そのタクシーはユニバーサルか?「UD TAXI」について考える
最近、街中で写真のようなマークを付けたタクシーを見かけることが多くなった。
ソファのような、あるいはベビーカーのような黄緑色のマークで、何も知らずに見ると、ほのぼのとした感じを受ける。高齢者を対象としたマークというより、乳幼児を連想させるマークに見える。近づいてみると、マークの下には「UD TAXI」と表記されていた。
UD TAXIとは何か?
国土交通省の「Universal Design Taxi 〜ユニバーサルデザインタクシーはみんなにやさしいタクシーです〜」では、UD(ユニバーサルデザイン)およびUD TAXIについて、以下のように説明している。
ユニバーサルデザインタクシーとは、健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者、車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、誰もが利用しやすい"みんなにやさしい新しいタクシー車両"であり、街中で呼び止めても良し予約しても良しの誰もが普通に使える一般のタクシーです。
また、「UDタクシーだからできること」として、下記のような方に「やさしい」タクシーであることが明記されている。
■大きな荷物を持った方も
■たくさんの荷物を持った方も
■セダンに乗りにくい服装の方も
■入退院の際の移動に困った方も
■車いすの方も
■小さな子ども連れの方も
■妊娠中の方も
UD TAXIの現状の問題点
利便性、快適さ、デザインも大切ではあるが、それらの前に「安全性」が確保されていることがタクシーの大前提であろう。UD TAXIが、「小さな子ども連れの方」にも「やさしい」と謳うのであれば、チャイルドシートが必要な小さな子どもも安全に乗車できることを保障すべきである。このUD TAXIマークを付けているJPN TAXIの車体には、ISO-FIX用のアンカーがつけられている。
チャイルドシートを自動車に適切に取り付けることはなかなか難しい。2018年度のJAFと警察庁の調査でも、自動車に適切に取り付けられているチャイルドシートは38.4%と報告されている。
適切な取り付けの問題を解決するには、ISO-FIXのシステムが有効である。ISO-FIXとは、自動車側にアンカーという爪状の突起があり、これにチャイルドシートの留め具をはめ込むシステムで、誰が行っても、一瞬で適切にチャイルドシートを設置できる。すなわち、タクシーの運転手でも特別な訓練を受けることなく、適切にチャイルドシートを設置することができるのである。
国交省では2012年3月に「標準仕様ユニバーサルデザインタクシーの認定制度」を創設している。その認定要領を読んでみると、主として「車いすの方」を想定した内容になっており、「小さな子ども連れの方」や「妊娠中の方」を想定した記載は見当たらない。実際に国交省の担当課に問い合わせてみたところ、「もちろんチャイルドシートを使ったほうが良いが、(UD TAXI認定においては)そこまで厳しく求めていない」ということで、ISO-FIXの有無はUD TAXIの認定に影響しないとのことだった。
UD TAXIのあるべき姿
安全性の面から、子どもを自動車に乗せる場合にはチャイルドシートに座らせることが不可欠であり、道路交通法第71条の3 第3項にも「自動車の運転者は、チャイルドシートを使用しない6歳未満の幼児を乗せて、 運転してはならない」と定められている。それが確保されていない状況で、「ユニバーサルデザイン」と称することはできないのではないか。UD TAXIの認定マークはISO-FIX対応のチャイルドシートが設置できる状況を確認してから貼り付けるべきではないか。
今回、ユニバーサルデザインといいながら、子どもの安全に対する配慮が欠落している点について指摘した。早急に、タクシーにISO-FIX対応のチャイルドシートを設置することについて検討して、子ども達の安全を確保していただきたい。