バイク走行で文化財の「錦帯橋」が破損  こんなとき、自動車保険は使える?

錦帯橋をバイクで走破した男が逮捕。橋の修復費は保険が適用されるのでしょうか?(写真:アフロ)

 夕暮れどき、1台のバイクが山口県の名勝「錦帯橋」を走破する衝撃のあの動画……。

 びっくりして、思わず見入ってしまった方は多いのではないでしょうか。

 私自身、ナナハン(750ccのオートバイ)に乗ってきたバイク乗りの一人として驚きを隠せず、唖然としながらその一部始終を何度も再生してしまいました。

『錦帯橋にバイク 出頭の男を逮捕』(NHKニュース/2020.7.21)

 報道によると、400ccのバイクを運転していた40歳の男は、周囲から出頭を促され、犯行から4日後の7月21日、文化財保護法違反の疑いで逮捕されたそうです。

NHKのニュース映像(画面から筆者撮影)
NHKのニュース映像(画面から筆者撮影)

 男は「錦帯橋をバイクで走ったことは間違いない。傷つけて申し訳ない」と容疑を認めているとのことですが、いったい何を考えていたのでしょう、にわかに信じられません。

 しかし、バイク乗りの中には「段差」を見たらつい挑戦してみたくなる人が、少なからずいるようです。

 ずいぶん前の話ですが、「歩道橋をシングルキャブのW1で渡ったことがある」とか「谷瀬の吊り橋をアマゾネスで渡った」とか、「興福寺の、あの『五十二段』の階段を、米軍払い下げの松葉フォークのハーレーで下ったことがある」などという、罰当たりな武勇伝を誇らしげに語るおじさんたちに遭遇したことがあります。

 実際にネットで検索してみると、バイクや自転車で古刹の石段や鳥居の中の参道を走行し、その様子を動画に撮ってアップしている人がいました。

 歴史ある史跡や文化財は一度失うと、二度と元には戻りません。

 それを傷つけるという行為は許されませんので、絶対にやめてください。

■修復費用の賠償に保険は使えるのか? 弁護士に聞いた

 こうした行為は、罪を素直に認め「ごめんなさい」と謝って済まされることではありません。

 上記報道にもある通り、今回の「犯行」によって、錦帯橋の橋の木の板322枚にタイヤの痕がついているのが確認されたとのこと。

 これを元通りに修復するためには相当な費用が掛かるのではないかと言われています。

 ワイドショーでも、そのことが話題になっていました。

『名勝「錦帯橋」、バイクで激走男を逮捕。一枚50万円もする組み木はどう弁償する』(Jcastテレビウォッチ/2020.7.22)

 板1枚の値段が50万円の場合、322枚を交換するとすれば、材料費だけで1億6000万円を超えてしまう計算になります。

 車やバイクに加入が義務付けられている自賠責保険は、あくまでも人を死傷させたときに支払われる「対人保険」です。

 今回のケースは「橋」というモノを傷つけたわけですが、このようなケースで本人に支払い能力がない場合、どうなるのでしょうか。

 任意の自動車保険をかけていれば、それを使うことはできるのでしょうか。

 だいち法律事務所の藤本一郎弁護士に伺いました。

――今回のように、バイクで錦帯橋を傷つけ、多額の修復費用が掛かった場合、その費用は運転者に請求されるのでしょうか。

 藤本弁護士(以下同)「はい。もちろん、傷をつけた本人が損害を賠償しなければなりません」

――逮捕されるような明らかな違反行為の場合、保険は支払いの対象になるのですか。

「その場所に乗り入れてはいけないと知っていて走る行為は法律違反です。しかし、そうした行為によって、その場所を破損させようという認識があったかどうかはまた別の問題です。保険の支払いの対象になります」

――なるほど、飲酒運転で人身事故を起こしても、被害者には対人保険が支払われるのと同じ理屈ですね。

「そのとおりです」

――錦帯橋を走った男が任意保険に加入していたかどうかは分かりませんが、今回のようなケースで、もし、バイクに任意の自動車保険をかけていれば、その対物保険は使えるものでしょうか。

「一般論として、対物保険に加入していれば支払いの対象となります。ただし、保険金額の上限までです。対物が1000万円程度では全く足りないでしょうね。最近は対物賠償も無制限という掛け方ができますので、万一の事態を考えれば、無制限で備えておくと安心です。

■未成年の子が万一こんなことをしてしまったらどうする?

――こうしたニュースに触れると、未成年の子を持つ親たちはドキッとすると思います。もし、我が子がスケートボードや自転車で文化財を傷つけてしまったらどうしようと。こうした不安にはどう備えるべきでしょうか。

「我が家にも、小、中、高と3人の息子がいますので他人事ではありません。ですから、他人の財物を損壊させてしまった場合に対応できるよう、万一に備えて賠償責任保険に加入しています。自動車保険や傷害保険に特約でつけることができますし、ほかにも様々な商品がありますので、心配な方はぜひ備えておくとよいでしょう」

――大人であっても、ときにはうっかり標識を見落としたり、また、単独事故や転倒などで大切な文化財を傷つけてしまったりすることがあるかもしれません。不安な人はまず、保険会社に問い合わせてみるべきですね。ありがとうございます。

■オンロードバイクで段差を走るとこんな不具合が!?

 さて、錦帯橋を走破するあの衝撃動画を見てもうひとつ、老婆心ながら個人的に気になることがありました。

 トライアル車やモトクロッサーのようなオフロードバイクならいざ知らず、400ccのオンロードバイクで、連続する急こう配の段差を走った場合、バイクに不具合は出ないものなのでしょうか?

 そこで、バイクのメカニズムに詳しい方に伺ってみたところ、

「オンロードタイプのバイクであのような段差を走行すると、ステアリングヘッドのベアリングに強い力がかかり、ボールレース(玉皿)が凹んでしまいます。その結果、ハンドルがスムーズに切れなくなるという症状が現れ、最終的には修理が必要になってしまいます。とにかく、そのまま走り続けると危険でしょう」

 とのことです。

 バイクの場合、ハンドルが思うように切れなくなってしまうと、即、重大事故につながる恐れがあります。

 あたりまえのことではありますが、あのような場所で、あのような走りを真似するのは絶対にやめましょう。