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「膨らむカプセルおもちゃ」による傷害〜その予防策を考える

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
実際に膨らませた当該玩具。カプセルは完全には溶けなかった。(筆者撮影)

 2019年2月15日、日常でよく起こりそうな事故の報道があった。その予防策について考えてみたい。

 おもちゃのスポンジ入りカプセルが幼児の膣(ちつ)から体内に入る事故が起き、消費者庁は15日、保護者の目の届く範囲で遊ばせたり子どもの手の届かないところに保管したりするよう、注意を呼びかけた。

 カプセルは長さ約2センチ。水や湯につけると溶けて、中のスポンジが5倍以上にふくらみ、動物や恐竜などの形になる。100円ショップや通信販売で売られており、消費者庁などが対象年齢3歳以上の11商品を調べたところ、2008年以降で累計500万個以上が出荷されている。

 4歳の女児が入浴中に遊んでいたところ、保護者が気付かないうちに膣内に入ってしまう事故が起きた。出血やただれなどの症状が出たが、複数の病院を回っても原因がわからず、約5カ月後に全身麻酔の手術で摘出したという。

 消費者庁が把握する事故は1件だが、同様のケースのほか、幼児が誤って口に入れたり、高齢者が薬と間違えたりして飲むおそれもあるとしている。同庁は「カプセルやスポンジがなくなっていないか確認を」と呼びかけている。(朝日新聞デジタル 2019年2月15日17時22分配信)

有効な予防策とは?

 私は、ニュースで初めてこの製品を知り、製品の映像を見た。製品の写真を見れば、このような事故が起こることは容易に想像できる。

 消費者庁は、「カプセルやスポンジがなくなっていないか確認を」、「保護者の目の届く範囲で遊ばせる」などを予防策として挙げているが(参照)、これでは予防はできない。カプセルがなくなっていることに気づいた時点では、すでに子どもの体内に入っている可能性があり、また「目の届く範囲」で遊ばせていても、見ている目の前でパクっと飲み込んでしまうこともある。

 

 この製品は3歳以上を対象としていると報道されているが、家族に3歳未満の子どもがいれば、この製品に簡単にアクセスすることができる。10か月児であれば、つまんで口に入れることができる。「3歳以上」という表記は「安全」を考えて設定された年齢と思われるが、今回のケースのように4歳でも事故が起きており、年齢の制限で事故を予防することもできない。

 これまでも、幼児が、ビーズ、BB弾、豆、お菓子片、ドングリ、消しゴム、ボタン電池などを鼻の孔や耳の穴に入れてしまうことはよく知られている。このカプセルを見れば、口や鼻、耳など、子どもがその体内に入れてしまうことは容易に想像できる。飲み込むと、水分を吸って10分くらいで大きくなる。消化管の中で膨らめば腸閉塞となる可能性がある。

 カプセルおもちゃによる事故が起こる主な理由は、製品の大きさである。子どもが飲み込むことを予防するには、カプセルの表面に苦み成分を塗り付け、子どもが口に入れたら苦みのために吐き出すようにする。カプセルの大きさについては、長さを変え、5cmくらいの長さにすれば発見しやすくなると思う。

 この玩具は500万個も出回っていると報告されている。現に、ネット上ではこの玩具を使った遊び方を紹介する動画やブログ等が掲載されている。乳幼児の事故は、1件だけということはなく、必ず複数件発生する。今回と同じ事故はこれまでにも必ず発生しているはずであり、今後も必ず同じ事故が発生する。認知症の人やペットでも同じことが起こっているはずである。

 予防策として「注意喚起」するだけでは効果はない。具体的な予防策を実行しなければ、同じ事故が続くことになる。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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