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節分の豆まきに潜む危険 幼い子どもの命を奪うことも 

山本健人消化器外科専門医
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

今年も節分が近づいてきました。

豆まきを楽しみにしている方も多いでしょう。

そんな方々を興ざめさせてしまうかもしれませんが、節分の豆は時に幼い子どもの命を奪うことがあります

消費者庁は以前から、「豆やナッツ類は、3歳頃までは食べさせないようにしましょう」と呼びかけています(1)。

なぜでしょうか?

窒息や誤嚥(ごえん:異物が気道に入ってしまうこと)のリスクがあるからです。

子どもの窒息や誤嚥リスク

おもちゃや食べ物を吸い込んでしまい、これが喉に詰まったり、気管や気管支に入ってしまったりする事故は後を絶ちません。

日本小児呼吸器学会の報告によれば、毎年50人近くの子どもがこうした事故を起こしており、3歳未満が7割を占める、とされています(2,3)。

また、3歳未満の大部分は食べ物が原因で、そのうち7割以上が豆やナッツ類です(3)。

なぜ豆類が危険なのでしょうか?

理由はいくつかあります。

まず、子どもは歯が生えそろっておらず、噛み砕く力や飲み込む力がまだ十分に発達していません。

豆類をうまく咀しゃくできず、そのまま吸い込んでしまって気管支炎や肺炎を起こしたり、窒息したりする恐れがあります。

また、豆類はおもちゃのようなプラスチック製品とは異なり、水を含むと膨らんで形が変化します

吸い込んでしまうと、徐々に膨張し、気道に詰まってしまう恐れがあるのです。

さらに、豆類が気道に詰まると、油分が溶け出して炎症を起こし、これが気管支炎や肺炎の原因になるとされています。

よって消費者庁は、「3歳頃までは、小さく砕いた豆やナッツ類も食べさせないでください」と呼びかけています。

吸い込んだ時の症状は?

異物がのどに完全に詰まってしまうと、突然息ができなくなります。

また気管や気管支に入ってしまうと、急に息苦しくなったり咳き込んだり、胸から「ゼーゼー」という音が聞こえたりします。

大人が見ていないところでこうした事故が起こると、原因が分からず、診断が遅れることもあります。

日本小児呼吸器学会が行った調査では、14.4%の例で、診断までに1週間以上かかっています(3)。

特に豆類のような食べ物はレントゲンでも映らないため、診断に苦慮する例もあるのです。

節分の豆まきは危険

以上のことから、小さな子どもがいる場合、節分の豆まきは大きな危険を伴います。

豆まきをした後に一つ残らず片付けておかないと、子どもが拾って口の中に入れる恐れがあります。

もし豆まきをするのであれば、数個をまとめて個包装した商品を購入し、個包装のままで豆まきをするのも一つの手でしょう

また、子どもが豆類などを口に入れていることに気づいても、急に慌てて注意してはいけません

驚いて吸い込んでしまう恐れがあるからです。

落ち着いて自分で吐き出させるか、そっと口から取り出してください。

3歳未満の子どもを持つ保護者を対象としたアンケート調査では、半分近くの保護者が、子どもが3歳になるまでピーナッツを与えてはいけないことを知りませんでした(4)。

何より「リスクを知っておくこと」が大切です。

ぜひ、これを機に改めて注意していただければと思います。

なお、いざというときの対処法は、自著「医者が教える正しい病院のかかり方」で分かりやすく解説しています。

ぜひ参考にしていただければと思います。

(参考文献)

(1)消費者庁 NewsRelease

(2) 日本小児呼吸器学会 気道異物事故予防ワーキンググループ「小児の気道異物事故予防ならびに対応」

(3) 小児耳 2018; 39: 219-222

(4) Int J Pediatr Otorhinolaryngol 2013; 77: 41-44

消化器外科専門医

2010年京都大学医学部卒業。医師・医学博士。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、内視鏡外科技術認定医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、1200万PV超を記録。時事メディカルなどのウェブメディアで連載。一般向け講演なども精力的に行っている。著書にシリーズ累計21万部超の「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)、「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)など多数。

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