Yahoo!ニュース

広島は大儲け!! オリックスから獲得した日髙暖己は間違いなく次代のエースだ

横尾弘一野球ジャーナリスト
広島への移籍が決まった日髙暖己は、オリックスでも期待の成長株だった。

 広島からフリー・エージェント宣言し、オリックスと契約した西川龍馬の人的補償について、広島は19歳右腕の日髙暖己を獲得したと発表した。ある球団の編成責任者は、こう言って苦笑する。

「日髙は、間違いなく次代のエース候補。広島は西川を失ったとはいえ、大儲けと言っていいでしょう。それにしても、オリックスは日髙をプロテクトできなかったか……。3連覇するほど戦力が充実しているだけに、仕方ないとは思いますけどね」

 日髙は昨年にドラフト5位でオリックスへ入団したばかり。だが、11月から出場していたアジア・ウインター・ベースボールでも力強い投球を見せており、また山本由伸(ロサンゼルス・ドジャース)に似ているフォームも相まって今季のブレイク候補筆頭と評されている。

山本由伸がいなくても大丈夫!! オリックスの若手投手がAWBで躍動

 昨季は一軍登板こそなかったものの、ウエスタンでの投球を視察したスカウトは、「うちもドラフトでは候補に挙げており、私は強く推したんですが、別の投手を指名した。でも、日髙のピッチングを見て、やはりものが違う、指名すべきは日髙だったと思いましたよ」と悔しそうな表情をしていた。

 それだけの資質を備えたルーキーだけに、オリックスも何とかプロテクトしたかっただろう。投手層が厚いとはいえ、先発ローテーションの山本由伸と山﨑福也(北海道日本ハム)が抜けた今季は、特に先発候補には台頭してほしく、日髙は有力な候補だったはずだ。

 日髙にしても、ようやくプロの水に慣れたところで、リーグも変わる移籍には戸惑いもあるだろう。ただ、安心材料としては、フリー・エージェントの人的補償で広島入りした選手は、ことごとく活躍している。

 日髙と境遇が似ているのは、昨季で現役を引退した一岡竜司だ。福岡の専門学校・沖データコンピュータ教育学院で注目され、2012年にドラフト3位で巨人へ入団。1年目は一軍登板が4試合だったものの、イースタンでは6月の月間MVPに輝くなどリリーバーとして将来を期待されるパフォーマンスを見せた。2年目も着実に成長し、シーズン後にはプエルトリコのウインター・リーグで腕を磨いていたところ、フリー・エージェントで巨人と契約した大竹 寛(現・巨人コーチ)の人的補償として、広島へ移籍することになった。そして、広島では2016年からリーグ3連覇に貢献するなど、リリーフで目立つ実績を残した。

 ほかにも、2007年に新井貴浩(現・広島監督)の人的補償として阪神から赤松真人(現・広島コーチ)、2018年には丸 佳浩の人的補償で長野久義が広島入りしているが、大失敗に終わった例はない。日髙も、若手が熾烈な競争を繰り広げる環境で大きく成長するのではないか。なお、このシーズンオフは、フリー・エージェントで福岡ソフトバンクと契約した山川穂高の人的補償を埼玉西武が検討中。こちらも注目されている。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事