Yahoo!ニュース

18歳の大谷翔平が対戦した“世界のプロスペクト”たちは今

横尾弘一野球ジャーナリスト
18歳の大谷翔平と対戦した選手は、どう成長しているのか。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大谷翔平はメジャー・リーグや野球界のみならず、世界中のアスリートを代表する存在と言っていいだろう。二刀流ゆえ、記録で比較されるのがレジェンドのベーブ・ルースというのもスケールの大きさを感じさせられる。だが、そんなスーパースターも10年前はプロの世界を目指す高校3年生で、第25回18U世界選手権大会に日本代表として出場していた。では、その大会で大谷と対戦した選手たちは、現在どんな野球人生を過ごしているのだろう。

 大谷は一次ラウンド第1戦でカナダを相手に先発し、4回途中までに3失点でレフトにまわった。四番を任された打撃は先制の中犠飛をはじめ、3打数1安打2打点だった。カナダの先発を務めた左腕のライアン・ケロッグは、この年のドラフトでトロント・ブルージェイズから12位で指名されていたものの契約せず、アリゾナ州大3年だった2015年にシカゴ・カブス3位で入団。昨年はAAA級アイオワまで昇格したが、今季は独立リーグのケンタッキーに在籍している。

 2年生で三番手に起用されたカル・クアントリルは、トリニティ短大を経てスタンフォード大へ進み、3年生だった2016年にサンディエゴ・パドレスから1位指名。2019年にメジャーへ昇格すると、2020年にはクリーブランド・インディアンスへトレードされ、今季からガーディアンズとなったチームでも先発ローテーションに入っており、メジャーの舞台でも大谷と対戦している。

カル・クアントリルは、メジャーでも大谷翔平と対戦している。
カル・クアントリルは、メジャーでも大谷翔平と対戦している。写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そのガーディアンズで7月15日現在、11本塁打をマークしている左打ちのジョシュ・ネイラーは、六番・指名打者で大谷には三振に打ち取られた。驚くのは、ネイラーが15歳で18Uのカナダ代表に選出されていたことだ。その後、2015年のドラフト1位でマイアミ・マーリンズへ入団。翌2016年途中に移籍したパドレスで2019年にメジャーへ昇格し、2020年途中にインディアンスへトレード。順調にキャリアを積み上げていると言っていいだろう。

ジョシュ・ネイラー(ガーディアンズ)は、15歳で18Uカナダ代表入りした。
ジョシュ・ネイラー(ガーディアンズ)は、15歳で18Uカナダ代表入りした。写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

ライバルたちが教えてくれる大谷の凄さ

 カナダではほかにも、一番センターのジェイコブ・ロブソンがミシシッピ大から2016年のドラフト8位でデトロイト・タイガースへ入団。昨年はメジャーで4試合プレーしたが、今季はAAA級トレドで奮闘している。七番ショートのダニエル・ピネロは、3度目のドラフト指名だった2016年に9位でタイガースへ入団。ロブソンとともにメジャー定着を目指してきたが、今季はリリースされている。また、四番ライトのギャレス・モーガンは1年生で、ネイラーと同様に将来を期待されるスラッガーだった。しかし、2014年にドラフト2位でシアトル・マリナーズ入りするもAA級止まりで、昨年は独立リーグのトリシティと契約。今季はプレーしていない。そして、大会ベストナイン二塁手のカイル・ハーン、同じく三塁手のジェシー・ホッジスは、ドラフト指名されることもなかった。

 第2戦以降の大谷は四番・指名打者で出場し、次に登板したのは韓国との5位決定戦。この試合で対戦した一番ライトの金仁泰は、翌2013年に斗山へ入団。昨年あたりからスタメン出場の機会も増え、攻守に勝負強さを発揮している。三番ショートの姜勝淏、四番・指名打者の尹大瑛も高校からプロの世界に飛び込んだが、ともに2019年に飲酒運転が発覚して出場停止の処分を受ける。姜勝淏は昨年から斗山へ移籍し、何とかレギュラーの座を手にしている。

 そして、打者の大谷と対戦し、2安打を許したチャイニーズ・タイペイの先発・洪心騏は、大同技術学院(大学)を経て2016年に統一セブン-イレブンへ入団したが、4年間で5勝に終わり、現在は社会人アマチュアでプレーしている。そして、パナマやコロンビアの投手には、すでにメジャー・リーグ傘下で育成されている者もいたが、メジャーまで駆け上がるのは簡単なことではない。

 ちなみに、優勝に貢献し、大会MVPに輝いたアメリカの遊撃手クリスチャン・アローヨは、2013年のドラフト1位でサンフランシスコ・ジャイアンツへ入団。2018年にタンパベイ・レイズ、2019年途中でインディアンス、そして、2020年途中からはボストン・レッドソックスと渡り歩き、今季はすべての内野とライト、指名打者をこなすユーティリティとして必死にプレーしている。ちなみに、大会ナンバーワン投手と評され、先発投手部門でベストナインに選ばれた藤浪晋太郎も、阪神でいきなり10勝を挙げながら、2016年以降は2ケタ勝利さえないのが現実だ。

 プロの世界で活躍する選手の歩みを振り返れば、少年時代から世代を代表する環境で切磋琢磨してきたことがわかる。その一方で、10代で最高の環境に身を置いても、そこからプロで活躍するまでには多くのハードルを飛び越えなくてはならない。大谷が18歳の夏に対戦したライバルたちの歩みを見ていくだけでも、28歳になる大谷翔平の凄さがよくわかる。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事