5日、ノーベル医学生理学賞が、ハーベイ・オルター氏、マイケル・ホートン氏、チャールズ・ライス氏の3人に贈られた、と発表されました。

その業績は、「C型肝炎ウイルスの発見」でした。

C型肝炎ウイルスとは、どんな病原体なのでしょうか?

どんな病気を引き起こすのでしょうか?

簡単に解説してみたいと思います。

肝臓にできるがんの原因とは?

肝臓がんの原因は何であるか、ご存知でしょうか?

「肝臓の病気」と聞くと、アルコール(お酒)を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、「実は肝臓からできるがんの大部分はウイルス感染症が原因である」と言うと、驚かれる方は多いのではないでしょうか?

肝臓は、さまざまなタイプの細胞で構成されています。

肝臓を構成する細胞ががん化してできるがんを、「原発性肝がん(以下、肝がん)」と総称します(他の臓器から転移してできたものは「転移性肝がん」)。

そのうち、“肝細胞”ががん化してできたものは「肝細胞がん」で、世界的には、これが肝がんの約80%を占めます(我が国では94%です)(1)。

肝臓を構成する胆管の細胞ががん化してできた「肝内胆管がん」など、他のタイプと区別するのは、原因も治療も予後も違う、全く異なる病気だからです。

さて、この肝がんの大部分を占める肝細胞がんですが、その原因の70〜90%はB型肝炎ウイルスかC型肝炎ウイルスによる感染症です(2)。

我が国では、約7割がC型肝炎、約1割はB型肝炎とされています(2)。

ウイルス感染によって肝臓に慢性的な炎症が起こり、肝細胞が破壊、再生を繰り返すうちにがん化する。

これが、肝細胞がんが引き起こされる仕組みです。

したがって、多くの場合、肝がんができた肝臓は慢性的な病気(慢性肝炎や肝硬変)を抱えています。

多くは10年や20年といった長い時間をかけて肝臓が蝕まれ、傷んだ状態にあるのです。

かつては「存在しなかった」C型肝炎

実は、現在「C型肝炎」と呼ばれている病気は、かつて「非A非B型肝炎」(つまり、“A型でもB型でもない肝炎”)と呼ばれていました。

A型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスが同定され、診断法が確立してもなお、“これらが関与しない未知の肝炎” が存在したからです。

しかも、この肝炎は多くが慢性化し、肝硬変、肝がんへと進行する、恐ろしい特徴を持っていました。

これが「C型肝炎」という病気として定義されたのは、ほんの30年ほど前のことです。

1989年に初めて、C型肝炎ウイルスが発見されたからです。

これを契機に、ウイルスの検査が可能となり、C型肝炎の診断、治療薬の開発につながりました。

今回のノーベル賞は、こうした功績に与えられたものです。

ちなみに、「B型肝炎ウイルスの発見」も1976年にノーベル賞を受賞しています。

治療薬の開発につながった

血液等を介して感染するC型肝炎は、以前は治癒するのが難しい病気でした。

また、ワクチンのあるB型肝炎とは異なり、C型肝炎にはワクチンもありません。

しかし近年、直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals;DAA)と呼ばれる画期的な治療薬が生まれ、C型肝炎の95%以上が治癒を目指せるようになりました(1)。

「飲み薬でC型肝炎が治りうる」など、ひと昔前ではとても信じられなかったことです。

今回の受賞は、こうした近年の目覚ましい治療の進歩も背景にあります。

現在、全世界で7000万人以上がC型肝炎に罹患しているとされ、毎年40万人近くがC型肝炎関連の肝疾患で死亡しています(1)。

WHOは、2030年までに新たなウイルス性肝炎感染者を90%減らし、ウイルス性肝炎による死亡者を65%減らすことを目標にしています(1)。

C型肝炎ウイルスの発見は、その礎となる偉業と言えるのです。

(参考)

(1)厚生労働省検疫所FORTH「C型肝炎について」

(2)日本肝臓学会「肝がん白書 平成27年度」

以下の記事もご参照ください。

上原正三さんが肝臓がんで逝去、意外に知らない肝臓の病気、3つの知識