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初公開!夏の京町家の魅力

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
初公開となった藤野家住宅  (写真は以下もすべて著者撮影)

 京都の市内中心部に現在4万軒あると言われている京町家。残念ながら毎年2%ずつ無くなっており、その保存への取り組みが課題となっています。現状、京都市内で常に一般公開されている町家はほぼ皆無なのですが、今回は「京の夏の旅」にて2軒も初公開の町家があります。ひとつは旧湯本家住宅、そしてもうひとつは藤野家住宅です。今回は写真撮影が可能な藤野家住宅をご紹介しましょう。場所は地下鉄丸太町駅から東に徒歩7~8分。いわゆる「御所南」と呼ばれる人気のエリアです。

 藤野家住宅の特徴はなんといっても「大塀造(だいべいづくり)」。この形式は京町家全体のたった1割、残り9割は職住一体型の「表屋造」です。大塀造は塀に囲まれた完全住居型の町家で、その多くはおもてなしの空間があるのも特徴。したがって入口は、大半がお客様用と家の人用と少なくとも2か所造られています。この写真は、お客様用。この藤野家住宅は、玄関が広く、茶室も兼ねているのが個性的です。ご主人も一番気に入っている空間だそうです。9月末までは「夏のしつらえ」が目にも涼しい京町家。こちらは簀戸(すど)、御簾(みす)、籐むしろ(とむしろ)がきちんと素材のいいものが使われており、快適に過ごせるようになっています。

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玄関の空間(茶室を兼ねる)
玄関の空間(茶室を兼ねる)

1階のメインの部屋は、お客様用の8畳の部屋と家族用の6畳の部屋。掛け軸は今尾景年の作と説明されてました。主庭も裏の蔵を背景に美しく構成されており、緑が目を癒してくれます。

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1階床の間 今尾景年作
1階床の間 今尾景年作
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その後は、2階に上がるとこちらにもおもてなしの部屋が。こちらの部屋の柱や床の間の框、長押も全て丸太で構成されており、これもまた見る側にとって安らぎを覚えます。襖絵は1階、2階とも唐紙で、2階のシダの文様は繁殖力の高いシダにあやかって、この家がいつまでも栄えるようにとの願いが込められています。階段も2つあり、お客様と家の人が交わらないようにうまく導線が工夫されています。国の登録有形文化財になっている藤野家住宅。現在もご主人がお住まいだけに、公開されるのは今月末まで。これを機会にぜひ足を運んでみてください。

2階床の間  今尾景年作
2階床の間 今尾景年作
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京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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