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【運転代行】安心できる代行業者を見極める、3つの重要ポイント

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
信頼できる運転代行業者を選ぶため、キーを渡す前に必ず確認しておきたい大切なこと(ペイレスイメージズ/アフロ)

 運転代行の利用に関しては、【忘年会シーズン】運転代行を利用する際、知っておくべき3つの重要ルールで、利用者として“やってはいけないこと”を中心に説明しました。今回は、安全で適正な運転代行業者の見分け方、について考えてみたいと思います。

 運転代行は基本的に夜の営業です。夜道は見通しが悪い上、ドライバーは利用客の所有車、つまり操作に慣れていないさまざまな車種をいきなり運転しなければなりません。さらに、後続の随伴車が離れずについてきているかどうかを常に確認しながらの運転ですから、タクシーとはまた違った意味での、高度な運転技術が要求されます。

 こうした運転代行の業態を理解したうえで、利用者としてできることは、確かな運転技術を持ち、万一の事態に備えている優良な代行業者を選択することです。

 では、利用者として、代行業者の良し悪しはどこで判断すればよいのでしょうか?

 ここでは、特に大切な3つのポイントを挙げてみます。

1)まずは随伴車の「表示」をチェック! 適切でない業者は、無届け・無認定の可能性も

 まず、運転代行の業者を外からチェックする方法です。

 運転代行業者の車両(随伴車)には利用者に見やすい「随伴車表示」を行うことが法律で義務付けられています。

 たとえば、文字のサイズは5センチ×5センチ以上、表示には認定を受けた都道府県公安委員会の名称や認定番号のほか、代行業者の名称または屋号を記載しなければなりません。

 表示はドアに直接ペイントするなど固定化されていることが必須で、マグネットやテープで張り付けた脱着可能なものは違反です。

運転代行の随伴車には両側面の見えやすい位置に認定番号と代行業者の屋号を表示する義務があり、細かなルールが定められている(警視庁のWEBサイトから抜粋)
運転代行の随伴車には両側面の見えやすい位置に認定番号と代行業者の屋号を表示する義務があり、細かなルールが定められている(警視庁のWEBサイトから抜粋)

 ルーフの上の行灯(あんどん)は装着が義務付けられてはいませんが、装着する場合は「代行」の文字を大きく表示しなければならず、無地のままや社名だけの表示は禁止されています。

 こうしたルールに違反している業者は、順法精神がなく、特に随伴車に何も表示されていない場合は、無届け・無認定の可能性もあり、以下のポイントにも違反している危険性がありますので要注意です。

車体に正しい表示が施されている運転代行の随伴車(写真提供・JD共済)
車体に正しい表示が施されている運転代行の随伴車(写真提供・JD共済)

2)損害賠償保険に加入しているかどうかを確認する

 「自分の車にはちゃんと任意保険をかけているから、万一事故があっても大丈夫」

 そう思っているのなら、大間違いです。

運転代行を利用する場合、たとえ自分の車であってもハンドルを握るのはあくまでも代行業者です。事故が起こった場合、基本的にはあなたの車の任意保険を使うことはできません。

 運転代行業者には、『自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律』によって、運転代行専門の保険(共済)に加入することが義務付けられています。

 加入すべき保険金額は、対人8000万円以上(利用者や同乗者の損害も対象)、対物200万円以上、客車車両200万円以上と決められています。

 物損事故は運転者が責任を負いますが、人身事故の場合は「他人に運転を任せた使用者としての責任や車の所有者としての責任」など連帯責任を問われることもあります。 代行業者が保険に加入していない場合は、あなたに請求が来るかもしれないのです。

 

 ちなみに、「客車の損害賠償措置」を講じている代行業者の随伴車には、外から見てすぐにわかるように以下のようなステッカーが貼ってある場合が多いので、目安にしてください(ステッカーの貼付は義務ではありません)。

 

運転代行用の保険や共済に加入している随伴車にはこのようなステッカーが貼付されているので(義務付けではない)、外から見たときの目安になる。保険に加入していない業者もいるので確認が必要だ
運転代行用の保険や共済に加入している随伴車にはこのようなステッカーが貼付されているので(義務付けではない)、外から見たときの目安になる。保険に加入していない業者もいるので確認が必要だ

