違いはあるまい。

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※全国家計構造調査

家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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