福島第二原発3号機使用済み燃料プール冷却水停止から見える変わらない東電体質、社会との対話が必要不可欠

福島第二原発3号機使用済燃料プール 東京電力HDホームページより

11月22日明朝、福島県沖で起きた震度5弱の地震は津波の発生に伴い、社会中に東日本大震災・原子力事故を連想させました。同日、福島第一原子力発電所から南に約12kmに位置する福島第二原子力発電所3号機では、使用済み燃料プールの冷却停止のトラブルが起こり、こちらについても社会中に大きな不安を与えることとなりました。

福島第二原発3号機使用済み燃料プールの一時冷却停止の問題は、原因が警報の誤作動よること、温度上昇も0.2℃で収まったことから、鎮静化をたどっています。

しかし、この事象を紐解けば、今も変わらぬ東電体質と私達が原子力に対して相変わらず委ねるしかない状況が浮き彫りになります。

ことが起きてから知るが続く報道

福島第二原発3号機設備概要 東京電力HDホームページより
福島第二原発3号機設備概要 東京電力HDホームページより

社会不安に大きく繋がった一つの要因が、私達は原子力発電所そのものをよくは知らないということです。原発事故後の報道は全てことが起きてから知ったというものになります。

原発事故後、原子力発電所という言葉や福島第一原発という言葉だけは知りました。ですがどういったことが起きた時に原子力発電所が不安全な状態になるかは分かりません。

今回トラブルが起きた使用済み燃料プールは、原子力発電所の専門家でなければ知らないようなマニアックな設備ではなく、使用済み燃料を保管するプールですから、最たる設備の一つとも言えます。

使用済み燃料プール構造図 東京電力HDホームページより抜粋
使用済み燃料プール構造図 東京電力HDホームページより抜粋

それら基本設備がどういったものか、どういった事象が起きた時不安全状態になるか、原子力発電所が始まってから約40年、原子力事故から5年と8ケ月、こうしたものですら世に伝わっていないのが現状です。

知らぬ・分からぬのままでは判断が出来ず、時にこうした災害時に予測することも出来ません。

過去同様の事象は起きていた

筆者は福島第二原発3号機使用済み燃料プールの冷却停止の報道を見た際、「あぁスキマサージタンクの水位計の誤作動だな」と直感的に思いました。これは、筆者が福島第一原発・第二原発で使用済み燃料プール水浄化設備の担当を14年携わってきて、幾度か経験したからです。

ここから言えることは、過去起きた事象は当然起こる、事前に知りえた情報であり、それが社会浸透していれば、原子力事故後を暮らす人達の不安を少しでも抑えることが出来たということです。

冷却が停止しました、復旧しました、警報の誤作動でしたと伝える前にやることがあったと言えます。

誰の目線から見て安全・安心を作り上げていくのか

ここに今も変わらぬ東電体質の根幹があります。その体質とはエンジニア目線で何ごとも決めているという点です。

福島第2原発、警報意図的に停止 「重大事案に発展する恐れ」規制委が違反認定 (産経ニュースより)

こちら同発電所で起きた当事者目線で起こした最たるトラブルとも言えます。こちら報道されたのは2016年9月、舌の根の乾かぬ内にまたも当事者目線での対応が取られました。

自ら築きあげてきたものを壊す結果に

高台35m地点より、バス車内より望む原子炉建屋
高台35m地点より、バス車内より望む原子炉建屋

原子力事故から5年と8ケ月、当時誰もが匙をなげ、人が近づくことすら出来ないと思われた発電所は、条件付き(バス車内、短時間滞在)ですが一般人も視察として壊れた原発を目の前で見れる状態になりました。

福島第一原発視察者向け資料11月版より抜粋
福島第一原発視察者向け資料11月版より抜粋

これは最高時約7000人、現在約6000人の現場を預かる人達の努力と汗によるものです。事故初期の環境は筆舌しがたいものでもありました。過半数が被災された福島県民の方であることも付け加えておきます。

現在も増え続ける放射性廃棄物の問題や、海・大気への放射性物質漏えい防止など、課題はまだまだ残ります。ですが、成し遂げてきたことだけは誰からも賞賛されるようなものです。

避難区域の変遷
避難区域の変遷

そして、福島第一原発の周辺では原子力事故による避難区域は縮小し、壊れた原発とそう遠くない距離で暮らす方々がいます。原子力事故を乗り越え、ふるさとを取り戻す過程の方がいらっしゃるということです。

福島第一原発や第二原発の仕事は言い換えれば、社会に安心・安全を作っていく仕事、原子力事故で被災された方々の生活安全基盤を作り上げていく仕事です。

そうしたものが、エンジニア目線での解釈、本当に安全状態を必要とする人の目線で対応されない姿勢は、自滅とも言えるようなことに繋がっています。

東京電力に連なる名も知られぬ企業の人達すら、裏切るような結果にもなりかねません。チームとして廃炉作業を行う場所ではこれは致命的なことに繋がり、ひいては原子力事故後を暮らす人達に不安全として繋がります。

社会との対話が不可欠

今も原子力発電所と社会は遠い距離を置いたままです。これが一つの要因となっています。そして分からない方、原子力事故があったからより不安に感じられている方が、現実的に距離を縮めることは出来ません。

壊れた原発が誰から見て安全・安心と決められていくのか、言うまでもなくそれは東京電力ではなく外の私達の目線です。

だからこそ、社会と東京電力はより密接に透明感と誠実さをもって繋がっていかなくてはなりません。それに必要なことは対話です。

こう思っているだろう。これで伝わっているだろう。言う必要がないだろう。

今姿勢そのものが問われています、そしてその姿勢のキーは誰から見てのという点と、いつまでも持たなければならない謙虚さです。

ちゃんと対話が出来ている、これすら社会が決めることなのですから。