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【インタビュー後編】インターヴァルズの新世代ギター・ヒーロー、アーロン・マーシャルの原点を辿る

山崎智之音楽ライター
Intervals / courtesy of Sony Music Japan

2018年9月にアルバム『ザ・ウェイ・フォーワード』が日本発売、来日公演も決定したインターヴァルズ。新世代ギター・ヒーロー:アーロン・マーシャルへの来日直前インタビュー前編に続いて、今回はその原点とその軌跡について語ってもらった。

<さまざまな影響を経て築かれたのがインターヴァルズの音楽だ>

●あなたはいつ、どこで生まれたのですか?

1989年8月6日、カナダのオンタリオ州スカボロー生まれだ。トロント郊外の町だよ。

●音楽に目覚めたのは?

『The Way Forward』ジャケット/courtesy of Sony Music Japan 9月5日発売
『The Way Forward』ジャケット/courtesy of Sony Music Japan 9月5日発売

10歳か11歳の頃、父親がDVDプレイヤーを買って、何枚も音楽ライヴDVDを買い込んできたんだ。その中にサンタナの『スーパーナチュラル・ライヴ』があった。父はよくカーステレオでもサンタナを聴いていたし、「スムーズ」とかが好きだったよ。直接的にギター・プレイで影響を受けたわけではないけど、ギターに興味を持つきっかけになったね。最初に自分で積極的に好きになった音楽はブリンク182やグリーン・デイみたいなポップ・パンクだった。それからストラング・アウト、ランシド、アンチフラッグ、AFI、初期ライズ・アゲインストのようなパンク・ロックが好きになったんだ。メタルを聴くようになったのは『ギター・ワールド』誌を読んでいてアトレイユやアヴェンジド・セヴンフォールドなどのメタル・バンドを発見したときだった。プロテスト・ザ・ヒーローはオンタリオ州ホイットビー出身で、スカボローの隣町だったこともあって、地元のヒーローだった。それがきっかけでシクス(SIKTH)みたいなテクニカルなメタルを聴くようになった。あと、父親に連れられてG3ツアーを見に行ったりもしたよ。ジョー・サトリアーニ、スティーヴ・ヴァイ、イングヴェイ・マルムスティーンというラインアップだった(2003年)。パンク、メタル、プログレッシヴ・ロックなど、さまざまな影響を経て築かれたのが、インターヴァルズの音楽性なんだ。

●自らの音楽性を確立するのに、専門教育は受けましたか?

いや、音楽大学や専門学校で理論を学ぶことも考えたけど、ステージに立ってプレイする方が実践的だし役に立つことが判った。やはり実体験に勝るものはないよ。いずれまとまったオフを取ることが出来たら、理論を習得してみたいとは今でも思っているけどね。

●プログレッシヴ・ロックというと、どんなバンドから影響を受けましたか?

カナダ出身で少しでもプログレッシヴなアプローチを取っているミュージシャンだったら、ラッシュからの影響から逃れることは出来ないよね。それからドリーム・シアター、プラネットX、リキッド・テンション・エクスペリメント...古典ではイエスが好きだよ。最近のバンドではアニマルズ・アズ・リーダーズやポリフィア、CHONみたいなバンドにもプログレッシヴな要素があるよね。

●インターヴァルズの周辺ではしばしばジェントという表現も使われますが、ジェントについてはどう考えていますか?

インターヴァルズにはデビュー当時からジェントという呼称がまとわりついてきたんだ。初期のサウンドには鋭角的にグルーヴ志向の、ジェントっぽい要素があったし、初ライヴはペリフェリーとのショーだったしね。SIKTHや初期ペリフェリーは今でも好きだし、決してジェントという表現を毛嫌いしてはいないよ(笑)。もちろんメシュガーやザ・ディリンジャー・エスケイプ・プランのようなエクストリームなバンドも好きだ。ディキャピテイテッドとかね。こないだGOJIRAと同じフェスティバルでプレイしたばかりだよ。ただ最新作『ザ・ウェイ・フォーワード』ではジェントの要素は少ないし、インターヴァルズはジェント・バンドではないと思う。

courtesy of Sony Music Japan
courtesy of Sony Music Japan

<ギターの未来には楽観的だ>

●現在、主に弾いているギターを教えて下さい。

2016年の夏ぐらいまではポール・リード・スミスを弾いていたけど、今ではSuhr(サー)のギターを弾いている。2014年、『The Shape Of Color』(2015)の曲作りを始めた頃からの付き合いで、2016年から正式にエンドースしている。俺はギターの条件については厳しいんだ。多彩なサウンドを求めるんだよ。ストロングなハムバッカー・サウンド、それからストラトのような繊細なヴォイスも必要だ。Suhrにはすべてが備わっている。ギターはもちろんペダルやアンプやキャビネットのいずれも素晴らしい出来だし、愛用しているよ。

