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自宅で何日過ごせますか? 被災した地域に通って分かった「災害時、家族を守るための備え」 #知り続ける

矢野きくの家事アドバイザー/節約アドバイザー/防災士/食育指導士
(提供:イメージマート)

東日本大震災から11年になります。筆者は東日本大震災後、復興の応援で福島県いわき市に通いました。その中で得たものは、生涯付き合えるたくさんの友人、そして経験した人でないと分からない震災の話を聞けたことです。

ライフラインが途絶えた中での生活の困難や、ライフラインが復旧しても起こる不便など、想像だけでは思いも寄らないことが多数あります。

東日本大震災後も地震や台風、豪雨などいくつもの災害があり、その度に「災害のときのために備えなければ」と思うけれど、結局何をしていいか分からず備えていないという人も多いのではないでしょうか。

今回、筆者からは家事アドバイザーとして、また被災した地域に通って話を聞いた身として、家でできる備えについてご紹介します。

まず防災セットは、3つのシーンに分けて考えることが必要です。

・外出時に何か起こったときのための備え

・今すぐ自宅から避難所など別の場所へ逃げるときのための備え

・自宅で避難生活をおくるための備え

この3つの中で今回筆者がご紹介するのは自宅での備えになります。

なぜ自宅での備えが必要なのか

自宅での備えが必要な理由の1つとして、ライフラインが途絶えた中で「避難所に行かないと食料や水がないから自宅ではなく避難所に行く」というケースがあるからです。逆に言えば、食料や水があれば自宅で過ごすことができます。避難所にいたかたから「人が多いのは疲れるのでできれば家で避難したかった」という声を聞きました。

また自宅での備えというのは大きな自然災害に対してだけではなく、記憶にも新しいコロナ禍となりマスクだけでなくトイレットペーパーまでも入手しづらくなったことや、ウィルスに感染したり濃厚接触者となったことで自宅から外出ができず食料を手に入れるのが困難になるというケースもあるからです。

自宅にある程度の備えがあれば、不安や不便を少しでも軽くすることができます。

では実際にはどのような備えをしたらよいのかご紹介します。

断水に対する備え

・大きな地震からしばらく経って断水になることもある

東日本大震災で被災した地域の友人が経験したのは、地震の直後は水が出ていたのにしばらしてからの断水です。そのため大きな地震があったときは、身の安全を確保してからできる限り早めに水を確保しておくことをおすすめします。浴槽や大きなゴミ袋にも水を入れることができます。

・給水車から水をもらうための準備

意外と多いのが断水で給水車が来ても、水を入れる容器がないというケースです。ポリ容器や畳んで収納しておくことができる容器などを常備しておくとよいでしょう。

折りたたみできるウォータータンク(筆者撮影)
折りたたみできるウォータータンク(筆者撮影)

・断水時のトイレにペットシーツが役立つ

防災グッズで簡易トイレも売っていますが、長期の断水となるとかなりの個数が必要になります。そこでおすすめしたいのが、猫や犬のトイレ用のペットシーツです。吸水力が高く1枚の値段で考えると高いものではないので、ペットがいないご家庭でも災害時用に備えておくとよいのではないでしょうか。

吸水力が高いペットシーツ(筆者撮影)
吸水力が高いペットシーツ(筆者撮影)

大きいサイズのペットシーツを便器の中に敷き用を足したら、ペットシーツからこぼれないように持ち上げてビニール袋などに入れて処分します。このとき注意しなくてはならないのは、ペットシーツを決して便器に流さないことです。詰まって排水ができなくなります。必ず袋に入れて処分してください。

ペットシーツの上に用を足したあと、ペットシーツを袋に入れて処分する(筆者撮影)
ペットシーツの上に用を足したあと、ペットシーツを袋に入れて処分する(筆者撮影)