 随伴車にも任意保険への加入が義務付けられています。

 客車に乗っていて、万一、随伴車が前方の客車に衝突するといった事故の被害に遭った場合、随伴車が無保険だと大変です。そうしたケースも頭に入れて、随伴車が運転代行業務中の事故を補償する「業務用」の保険に加入しているかどうかもチェックしておきたいところです。

 国交省の通達によれば、運転代行業者には、運行前、利用者に対して保険(共済)が付保されているということを書面で見せて説明するよう努めることになっています。

 しかし、相手は酔客です。乗る前にそのような説明をしてもなかなか耳を傾けてもらえないケースが多く、賠償額の説明を省略している業者も多いようです。

 私も運転代行をよく利用しますが、たしかに、この説明を乗車前に受けたことはない気がします。

 できればシラフのときに、よく使う代行業者が保険に加入しているかどうか、一度確認しておくとよいでしょう。

 こちらから「保険はちゃんと入っていますか?」「補償は有効ですか?」と聞いても答えない場合や、損害賠償に関する書面を見せてくれない場合は、加入していないか、補償が有効でない可能性があるので要注意です。

 また、前出のステッカーを貼った随伴車であったとしても、中には損害賠償措置を講じていないにもかかわらず、過去に入手したステッカーをそのまま貼付している業者もいるので、必ず確認が必要です。

 

3)客車を運転するドライバーには「二種免許」が必要

 客車を運転するドライバーが二種免許取得者であるかどうかも、ぜひ確認しておきたい項目です。

 運転代行には高度な技術が要求されます。そのため、客車を運転するドライバーは、タクシー運転手と同じく、二種免許資格者でなければなりません(道路交通法第86条第5項、第6項)。

 二種免許を所持せずに客車を運転したドライバーは、無免許運転違反として処罰されてしまうのです。

 また、二種免許を持っていないドライバーが客車を運転して事故を起こした場合は、たとえ業者が代行保険(共済)に加入していても、損害の一部は補償の対象外となることがあります。

 飲酒運転撲滅のために欠かせない「運転代行」。2002年の時点では4000余りだった事業者数は、その後、飲酒運転の刑罰強化とともに一気に倍増しました。

 業者の数が増えたことは喜ばしいのですが、その運転技術や順法精神にはばらつきがあり、玉石混淆であることは否めません。自分の命と財産である車を預けるわけですから、適正な業者を選ぶ必要があります。

 万一、危険を感じたり不愉快な思いをしたりした場合には、業界団体である公益社団法人全国運転代行協会へ情報提供してください。

 この団体は、代行業界の窓口として、『飲酒運転』の根絶を目指し、行政との折衝のほか、業界の健全化を図るべく取り組んでいます。

 また、各都道府県の運転代行担当部局と警察本部のWEBサイトには、「行政処分を受けた代行事業者のリスト」など、利用者にとって有益な情報もたくさん掲載されています。

 お住まいの自治体のホームページにて、サイト内検索で「運転代行 行政処分」と入力して、ぜひ一度チェックしてみてください。  

JD共済は「全国こども書道コンクール」を主催し、寄せられた作品を通じて飲酒運転根絶のメッセージを全国に発信している。この作品は、第2回目の近畿・中国四国地区の特選作品(JD共済提供)
JD共済は「全国こども書道コンクール」を主催し、寄せられた作品を通じて飲酒運転根絶のメッセージを全国に発信している。この作品は、第2回目の近畿・中国四国地区の特選作品(JD共済提供)

 

JD共済主催「第4回全国こども書道コンクール」関東・中部地区の特選作品(JD共済提供)
JD共済主催「第4回全国こども書道コンクール」関東・中部地区の特選作品(JD共済提供)

JD共済主催「全国こども書道コンクール」応募要項  ●JD共済

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「開成をつくった男、佐野鼎」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。剣道二段。趣味は料理、バイク、ガーデニング、古道具集め。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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