●ギターは6弦と7弦、どちらを弾いていますか?

6弦と7弦を行ったり来たりしている。『In Time』(2012)の頃は7弦を多用していたけど、ここ数年は6弦がメインで、『The Shape Of Color』『ザ・ウェイ・フォーワード』では全編6弦を弾いた。チューニングは大半がスタンダードだけど、数箇所でドロップDチューニングで弾いたよ。9月の日本公演では『In Time』から『ザ・ウェイ・フォーワード』までの曲をプレイするんで、6弦と7弦の両方を弾くことになる。最近は7弦ギターでも新曲を書いているから、また7弦モードに戻りつつあるかも知れない。

●フェンダーやギブソンのような、よりトラディショナルなギターは弾きますか?

かつては弾いていたんだ。最初に手にしたエレクトリックはメキシコ製のフェンダー・ストラトキャスターだったし、2本目はギブソンSGスタンダードのチェリー・レッド・カラーで、何年も弾いていた。レスポールも弾いたことがあるけど、ストラト・タイプの方が好みだね。ネックの感触がフェンダー派なんだ。ただ俺は銘柄よりもプレイアビリティを重視するから、ヴィンテージのストラトよりも、アイバニーズやESPなどのよりモダンなギターの方が好きなんだよ。

●アルバムのレコーディングにはフラクタル・オーディオ・システムズのAxe FXIIを多用したそうですが、通常のギター・アンプを使うのとはどのように異なりましたか?

俺が求める音は、大半をAxe FXIIで出すことが出来るんだ。数百種類のプリセットが最初から入っていて、さらに自分でアジャスト出来るから、あらゆるサウンドの実験が可能なんだよ。ケンパーのプロファイリング・アンプも使ってみたことがあるけど、Axe FXIIがあまりにすべての要素を満たしているし、自分のショーやレコーディングでは使っていない。マーシャルやVOXのヴィンテージ・アンプには魅力を感じるけど、利便性を考えると今ひとつだよね。

●最近のアーティストで気に入っている人はいますか?

ノルウェー出身のギター、キーボードなどのマルチ・インストゥルメンタリスト、オウェイン(OWANE)は誰とも異なった、すべてとかけ離れた音楽をやっている。彼は『ザ・ウェイ・フォーワード』にもサウンド・デザインで参加してくれたんだ。サイモン・グローヴがやっているヘリックス・ネビュラでギターを弾いているスティーヴン・タラントも素晴らしいプレイヤーだ。オーストラリアのメタルコア・バンド、ポラリスも最高の若手バンドだし、優れたアーティストが次々とデビューしている。俺はギターの未来に関しては楽観的だよ。

【アルバム情報】

インターヴァルズ『ザ・ウェイ・フォーワード』

- Japan Edition

前作『The Shape Of Color』から3曲のエキストラトラックを収録

- Japan Special

海外盤(8曲)分のギター・スコア収束USB付き(限定100セット)

- 輸入盤アナログレコード(限定100枚)

ソニー・ミュージックエンタテインメント

https://www.sonymusic.co.jp

【来日情報】

INTERVALS Japan Tour 2018

2018/9/17 (Mon)大阪 CLAPPER

OPEN 18:00 START 19:00

Guest Act: paranoid void

2018/9/18 (Tue) 東京 Shibuya WWW X

OPEN 18:00 START 19:00

Guest Act: tricot

ジャパン・ツアー公式サイト

http://smash-jpn.com/live/?id=2917

バンド公式サイト 

http://www.intervalsmusic.net/

Aaron Marshall Instagram

https://www.instagram.com/aaronintervals/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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