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ディズニーパーク単価1.6万円2600万人で過去最高業績、新エリア開業キャパ250万人増1.7万円へ

山口有次桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
土方ちひろ・荻野悠撮影

 東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを運営する「オリエンタルランド」が10月30日、2023年4月〜9月の上半期決算を発表した。開園40周年イベント等で入園者数と客単価が増え、中間決算として過去最高の売上高と営業利益を達成し、2023年度通期でも過去最高業績となる見込みである。これに関連して、いくつか注目すべき点について考察を加えたい。

海外ゲスト比率13%・ゲストのプロフィールデータを期中に一部公開

 コロナ禍に消失した訪日外客数(JNTO推計値)は、2023年に急回復しているが、過去最高であった2019年比(4〜9月)でマイナス23.1%の水準にあり、コロナ禍前まで戻ってはいない。特に、中国からの戻りが遅れているが、シンガポールをはじめとした東南アジアや、米国・カナダが大きく増加した。こうした外国人観光客は、東京ディズニーリゾートにも数多く訪れ、2019年9月の海外ゲスト比率11.5%に対し、23年9月は13%に達した。ただ、下半期は例年この比率が下がるため、約9%になると見込まれている。

 そして、何より意義深いのは、こうしたゲストのプロフィールデータが期中に一部公開されたことである。

年間入園者数2600万人達成見込み・新エリア開業でキャパ250万人増2850万人目標、ランドとシーのキャパ逆転も

 2023年度の年間入園者数は、東京ディズニーリゾート40周年イベントの効果もあり、当初予測より4.8%増、対前期比19.1%増の2,630万人に上方修正された。これで「2024年中期経営計画」発表時の目標2,600万人を前倒しでクリアする見込みである。

 2024年度は、東京ディズニーリゾート40周年イベント終了による反動があるものの、東京ディズニーシー8番目の新テーマポート「ファンタジースプリングス」開業(2024年6月6日予定、総投資額約3,200億円、総開発面積約14万平米)で、キャパシティは250万人増え、2,850万人レベルを目指すとした。東京ディズニーシーは東京ディズニーランドより年間入園者数がやや少ないのが通例であるが、これにより同水準に強化される、あるいは逆転する可能性がみてとれる。

客単価1.6万円をクリア・新目標1.7万円、さまざまな経営評価指標が向上

 ゲスト1人当たり売上高(客単価)は、上半期決算で対前期比5.6%増え、過去最高水準の16,566円に達した。ディズニー・プレミアアクセスの販売増、価格変動制による高価格帯チケットの構成比増、40周年関連商品・フードメニューの販売増などが寄与した。通期でも当初予測より3.7%多い、対前期比5.6%増の16,623円に上方修正された。

 さらに、2024年度に17,000円レベルを目標とすることが示された。新アトラクションのプレミアアクセスは間違いなく売れると見込まれ、近年の著しい客単価上昇からさらに増加することは確実視される。

 総じて、決算資料に登場するさまざまな経営評価指標は向上しており、今後もさらなる業績拡大が見込まれている。

単に顧客満足度を求めず、愛のあるパークづくりに向けて

 一方、東京ディズニーリゾートの顧客満足度指数(サービス産業生産性協議会)をみると、コロナ禍の影響が大きい2021年、入場者数制限で空いているパークを満喫したゲストの顧客満足度は上昇したが、2022年にはコロナ禍前より下がった。そして、2023年は概ね横ばいにとどまった。慢性的な混雑が戻ってきたことや、総合的なコスパがやや下がっていることが影響している可能性がある。しかし、それよりも、運営側が経営評価指標を向上させるために効率化を進めていることをゲストが強く感じ始めていることに注意をはらう必要がある。運営側は、顧客満足度が大きく下がらないよう維持できれば、これ以上向上させる必要はないと考えているようにも思える。もちろん、既に高水準にある満足度をさらに追求することには限界がある。しかし、優れた経営評価指標を達成できているからむしろ、運営側にパークやゲストに対するいわば「愛情表現」が強く求められているのではないか。敏感なゲストはそう感じている。

桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授

早稲田大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2006年より桜美林大学ビジネスマネジメント学群助教授、准教授を経て、2009年より現職。専門分野は、レジャー産業、レジャー施設、レジャー活動。1990年から『レジャー白書』の執筆に携わる。近年はアジア諸国のレジャー活動状況調査を実施し発表。単著『新 ディズニーランドの空間科学 夢と魔法の王国のつくり方』『観光・レジャー施設の集客戦略 利用者行動からみた“人を呼ぶ魅力的な空間づくり”』、共著『「おもてなし」を考える 余暇学と観光学による多面的検討』『観光経営学』『観光学全集 観光行動論』等。レジャー施設に関する論文多数。

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