・食器にラップをかけて使う

食器に食品用ラップをかけてから使えば、食器を洗わないでも済みます。そのためラップも多めに備えておくとよいでしょう。

・手洗いや入浴の代わりのウェットティッシュ

ウェットティッシュも必要です。除菌ができるアルコールを含むウェットティッシュがあれば手を綺麗にしたいときに使えます。入浴代わりに体を拭くため用にアルコールを含まないものもあると便利です。アルコールを含むウェットティッシュは肌が敏感な部分ではヒリヒリしてしまったりアルコールに弱い場合、肌が赤くなってしまうことがあるからです。

・飲水の備蓄

もちろんペットボトルの水も必要です。人間が1日に必要な水の量は約2.5リットルと言われているので、家族の人数を考え保管場所が許す限り多めに備蓄しておくとよいでしょう。

電気やガスが止まったときのための備え

電気やガスが止まったときのための備えも必要です。とくに電気においては日本は電柱が地中化されず外に出ている地域が多いため、自然災害だけでなく、交通事故で電柱が倒れて停電になったりすることもあります。また最近は電力会社間での融通ということもおこなわれていますが、酷暑や厳冬で電力の使用量が増え需給バランスが崩れたときに停電になるという可能性もゼロではありません。

・照明となるもの

筆者も計画停電で経験しましたが、地域一帯が停電となったときは文字通り真っ暗になります。照明となる懐中電灯なども必需品です。明かりとなるものはテーブルなどに置いて使えるようにランタン型のものがおすすめです。

・モバイルバッテリーやポータブル電源

大きな地震があったとき、スマートフォンやテレビですぐに情報を確認する人も多いのではないでしょうか。災害時に情報も遮断されてしまうと余計に不安になるので、電力となるものは備えておきたいものです。

カバンに入るサイズのモバイルバッテリーであれば、複数個用意して日頃から使っておくとよいでしょう。また近年、アウトドアブームもありポータブル電源も市場に多くでまわっています。ポータブル電源はモバイルバッテリーに比べて蓄えておける容量が多いのと、AC出力もできるのでテレビやパソコン、小型の調理家電など使える電化製品の幅が広がるという利点があります。

また充電するのに太陽光パネルを使えるものも多いので、太陽光パネルとあわせて持っていれば、長期の停電でポータブル電源の電力を使い切ってしまった場合でも、太陽が出ていれば充電することができます。

太陽光パネルでも充電ができるポータブル電源がおすすめ(筆者撮影)
太陽光パネルでも充電ができるポータブル電源がおすすめ(筆者撮影)

・保冷剤や保冷ボックス

少しの停電でも気になるのが冷蔵庫の中です。冷蔵庫は冷凍室を含め、開閉しなければある程度の保冷状態を保つことができます。そのときも保冷剤が入っていれば、さらに保冷効果が高まるので、保冷剤は常に冷凍室に入れておくとよいでしょう。

保冷剤は急な発熱のときなどにも使えるのでおすすめです。

・調理のためのカセットコンロ

ガスやIHの家庭であれば電気が止まったときの調理のために、カセットコンロも常備しておくと安心できます。

食料の備蓄。ローリングストックは合わない人もいる

かつての食料の備蓄と言えば、カンパンのように数年単位で保存できるものが主流でした。しかし「気づいたら賞味期限が切れていた」という人も多いので、ここ数年言われているのがローリングストックです。

ローリングストックとは、日頃から少し多めに食料品を買っておき、使いながら減った分をまた買い足していくという方法です。これであれば賞味期限が切れることもなく、また日頃食べているようなものなので、災害時でも食べやすいものです。

しかしこのローリングストックは性格的に合わない人もいます。常日頃から在庫管理がしっかりでき、食べてしまったものを把握して買い足すことができる人であればいいのですが、そうでない人にとっては、「気づいたら備蓄分の食料品も全て消費してしまっていた」ということにもなりかねません。

そこで筆者がおすすめしたいのは、備蓄の食料を半年ごとに入れ替える方法で筆者は「半年ストック法」と呼んでいます。備蓄分の食料品はキッチンの中でも別に分けて箱などにまとめて入れておき、半年経ったらそれを食べて、新たに備蓄箱に入れるという方法です。

