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東京ディズニーリゾートのミッキー雨男伝説を気象データで検証

山口有次桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
4月15日のTDL40周年記念日は雨で新パレードが中止に。写真は10日に筆者撮影

気象データで開園記念日等の降水確率を算出

 東京ディズニーランド(TDL)は2023年4月15日に開園40周年を迎えたが、あいにくの雨で、周年イベントの目玉である新パレードが中止となった。1983年のTDL開園日や、2001年9月4日の東京ディズニーシー(TDS)開園日も雨が降った。ファンの間では、こうした周年イベントや季節イベント等の初日・最終日など、パークの節目となる重要な日に雨が降ることが多いといわれる。そして、そのことから「ミッキーは伝説の雨男」と呼ばれ、今年の開園記念日前後にもその話題が注目を集めた。

 では、本当に節目の日に雨が多いのか。そして、ミッキーマウスは他のディズニーキャラクターより雨にたたられているのか。桜美林大学ディズニー同好会の学生グループは、気象庁による過去の気象データ(パーク最寄りの調査地点:東京都・江戸川臨海)を基に、「ミッキー雨男説」について楽しみながらも真面目に検証し、7月に研究発表した。

パーク開園記念日の降水確率は高い?

 まず、1983年の開園日以後、わずかでも雨の降った日(降水量0.5ミリ以上)の数から日別降水確率を算出すると、全体平均は30%、4月平均は34%、9月平均は39%であった。そして、TDLとTDSの開園記念日、およびその5周年区切り、10周年区切りの日別降水確率(表1)をみると、パーク開園記念日の降水確率は平均値を上回っている。

表1 TDL&TDS開園記念日の降水確率

出所:桜美林大学ディズニー同好会・松﨑温大の分析データより筆者作成
出所:桜美林大学ディズニー同好会・松﨑温大の分析データより筆者作成

パーク開園記念日の降水確率はその前後の日より高いが、統計的に有意とはいえない

 次に、パーク開園記念日の当日とその前後の日を比較すると、当日は前後の日より降水確率が高い(表2)。しかし、当日と前後の日の差の検定を行うと、統計的に有意な差は認められなかった。すなわち、この差は偶然出た誤差の範囲とみることができ、開園記念日の降水確率が必ずしも高いとはいえない。

表2 TDL&TDS開園記念日とその前後の日の降水確率

出所:桜美林大学ディズニー同好会・松﨑温大の分析データより筆者作成。当日と前後の日に統計的有意差はみられない。
出所:桜美林大学ディズニー同好会・松﨑温大の分析データより筆者作成。当日と前後の日に統計的有意差はみられない。

ミッキーよりドナルドの方が誕生日の降水確率は高い(統計的に有意である)

 一方、ミッキーマウスは雨男といわれ、雨降りの責任を一人で背負っているが、他のキャラクターと比べてどうなのか。主要ディズニーキャラクターの誕生日の降水確率を比較すると(表3)、ミッキーよりドナルドダックの誕生日の方が降水確率が突出して高く、しかも、このデータには統計的有意差が認められた。すなわち、ドナルドの誕生日はミッキーの誕生日より降水確率が高いと断言できる。

表3 主要ディズニーキャラクター誕生日の降水確率

出所:桜美林大学ディズニー同好会・松﨑温大の分析データより筆者作成。ミッキーとドナルドには統計的有意差がみられる。
出所:桜美林大学ディズニー同好会・松﨑温大の分析データより筆者作成。ミッキーとドナルドには統計的有意差がみられる。

結論:ミッキーよりドナルドの方が雨男

 以上のように、統計的にみると、パーク開園記念日は降水確率が特に高いと断言できないが、ミッキーよりドナルドの方が誕生日の降水確率が高いことが検証された。ゆえに、パーク開園記念日の雨降りに関して「ミッキーは雨男」とはいえないが、誕生日に関して「ドナルドは雨男」ということはできる。

 なお、ミッキー雨男伝説は、ファンの間の話のネタとして、節目の日に雨が降ったときミッキーのせいなら仕方ないと納得する材料にもなっている。そのため、真の雨男がドナルドであったとしても、節目の日に雨が降れば、統計的根拠は無くてもパークを代表するミッキーのせいにして話を盛り上げたいファンは今後も少なくないと想像する。

桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授

早稲田大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2006年より桜美林大学ビジネスマネジメント学群助教授、准教授を経て、2009年より現職。専門分野は、レジャー産業、レジャー施設、レジャー活動。1990年から『レジャー白書』の執筆に携わる。近年はアジア諸国のレジャー活動状況調査を実施し発表。単著『新 ディズニーランドの空間科学 夢と魔法の王国のつくり方』『観光・レジャー施設の集客戦略 利用者行動からみた“人を呼ぶ魅力的な空間づくり”』、共著『「おもてなし」を考える 余暇学と観光学による多面的検討』『観光経営学』『観光学全集 観光行動論』等。レジャー施設に関する論文多数。

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