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デビー・ギブソン、日本への愛とメガ・シャーク【後編】

山崎智之音楽ライター
Debbie Gibson in the 80s(写真:Shutterstock/アフロ)

2021年9月にニュー・アルバム『The Body Remembers』を発表したデビー・ギブソンが現在と過去を語るインタビュー全2回。前編記事に続いて、後編では1987年の初来日の思い出から貴重な映画出演について語ってもらった。

Debbie Gibson『The Body Remembers』ジャケット(米StarGirls Records/現在発売中)
Debbie Gibson『The Body Remembers』ジャケット(米StarGirls Records/現在発売中)

<前世に日本人だったみたいに、自分との接点を感じた>

●今回のインタビューは開始が午前7時半でしたが、あなたは早起きなのですか?それとも徹夜明けですか?

普段から朝は早いのよ。夜遅くのショーがなければ早寝早起きを心がけている。今朝は午前5時に起きて、 6時半から1本目のインタビューをやって、これが2本目よ。ラスヴェガスに住んでいるけど、友達はこれから寝る人が多いわね。それがラスヴェガス・ライフスタイルだから(笑)。

●あなたは常に日本の音楽ファンから愛されてきて、2010年にはJ-POPのカヴァー・アルバム 『Ms. VOCALIST』も発表しました。日本にどんな思い出がありますか?

1987年に初めてプロモーションで日本に行ったときのことは忘れられないわ。たくさんテレビ番組に出演したけど、撮影セットが凝っていて、どれもビューティフルだった。誰もが親切で礼儀正しくて、一瞬で恋に落ちたわ。1989年・1991年にはジャパン・ツアーで東京だけでなく、地方都市も回ることが出来た。ブドーカン(日本武道館)は伝統的な競技の会場で、ザ・ビートルズもステージに立った場所だから、自分のライヴを出来て光栄だったわ。最初はお客さんがすごく静かで、チケットが売れなかったのかな?と思ったけど、1曲歌い終わるとワッ!と爆発的に盛り上がってくれた。日本のファンはアーティストのパフォーマンスに敬意を払って、じっくり聴いてくれる。警備員を連れて観客席に降りていったら、もみくちゃにされたけどね(笑)!日本ではクラブ・ショーもやったけど(2011年)、お客さんとの距離が近くてエキサイティングだった。

●日本を気に入っていただけて嬉しいです。

いつも家族や友達に言っているんだけど、私の夢は日本に住むことなのよ。初めて日本に来たとき、自分との接点を感じた。まるで前世に日本人だったみたいにね。6ヶ月、1年でいいから、日本語を勉強して、文化を知って、大勢の人と知り合いたい。ブドーカンで「ミラクル This So-called Miracle」を歌ったのを覚えている。奇跡は起こるものなのよ。

●東京・原宿の竹下通りにあなたのファッション・ブランド“DGNY”のショップもありましたね。

そう、“DGNY”はとてもクールなプロジェクトだったわ。デザイナー・チームがロングアイランドにある私の家に来て、クローゼットの中を覗いてスケッチを取っていた。私がどんなファッションを好きか、丹念に調べていったのよ。服やバッグ、小物とかね。単なる名義貸しではなく、私もいろんなアイディアを提供した。デザインもそうだし、ショップの内装にも口を出したわ。インストア・イベントをやったときも大勢のファンが集まって、本当にエキサイティングだった。

Debbie Gibson / photo by Nick Spanos
Debbie Gibson / photo by Nick Spanos

<ティファニーはとてもスウィートな娘だった>

●自分のファッション・ブランドを持っていて、ブロードウェイやウェストエンドのミュージカルで主役を張って、映画初主演が『メガ・シャークvsジャイアント・オクトパス』(2009)というギャップが凄いですね。

(笑)私はいろんなことに興味を持つタイプだし、飽きっぽい性格なのよ。曲がり角の向こうに何があるか、いつもワクワクしていたい。ブロードウェイも『メガ・シャーク』も、私にとっては同じスリルだし、人生をより楽しいものにしてくれる。“そんなのマトモな映画じゃない”って断ることだって出来たけど、私はそんなスノッブじゃない。ティファニーと共演した『メガ・パイソンvsギガント・ゲイター』(2011)だって楽しかったし、けっこうなヒットをしたのよ。

●『メガ・パイソンvsギガント・ゲイター』はむしろ『デビー・ギブソンvsティファニー』というタイトルにした方が話題になったと思います!

