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オリックスのヒットメーカーや福岡ソフトバンクの主軸候補の覚醒に期待【2024年の注目選手パ・リーグ編

横尾弘一野球ジャーナリスト
オリックスのヒットメーカー・来田涼斗(右)と福岡ソフトバンクの正木智也(左)。

 プロ野球のペナントレースを白熱させるのは、フレッシュな戦力の台頭だろう。その候補と目され、2024年シーズンにブレイクが期待される“新鮮力”をピックアップしている。パ・リーグでは、どんなマグマが噴火寸前なのだろう。

 2年目の成長株・日髙暖己を人的補償でプロテクトできなかったほど、若手投手が鎬を削っているオリックスでは、3年目を迎える横山 楓がいよいよ本格化しそうだ。昨年までに一軍での実績はほとんどないが、オフシーズンもオーストラリアで武者修行し、重量感のある速球で顕著な成績を収めた。それを自信に、一気の飛躍を見せてもらいたい。一方、野手では来田涼斗がアジア・ウインター・ベースボールで打率.305、1本塁打5打点3盗塁をマーク。何より打席の中で頭が整理できている印象があり、持ち前のバットコントロールで打線のアクセントになってくれそうだ。

 そのオリックスとの差を詰めたい千葉ロッテでは、クレバーな右腕・中森俊介が一軍にデビューし、シーズン後にはオーストラリアン・リーグで逞しさを増した。先発でもリリーフでもこなせるだけに、優勝へのキーマンに名乗りを上げる。野手で注目したいのは池田来翔。器用さのある守備力も前面に出し、パンチ力を備えた打撃でヒーローになれるか。

 ペナント奪還にひた走る福岡ソフトバンクでは、慶應コンビが頭角を現している。2021年に育成ドラフト1位で入団し、手術した左ヒジのリハビリからスタートした左腕の佐藤宏樹は順調に回復。また、2022年のドラフト2位で入団した正木智也は、長打力に磨きをかけた。揃ってアジア・ウインター・ベースボールに派遣され、佐藤は7試合に登板して防御率0.71と安定感を示し、正木は17試合で打率.351、2本塁打9打点と大きなきっかけをつかんでいる。昨年は大学、高校の後輩たちが日本一の栄冠を手にしただけに、負けてはいられない。

源田が「守っていてヤバい」と舌を巻いた左腕

 今江敏晃監督で再出発する東北楽天では、長身右腕の内 星龍がスピンの利いたストレートとスプリットを武器に台頭。53試合に登板しており、先発に挑戦する今季もフル回転が期待される。また、5年目になる黒川史陽は攻守に充実して一軍定着、二塁の定位置確保も視野に入れる。ヒットにできるボールを見極め、確実性をさらに高められるかがカギになるだろう。

 ヤングパワーと試合巧者ぶりを発揮して接戦をものにしたい埼玉西武では、長身左腕の羽田慎之介が「和製ランディ・ジョンソン」を目指して腕を磨いている。イースタン出場時にバックを守った源田壮亮が「威力抜群のストレートを投げる。守っていてヤバいです」とイチ推ししたボールを磨き上げ、今度はスタンドを湧かせてほしい。野手では、育成から這い上がってきた長谷川信哉が柔らかさとパンチ力を兼ね備えた打撃で台頭し、外野の一角に食い込む勢いだ。こうした戦力が、実績あるベテランや中堅と融合すれば面白い。

 そして、積極的な補強で大きくジャンプしたい北海道日本ハムでは、2年目の金村尚真が高い目標を抱いて万全な調整を続けているようだ。昨年は即戦力になったものの、右肩を故障して戦列を離れた。シーズン通して先発ローテーションを守ることを第一に考え、チームの勝利に貢献する。野手では、昨年の万波中正に続いて、福岡ソフトバンクから現役ドラフトで移籍した水谷 瞬が爆発するか。四軍制の球団と比較すればライバルも絞られ、のびのびとプレーできるのがプラスに働くのではないか。

 パワーとスピードをぶつけ合うパ・リーグには、魅力ある若手が台頭する土壌があると感じる。今シーズンは誰がスポットライトを浴びるのか注目したい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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