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【フィギュアスケート】花束ガール・川畑和愛、世界へ羽ばたく

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
18年全日本ジュニア選手権3位、18年全日本選手権で10位の川畑和愛(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

■「ジャンプがスケーティングの中に溶け込んでいるような演技を」

 シニア1年目から大活躍の紀平梨花が小学生の頃に経験し、夢を膨らませるきっかけとなった「花束ガール」。ノービスクラス時代、「花束ガール」の代表として15年世界フィギュアスケート国別対抗戦の公式プログラムに登場し、トップスケーターたちを間近で見ながら世界に羽ばたく日を夢見ていた川畑和愛(ともえ)(16歳=N高東京)が、このほど19年世界ジュニア選手権(3月6~9日、クロアチア・ザグレブ)の日本代表に選ばれた。

 6歳の時、テレビで見たフィギュアスケートにあこがれてスケート教室に通い始めた頃から一貫して持ち続けているのは、スケーティングで魅せたいという思い。カロリーナ・コストナー(イタリア)を理想像として掲げる川畑には、「ジャンプがスケーティングの中に溶け込んでいるような演技」で世界に羽ばたきたいという思いがある。

■全日本選手権ではSP7位発進

 18年12月21日、大阪。全日本フィギュアスケート選手権女子シングルスのショートプログラム(SP)で、川畑は冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループをダイナミックに決めた。スムーズに着氷するとそのまま流れに乗り、続くダブルアクセルと最後の3回転フリップまでノーミスでまとめた。

「最初のルッツとループが決まってその後は大きく滑ることができました」

 そう言って、透明感のある笑みを浮かべた。18年11月の全日本ジュニア選手権で3位に入り、世界ジュニア選手権の代表入りに近づいている状態でリンクに立った全日本選手権だった。

「全日本ジュニア選手権では回転不足や転倒があったのですが、きょうはジャンプでミスすることなくできたので嬉しかったです。今できることをを出し切ることができました」

 64・66点はSP7位と、上々の滑り出し。心掛けていたことは何だったかと尋ねられると、背筋をピンと伸ばした美しい姿勢でこう返した。

「シニアにはスケーティングのうまい選手がたくさんいらっしゃるので、先生にスケーティングを見ていただいて、曲の中で大きく滑る練習をしました。スピンやステップでレベルの取りこぼしのないように練習しました」

 よどみなく出てくる敬語にはジュニアらしい瑞々しい響きがあった。

「ジャンプでも、大きく、上手い選手がたくさんいます。シニアの中で滑るとスケーティングもまだまだだと感じるので、まだまだ練習して行かなければならないと思いました」

■揺らぐことのない「理想」を持つ

 身長157cm。高2になった今年は伸びが止まったというが、身長が伸びた時期も、ジャンプに苦労する選手が多い中、むしろジャンプの確率が上がっていった。身体の成長によって骨格が整い、筋力がついたことがジャンプに好影響をもたらしたようだ。

「今シーズンは昨シーズンと比べてジャンプの確率が上がったので、プログラムの中でもスムーズにジャンプが入るようになりました」と微笑んだ。

 思い返せば、以前、花束ガールとして大会に参加していた頃の川畑から聞いたコメントは「滑らかで力強いスケーティングをして、高いジャンプを跳べることが理想。カロリーナ・コストナーさんのような演技が、“スケート”なのかなと思います」というものだった。

「トップスケーターの実際のスピードやジャンプの高さを自分の目で見られるので楽しみです」とも語っていた。

 それから数年が経ち、今ではジャンプの高さと幅が評判を呼ぶほどに成長した。

 全日本選手権では、ジャンプについて質問されると、「自分でもハマったときは凄く良いジャンプを取れていると思うのですが、まだ確率が低い」と満足はしていなかった。しかし、「海外の試合で活躍している選手はみんなジャンプが大きいので、ビデオを見ています。お手本はカロリーナ・コストナーさんやパトリック・チャンさんです」と言う姿に、ノービス時代から変わらぬ“軸”を持っていることがうかがえた。

■フリーのミスからも学び、そして世界ジュニア選手権へ

 SPから2日後にあったフリースケーティングでは、緊張からミスが出たが最後まで気持ちを切らさずにこらえた。冒頭に入れた3回転ルッツ+3回転トーループはGOE2・28点。最高の出来映えでスタートし、続くダブルアクセル+3回転トーループもスムーズに着氷したが、後半の3回転フリップと3回転ルッツで続けて転倒した。それでも最後に意地を見せて3連続を決め、総合10位で世界ジュニア選手権の代表に選ばれたのだ。

 自身にとって2度目だった全日本選手権から学んだことは多かった。

「どの試合も緊張はするのですが、やはりフリーではもっと上手い緊張の持って行き方をしていければと思いました」

 ジャンプに関しても感じたことは多い。

「シニアの方々はジャンプまでの入りがスムーズで、ステップもたくさん入っていて曲全体の完成度が高いと思うので、自分も少しでも近づけるようにしたいです。もっと上を目指して行くには、ステップからのジャンプなども重要。もっと練習していきたいです」

 間近で見る選手から多くを学び取る姿勢がそこにあった。

「今はスケートをすることが楽しくてもっとうまくなっていきたいと思っています」

 ノービス時代から思い描いた夢に向かって一歩一歩進んでいく川畑には、ピュアな存在感がある。19年3月の世界ジュニア選手権が楽しみだ。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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