Yahoo!ニュース

トヨタ自動車の左腕・富山凌雅のパフォーマンスを見逃すな――第89回都市対抗野球大会東海二次予選

横尾弘一野球ジャーナリスト
トヨタ自動車で3年目を迎えた富山凌雅は、着実な進化を続けてプロ入りを目指す。

 第89回都市対抗野球大会の東海二次予選が、5月20日から岡崎市民球場で行なわれる。13の企業チームに、静岡県、愛知県、岐阜・三重の一次予選を勝ち抜いた3つのクラブチームを加えた計16チームで6代表を決めるトーナメントは、都市対抗予選史上最長の18日間。第一代表になるには4連勝が必要で、最大9試合を戦わなければならない。

 他の地区のように一週間ほどの戦いなら、チーム力をピークに持っていたり、初戦で波に乗ったチームが一気に代表権を手にすることはできる。だが、18日間となれば投手陣も打線も好調を持続するのは難しく、最も波乱が起きると言っていい。

 しかも、シード制を採用せず、一回戦の組み合わせを抽選するため、前年の代表チームが固まってしまうこともある。心身ともにタフさを身につけ、運も味方にしなれば勝ち抜けない厳しい予選だ。

 さらに、今年は日本選手権の代表権をかけた10のJABA大会のうち、静岡大会で三菱重工名古屋、日立市長杯大会でJR東海、長野県知事旗大会でトヨタ自動車、ベーブルース杯大会で西濃運輸が優勝。一回戦の対戦カードを下に掲載したが、例年以上の熱戦が予想される。

 さて、代表切符の行方とともに気になるのが、ドラフト候補たちのパフォーマンスだろう。150キロ右腕の勝野昌慶(三菱重工名古屋)、Honda鈴鹿を支える左右の両輪・平尾奎太と瀧中瞭太、強気のマウンドさばきが光る堀田 晃(西濃運輸)と、今年ドラフト指名が解禁になる投手に楽しみな逸材が揃う中、最も急角度で右肩上がりの進化をしているのがトヨタ自動車の左腕・富山凌雅である。

急角度で右肩上がりの進化を見せる富山凌雅から目が離せない

 九州国際大付高3年夏の甲子園でベスト8入りし、プロ志望届を提出したものの指名はなく、2016年にトヨタ自動車へ入社。この年に就任した桑原大輔監督によれば、「はじめからプロで活躍したいという気持ちが強く、それだけの高い意識を持って練習に取り組んでいた」という。

 徹底した体力強化や投げ込みで、2年目にはストレートが140キロ台後半をコンスタントにマークするようになり、都市対抗を終えた頃からは日本選手権でのデビューを視野にレベルアップを続ける。そして、京セラドーム大阪に乗り込むと、東京ガスとの二回戦に先発。テンポのよさと低目へのコントロールが強く印象に残る投球で、5回までヒットすら許さない快投を披露した。6回に2点を失ってマウンドを譲ったが、3日後の準決勝で再び先発を任されると、都市対抗で優勝したNTT東日本を相手に、8回を3安打11奪三振で無失点に封じ、3大会ぶり5回目の優勝に貢献した。

 今春には日本代表候補にも選出されるなど、注目度もアップしているが、富山の本当の成長ぶりを確認できるのが都市対抗予選だろう。負けられないプレッシャーと会社や地域の熱烈な応援の中、どれだけ自分の投球ができるか。初登板を淡々とこなし、チームを勝利に導くようなら、東京ドームでの活躍も間違いない。そして、秋には3年越しの夢が叶うはずだ。

【第89回都市対抗野球大会東海二次予選】

◆一回戦(岡崎市民球場)

5月20日  9:30 ヤマハ×東邦ガス

5月20日 12:30 東海理化×西濃運輸

5月20日 15:30 三重高虎ベースボールクラブ×トヨタ自動車

5月21日  9:30 新日鐵住金東海REX×三菱自動車岡崎

5月21日 12:30 山岸ロジスターズ×Honda鈴鹿

5月21日 15:30 永和商事ウイング×JR東海

5月22日 10:00 三菱重工名古屋×王子

5月22日 13:00 矢場とんブースターズ×ジェイプロジェクト

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事