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高校野球の雑談⑥野球部員数、9年連続減の危機。岸田さん、異次元の少子化対策を急いで

楊順行スポーツライター
そういえば最近は、ユニフォーム姿の子どもをあまり見かけなくなった(写真:イメージマート)

 野球人口の減少にはもう、歯止めがきかないのか。

 1915年、全国わずか73校の参加で始まった全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高校野球選手権大会)。戦後復活した46年夏の参加は、混乱期とあって745校にとどまったが、翌年には一気に1000を突破し、以後は増加の一途をたどっていく。53年には2000、78年には3000、90年にはついに4000校を突破。夏の甲子園を報じた雑誌・アサヒグラフはかつて、全出場校の名前を例年趣向を変えた手書きによって掲載していたけれど、書き手はなかなか大変だっただろう。

 ただ2002、03年に最多の4163校を数えて以降、高野連加盟校は漸減傾向にある。むろん、少子化により高校生の絶対数が減り、さらに各自治体で公立校の統廃合などが進んだためだ。100回大会だった18年の参加校は3839で、これは86年の3847校とほぼ等しい。連合チームを1と数えると、チーム数としては3781だった。同様に19年は、3730チームと50チームも減り、連合チームは18年が81(212校)、19年は過去最高の86(234校)。ピーク時から、チーム数にして400以上マイナスという減少傾向は、一部の県をのぞいてほぼ全国共通だ。

 今年、第105回大会の地方大会に参加するのは全国で3744校、3480チーム。前年より38校、61チームの減だ(複数校で参加する連合チームは1校として計算)。参加チーム数の最多は愛知大会の175で、以下神奈川170、大阪165、兵庫156、千葉153と続く。最少は鳥取と高知の23だった。

 部員不足による連合チームは285校、128チームと前年比48校増、16チーム増で、ここからも部員不足に歯止めがかからないことがわかる。

 数字の羅列が続いて申し訳ないが、日本高野連が加盟3818校を対象にしたアンケートでは、13.4%の回答が「1〜3年の野球部員数が10人未満」だった。5年ごとのこのアンケートで、15年前は2.6%に過ぎなかった「10人未満」が、10年前は3.5%、5年前は7.8%。それがいまや、10校に1校以上が全部員で9人カツカツ。そりゃあ、連合チームが増えるわけだ。

10校に1校は野球部員が9人ギリギリ

「だいたい、新生児が年間100万人どころか80万人を割ったんだから、必然的に野球をする子も少なくなりますよ」

 とは,ある社会人チーム監督との会話だが、それは日本高野連がホームページ上で公開している登録部員数からも見てとれる。

 もっとも古いデータである1982年度、全国の硬式野球部員合計は11万7246人で、加盟校数は3488だった。以後、どちらもおおむね右上がりで推移し、加盟校数は2005年の4253校、部員数は14年の17万312人がピーク。両者のピークがずれているのは、部活動の継続率が05年の81.1%が14年には87.7%に上昇しているためか。退部する人数の減少が、部員数の増加に反映したのだろう。だが学校再編や少子化の影響もあり、加盟校数、部員数ともにピーク時から漸減していく。17年には加盟校が4000を切り、18年には部員数が前年度比8389人減と調査開始以来最大の減少。19年にも、その減少幅を更新する9317人減で14万3867人と、02年以来キープしていた部員数15万人を割った。

 減少ペースは以後落ち着いたが、新型コロナウイルスの感染拡大も影響してか、20年には14万人を割っている。加盟校数は、22年には3857と、17年連続の減少だ。深刻なのは1年生部員の減少で、21年には4万4864人と調査開始以来最少。むろんコロナ禍の影響もあるだろうが、コロナ以前の18年にも5万413人とその時点で歴代4番目、19年の4万8036人は3番目の低水準だったから、野球離れは深刻だ。22年の1年生は4万5246人と6年ぶりに増加に転じ、今年も4万5321人と微増しているものの、3学年トータルでは前年比2902人減の12万8357人。13万人を割るのは80年代以来で、9年連続の減少だ。3818校の加盟校数も39校の減……。

 高校生予備軍である小・中学生の野球人口を見ると、07年には硬式、軟式合計で66万4415人いたそれが、20年は40万9888人と40パーセント近く激減している(全日本野球協会調べ)。危機的なのが、中学部活の部員数だ。09年には男女計30万8386人だったのが、19年は16万4173人と、10年間でほぼ半減。部活動のあり方が見直されるなか、今後も減少は避けられないだろう。

 中学部活は軟式で、硬式の減少度は定かではないが、野球人口の減少という課題はすでに待ったなし。かつてはだれもが親しんでいたキャッチボールを、経験したことがない子どもも珍しくない。近年、全国高等学校女子硬式野球連盟の加盟校が漸増しているのは、野球人口にとってのせめてもの救いか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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