ハハハ、ティファニーとの乱闘シーンは最高に楽しかった(笑)。撮影中に笑い出さないように必死だったわ。ケンカをしていたら周囲に誰もいなくなって、私が「誰もいなくなったみたい I think we're alone now」と言うセリフがあるのよ。巨大ヘビやワニは後でCGで追加されたから、完成した映画を見て「これはクレイジーだわ!」と大ウケしたわ。モンキーズのミッキー・ドレンツも出ていて、役柄も含めて最高だった。

●ティファニーとは意外に身長差があって、あなたの方がずいぶん背が高いのに驚きました。

うん、1980年代にはライバル関係とか言われたけど、実際には会って話すこともあまりなかったしね。背比べをする機会もなかったのよ!同じような時期にデビューしたというだけで、マスコミはライバル関係とか煽ったけど、正直ほとんど意識はしていなかった。ティファニーはとてもスウィートな娘だし、映画のセットでもフレンドリーだったわ。

●“ジ・アサイラム”社の映画に出演したのは『メガ・シャークvsジャイアント・オクトパス』、『メガ・パイソンvsギガント・ゲイター』、『メガ・シャークvsメカ・シャーク』の3本?

そう、3本よ。『〜メカ・シャーク』では私の出番は1日ですべて撮影したけど、出演シーンが全編に散りばめられていて、ずっとその場にいたように撮られている。ムービー・マジックね(笑)。

●“ジ・アサイラム”といえば『トランスフォーマー』に便乗した『トランスモーファー』、『ゴジラvsコング』に便乗した『Ape vs Monster』(邦題『ロード・オブ・モンスター 地上最大の決戦』)、『シャークネード』シリーズなど、けっこうしょうもない作品が多いですが、自分が出演していない作品も見ることはありますか?

まあ、全部を見るほどのファンではないけど(笑)、たまたまテレビでやっていると見てしまうわね。エンタテインメントとして面白いし、小難しくないしね。自宅待機のあいだ見るにはオススメよ。ブロードウェイやウェストエンドのミュージカルだって決して高尚なものではなくて、どちらも同じエンタテインメントよ。ブロードウェイで『メガシャーク・ザ・ミュージカル』をやればいいのにね。巨大なサメが観客席の頭上を飛び交うのが目に浮かぶわ。

●ところでハードコア・パンク・バンド、サークル・ジャークスのアルバム『Oddities, Abnormalities and Curiosities』(1995)に収録されている「I Wanna Destroy You」にゲスト参加したのは、どんな経緯があったのですか?ハードコア・パンクを趣味で聴くことはありますか?

私の『シンク・ウィズ・ユア・ハート』(1995)をミックスしてくれたニコ・ボラスがサークル・ジャークスのアルバムも手がけていて、それを聞きつけた彼らが「デビー・ギブソンと仕事しているの?俺たちのアルバムにゲスト参加してもらってよ!」と言ってきたから、「OK!」って、やっただけだった。ニューヨークのクラブ“CBGB”での彼らのショーにも飛び入りしたし、日常的にハードコア・パンクを聴いているわけではないけど、クレイジーで面白い経験だったわ。

●クリスマス・シングル「Christmas Star」を発表しましたが、この曲について教えて下さい。

クリスマスは誰もがハッピーでいて欲しいホリデー・シーズンだし、私の曲でハッピーになって欲しかったのよ。2022年のクリスマス・シーズンに向けてクリスマス・アルバムを作っていて、もう2/3ぐらいは完成しているわ。トラディショナルなクリスマス・ソングとオリジナル、コラボレーションもあって、にぎやかなアルバムになるわね。気が早いと思うかも知れないけど、アナログ盤レコードのプレスには時間がかかるし、早めにレコーディングを済ませておくつもりよ。真夏になって雪ダルマやサンタクロースのことを歌うのも変だしね!

●音楽ビジネスで35年やってきて、むしろこれまでクリスマス・レコードを出してこなかったのが意外です。

うーん、特に理由はないのよ。1980年代には自分のオリジナル・アルバムを出すので忙しかったし、ここ数年はレコーディングをしていなかったし...でも『The Body Remembers』で自分のキャリアの新しい章が幕を開けたことで、ベストなタイミングだと思う。これから毎年クリスマス・シーズンに私のアルバムをかけてくれたら嬉しいわ。

●今後の予定を教えて下さい。

『The Body Remembers』をみんなに聴いてもらいたいし、アルバムをプッシュするツアーをまず北米でやるつもりよ。また夏にラスヴェガスでレジデンシー公演も出来たら最高ね。少し時間はかかるかも知れないけど、海外ツアーもウィッシュ・リストの一番上にあるわ。2022年にはぜひ日本に戻りたいわね。それ以外にも映画プロジェクトやテレビ、ミュージカル...いろんな企画が動き出して、とてもクリエイティヴな時期よ。今、話が持ち上がっている映画は“ジ・アサイラム”みたいなクレイジーなものではなく、“ドラマ+コメディ=ドラメディ”というような作品よ。

●あなたが日本に戻ってくるのを待っています!

最後に日本に来たのは2011年、もう大昔ね。必ず日本に戻るから、『The Body Remembers』を聴いて待っていてね!

【最新アルバム】

Debbie Gibson

『The Body Remembers』

米StarGirl Records 現在発売中

【公式サイト】

https://debbiegibsonofficial.com/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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