筆者がやっている「半年ストック法」(筆者撮影)
筆者がやっている「半年ストック法」(筆者撮影)

これであれば、いざというときも日頃食べているようなものを食べられ、管理の手間もかからず、賞味期限が切れてしまうということもありません。なぜ半年かというと、多くのレトルト食品や缶詰など半年であれば賞味期限まで余裕があるからです。

筆者は3月と9月に入れ替えをしています。3月は東日本大震災があった月であり、9月は関東大震災後に設定された防災の日があるので、メディアでも触れることが多いため忘れずに済むからです。

筆者は半透明の箱に最低10日分以上の食料を入れ、パントリーの上に入れてあります。

中に入っているのは、電子レンジや湯煎で温めて食べるご飯や、インスタントラーメン、パスタ、味噌汁、おかずになる缶詰など。

パスタも茹で時間が短く、小さい鍋でも茹でられるようなサイズのものがあります。できる限り手をかけず短時間で調理できるものが理想です。

災害時は短時間で調理できるものがよい(筆者撮影)
災害時は短時間で調理できるものがよい(筆者撮影)

食料の備蓄箱には他に、ゼリータイプのドリンクやお粥も入っています。これらは災害時のためだけではなく、突然高熱になり、買い物にも行けず、食欲もなくなったとき用のものです。

ペットのご飯ももちろん入っています。

薬は常に余裕を持って処方してもらう

日常的に薬の服用が必要なかたは、飲みきってから病院に行くのではなく、1週間や10日もしくはそれ以上手元に残るサイクルで薬をもらえるように通院することをおすすめします。

また災害時に、他の病院などでも入手できるように薬の名前を書き留めておくことも大切です。

消毒薬や、鎮痛剤、下痢止めなども常備しておくとよいでしょう。

トイレットペーパー

コロナ禍となりトイレットペーパーが市場から消え、焦った人も多いのではないでしょうか。

実はトイレットペーパーに関しては、経済産業省のこちらのページ「トイレットペーパーを備蓄しましょう」でもすすめられているように、備蓄することが推奨されています。

日本のトイレットペーパーの約4割が、今後大きな地震が発生する確率が高いと言われている静岡県で生産されているためです。

筆者もトイレットペーパーは、普段のものとは別の場所に備蓄用として保管しています。

備蓄用のトイレットペーパーは高い位置に収納(筆者撮影)
備蓄用のトイレットペーパーは高い位置に収納(筆者撮影)

災害時はキャッシュレスが使えないことも

クレジットカードやスマホ決済などキャッシュレスが進んできていますが、災害時にはそれらが使えないこともあります。現金は必ず普段使いとは別に、災害時用として持っておくことをおすすめします。

連絡先のアナログでの保管

家族間で災害時の連絡方法を決めておくことも大切です。また自分のスマートフォンが使えない状況でも他の電話から連絡が取れるように、電話番号を紙で残しておくようにしましょう。

災害時はそれでなくても不安なものです。備えられるものを予め備えておくことで、余計な不安を払拭することもできるのではないでしょうか。備えておくものは、家族構成や居住地などで人それぞれ変わってきますが、今回ご紹介した内容が少しでも参考になると幸いです。

家事アドバイザー/節約アドバイザー/防災士/食育指導士

家事の効率化、家庭でできるSDGsを中心に、テレビ、講演、コラム連載などで活動。働く人向けの時短家事術、シニア層への家事改革などをアドバイス。「防災士」の資格を持ち家庭での備え、「食育指導士」の資格も持ち、食品ロス削減をテーマにした講演も定評がある。100円ショップや業務用スーパーでのお得な買い物術の紹介や、便利グッズの開発にも携わる。【テレビ出演】NHKごごナマ(準レギュラー)・日本テレビミヤネ屋・TBSテレビはなまるマーケット・フジテレビ笑っていいとも他。【連載実績】HONDA・東芝・イオン等企業のオウンドメディアや、日経新聞・時事通信 他。【著書】シンプルライフの節約リスト(講談社)他。

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