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ジャフコ、首絞めセクハラと「退職勧奨」 代理人弁護士が会見「責任否定、重大な問題」

小川たまかライター
左から指宿昭一弁護士、髙橋済弁護士(筆者撮影)

 大手ベンチャーキャピタル・ジャフコグループに勤務していた女性が男性社員2人からセクハラや暴行を受け、その後、退職勧奨の末に雇い止めにあったとして、女性の代理人弁護士が都内で会見を行った。

 女性の被害については、週刊文春電子版が10月9日に報じている。参考)タイミーを上場させたベンチャー投資最大手「ジャフコ」で卑劣セクハラが起きていた!「首を絞められ胸を触られ…」《被害女性が告発》(2024年10月9日/週刊文春電子版)

首を絞めて胸を触る

男性らは加害行為を認めて謝罪

 会見での説明によれば、女性は2018年11月に契約社員として入社。その頃から、男性社員A氏から深夜に執拗に「鬼電」があったり、B氏から懇親会の席で、交際相手がいない男性社員を話題に出して「こいつにやらせてやって」と言われるなどのハラスメント行為があった。

 2019年秋には深夜0時過ぎにA氏とB氏から電話があり、「(今から酒席へ)来ないと仕事に協力しない」などと約1時間にわたってしつこく誘われたという。

 さらに同年12月に行われた忘年会では、エレベーターを待っていた女性をA氏とB氏が引き留め、B氏が女性のマフラーで首を絞めた上で、A氏が女性の胸を触った。

 女性はジャフコに被害を申告したところ、A氏・B氏は行為を認め、2020年年明けに出勤停止と減給の懲戒処分となった。その後、謝罪と賠償金支払いがあり、和解が成立している。

退職勧奨後、急性ストレス胃炎で倒れる

 女性は被害を警察へ相談。警察は捜査に積極的な姿勢だったという。ただ、当時はジャフコでの仕事にやりがいを感じていたこともあり、被害届を出すには至らなかった。

 しかしその後、セクハラ被害が社内で知れ渡ることになり、女性は懇意にしていた同僚から「距離を取られている」と感じるようになった。仕事の相談をよくしていた同僚から「関わりたくない」と言われたこともあったという。

 2020年10月には女性執行役員から3時間にわたる「退職勧奨」があった。この中で、退職に応じなければ給与を半額にすると言われたほか、「(女性の)性格とかもいろいろ垣間見えるところを見てても(略)一緒にやっていくっていうのは相当のストレスになっちゃうんだろうなって」「ちょっとハラスメントチックになっちゃうから、本当につらい話なんだけれど(略)うちの中で異質な人を採用しました」など、女性の性格に問題があるかのような指摘が行われた。

 この点について、女性の代理人を務める指宿昭一弁護士は「退職勧奨に根拠がなく、また人格否定にあたる言葉がある」と問題点を指摘した。

 女性は同年12月に路上で倒れ、急性ストレス性胃炎を発症。その後休職し、2022年10月31日付で雇い止めとなった。

 女性は、2023年3月に代理人弁護士を通じてジャフコグループに対して、安全配慮義務違反についての慰謝料や退職勧奨前の賃金での休業中の給与支払いを求めたが、ジャフコ側は雇い止めとセクハラ告発は関係ないなどとして、これを拒否している。

 

 さらに女性側は、業界団体である一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会に対しても、セクハラが起きない環境を作ることや、ジャフコの問題について2回にわたり要望書を提出している。協会側はこれについて代理人弁護士に対して、個別の案件には答えられないと回答した。

 指宿弁護士は会見で、ジャフコやベンチャーキャピタルの対応について次のように話した。

「スタートアップ企業の女性経営者へのセクハラが多発していることは、ここ1、2カ月で社会問題化しています(※)。そういう状況の中で業界において責任ある立場であるジャフコが法的責任を否定し、社会的な対応も否定していることは重大な問題だと考えます」

(※)8月末にNHKがスタートアップ業界内でのセクハラを特集。女性起業家の約半数が過去1年以内にセクハラ被害を受けていたという調査結果も報道された。参考)NHKの特集が話題に スタートアップのセクハラ「女性起業家の半数が被害」の衝撃 #専門家のまとめ(2024年9月30日)

「我々としては、ベンチャーキャピタル協会が業界におけるセクハラ問題に取り組み、企業に対して働きかけも行なっていることは高く評価しています。ただ、現実に関連企業で問題が起こっている以上、個別の案件について答えないと、そういう官僚答弁のようなことを言うのではなく、真摯にその問題に対応すべきだと考えています。ここは協会に考え直していただきたいと考えています」

 また、ハラスメント被害を告発した側が退職を余儀なくされるケースが多く起こっていることについても触れた。

「実際、さまざまなセクハラ事件について受任してきた経験から言うと、なぜか被害者が会社を辞めているケースが非常に多いです。つまり、本件と同じようなことは繰り返し起こっている。

会社の方は『あなたセクハラを告発したから辞めてください』とは言わないですけど、そういう状況に追い込まれている人が多いし、本件も因果関係がないとは言い切れないと考えています。

セカンドハラスメントはセクハラ告発に対する抑止的効果があり、決して許してはいけないと考えます」

 同じく代理人弁護士の髙橋済弁護士は、「セクハラ行為については本人たちも認めている。かなり高学歴な男性たち、彼らが認めているセクハラ内容自体も、なかなか普通の発言ではないですよね、『やらせてやってよ』とか。会社の飲み会に行ってこういうことが日常的というのは、ちょっと異常な状態にあるのではないかと思いますし、女性に対する考え方について驚いています」と、今回のケースの特異性や、根底に女性蔑視が垣間見える点に触れた。

女性がコメント「横行しているのではないか」

 女性は体調不良から会見には出席しなかったが、筆者の取材に対して次のように話した。

「一連の対応の中で、そういうことをやってしまう人たちの文化みたいなものを感じていて、セクハラを受けたのは私が初めてではないと思いますし、会社の中でも投資先に対しても、横行しているのではないかと感じます。

私自身に対して(会社が)謝罪してほしいというのもあるんですけれども、今後の被害を防ぎたい。投資先でお金を出してもらっている人は私以上に声が上げられないということがあると思いますし、是正していかないといけない」

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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