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A-C-Tで確認!子どもの「車内置き去り」を予防するために

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
Safe Kids Worldwide作成のリーフレット

 2020年6月17日、茨城県つくば市で車中に置き去りにされた2歳児が死亡した。父親が子どもを保育所に預け忘れて帰宅し、自宅で仕事をしていて子どもを車内に残していることを忘れてしまった、ということだ。

 車内に「子どもを置き忘れる」などあり得ないことと思われるが、実際にはこれまでにも、わが国だけでなく、世界中で同じことが起こり続けている。わが国では、2004年(岐阜県:1歳児)、2016年(栃木県:2歳児)、2017年(山口県:2か月児、宮城県:3歳児)、2018年(長崎県:1歳児)、2019年(富山県、11か月児)など、毎年同じ死亡事故が起こっている。

◆参考記事◆

「子ども車内置き忘れは私にも!?:赤ちゃん忘れ症候群:記憶とヒューマンエラーの心理学/碓井 真史 Yahoo!ニュース(個人)」

予防法 その1 テクノロジーで防ぐ

 このような事故を予防するため、子どもが車中にいることを忘れないための器具やシステムが開発されている。

・走行前に後部ドアを開けた場合、走行終了後に後部ドアが開かなかった時に警告メッセージを表示したり、クラクションを鳴らして置き去りを警告するもの

 ”Rear Door Alert”(米国ニッサン)

・振動と体温を感知することによって置き去りを警告するもの 他

「『イタリア発 大矢アキオの 今日もクルマでアンディアーモ!』第5回 子ども置き忘れ防止装置義務化(とトンデモ反則金制度)/大矢 アキオ Yahoo!ニュース」

 2019年11月、イタリアでは子どもの車内置き去り通報システムの常備を、すべての自動車につけることを義務付ける法律が発効した。

◆参考記事◆

「子どもの車内放置を警告、装置義務化の新法発効 イタリア/CNN」

予防法 その2 ヒトの力で防ぐ

 日本国内でも、車内置き去り通報システムが全車種に標準装備されているメーカーもあるが、まだ少数だ。早い段階ですべての車に上記のようなシステムが導入されることが望ましいが、それまでは「ヒト」の力で予防するしかない。

 最近、Safe Kids Worldwideから車内置き去り予防のためのリーフレットが出された。アメリカでも同様の事故は相次いでおり、保護者向けの啓発が盛んに行われているが、このリーフレットもそのひとつである。翻訳したものを下記に示した。

画像

※このリーフレットはSafe Kids Japanのウェブサイトにも掲載している。

 置き去り予防のためのヒントとして、「ぬいぐるみをチャイルドシートに乗せておき、子どもが座ったら、ぬいぐるみを助手席に置いておく」、「スマートフォンや財布やバッグなどを後部座席に置いておく」などは、システムがなくても今すぐに実行できる。子どもの車内置き去りを予防するために、このリーフレットを活用いただければ幸いである。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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