「桜」前夜祭疑惑 安倍前首相の嘘と誤魔化しはいつまで続くのか

野党議員の厳しい質問につい“”(写真:ロイター/アフロ)

◾お詫びのはずの国会で野党議員に思わず“反撃”

安倍晋三前首相は「桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題で、自らが不起訴処分になったことを受け、12月24日に平河クラブ(主に自民党を取材する)の記者を相手に会見を行い、25日には衆参両院の議院運営委員会で「(首相在任時の国会答弁で)事実に反するものがあった。国民の信頼を傷つけた」と謝罪し、夕食会参加者の費用を安倍氏側が補填していたことを認めた。

だが、安倍さんの理屈は予想された通り、秘書がやったことで自分は知らなかったと責任を秘書に押し付け、結果として間違った答弁をしてしまったので道義的責任を感じているが、議員辞職や政界引退など“責任をとること”は考えていないというものだった。補填の動機や仕組みなど疑惑の核心にはいっさい答えず、説明責任を果たしたとは到底言えないものだった。

とくに25日の国会は酷かった。お詫びから始まった弁明のはずが、野党議員から投げかける厳しい質問に、いつの間にか「質問通告をいただいていない」とか「ホテルの明細書は営業上の秘密があるので出せない」「契約主体の認定ではさまざまな考え方がある」といった言葉で“反撃”を試みていた。ああ、この人は子どもの頃からこの年齢(66歳)になるまでずっと、どんなに悪いことをしても嘘と誤魔化しで自己を正当化する生き方をしてきたのだろうなぁと思わざるを得なかった。

いまはこうした現場のやり取りがYouTube上にノーカットで残っている。見逃した人は、ぜひ観てほしい。つい数カ月前まで、どんな人物が日本の総理大臣をやっていたのか、ご自身の目で確かめてほしい。とくに、支持者の人たちには。

【ノーカット】安倍氏「道義的責任を痛感」公設秘書の罰金受け会見

【LIVE】「桜を見る会」前夜祭問題 安倍前首相が国会で説明

夕食会の差額補填は有権者に対する利益供与ではないかとの指摘に、「過去9回の選挙は常に圧倒的な勝利を得ており、利益供与で票を集めようとは考えてもいない」などとむきになって反論する場面もあった。山口4区のみなさんは、この言葉をどう受け止めるのだろう。

◾安倍さんは黙秘権を告知されて事情聴取されていた!

私がとりわけ気になったのは、野党議員の追及にたびたび「それは、東京地検の厳しい捜査の結果、こう(不起訴に)なっているわけですから……」と抗弁していたことだ。この人は、何か大きな勘違いをしていないだろうか? まさかと思ったが、同じフレーズを何度も繰り返していた。これは、この人がことの重大性をきちんと認識できていないという証拠である。

まず重要なのは、東京地検特捜部の副部長が24日午前、報道陣に対して、安倍さんの事情聴取は「黙秘権を告知した上での聴取だった」と説明したことだ。任意の事情聴取には2つの種類がある。ひとつは事件の事実関係をより明確にするために参考として事情を聞く参考人聴取だ。今回のケースであれば、略式起訴された公設第一秘書の容疑を固めるために、周辺関係者の一人として事情を聞かれるというパターンである。

そしてもう一つが、安倍さん自身にも犯罪の疑いがあるので取り調べの必要があると判断された被疑者聴取だ。取調べに先立ち、捜査官が黙秘権を告知するというのは、安倍さんが容疑者として取り調べを受けたということなのだ。つい数カ月前まで内閣総理大臣だった人が犯罪容疑者として取調べを受けたことの“重さ”を、安倍さんはまるで理解していない。

検察の聴取が参考人聴取なのか、被疑者聴取なのかは重大な違いがあると元検事で弁護士の郷原信郎さんがかねてより指摘している。

【参考記事】「安倍前首相聴取」が“被疑者取調べ”でなければならない理由

次に不起訴の意味である。もしかしてではなく間違いなく、安倍さんは「無実」と「無罪」の違いを理解していない。国会でのやり取りを聞いていると、まさかと思うがこの人は「不起訴=無実(シロ)」だと思っているのではないかとの疑いが消えなかった。

◾「嫌疑不十分」での不起訴はシロではまったくない

安倍さんは不起訴には3つの種類があることを知らないのだろうか。「起訴猶予」「嫌疑不十分」「嫌疑なし」である。新聞記事では〈不起訴(起訴猶予)〉といった書き方がされる。

起訴猶予とは、検察として有罪を証明できる十分な証拠があるが、被疑者の境遇や犯罪の軽重、犯罪後の状況(示談の成立など)を総合的に見て、検察官の裁量によって起訴を猶予する場合を指す。捜査機関として罪を犯していると見るが、処罰を課すほどではないと判断されるパターンである。賭け麻雀で立件された黒川弘務・元東京高検検事長の不起訴が起訴猶予だった(その後、検察審査会で「起訴相当」と議決された)。

嫌疑なしは、文字通り、捜査の結果、犯罪の疑いが晴れたと判断された場合だ。もちろん、嫌疑なし=無実(真実、罪を犯していない)かどうかはわからない。ただ、少なくとも捜査機関がシロだと判断したということは言える。

安倍さんの場合は新聞を見ていただければお分かりの通り、〈不起訴(嫌疑不十分)〉と書いてある。これは、検察側が「政治資金収支報告書の作成への関与や記載内容の把握といった共謀を認める証拠は得られなかった」と説明したことを根拠にしている。

捜査機関として犯罪の疑いを持って捜査をしたが、有罪判決を得られるだけの証拠を見つけられなかったということだ。要は、裁判に持ち込んでも勝てる見込みがないと判断したということなのだ。不起訴(嫌疑不十分)がイコール「シロ=無実」ではまったくないのである。

ついでに言うと、嫌疑不十分にも2つのパターンがあって、ひとつは検察が本気で捜査したにもかかわらず証拠が見つからなかったので不起訴とせざるを得なかった場合と、とりあえずアリバイ的な捜査をやって証拠が見つからなかったことにして不起訴とするケースだ。後者は政治的判断がはたらいた結果、そうなることが多く、後に検察審査会への申し立てにつながることが少なくない。

いずれにせよ、安倍さんはすでにこの時点で、前首相でありながら犯罪容疑者として取り調べを受け、疑いを晴らすまでには至らなかった(嫌疑なしにはならなかった)ということなのだ。しかし、25日の国会でのやり取りを見る限り、安倍さんにその自覚があるとは思えなかった。

さらに言えば、この不起訴(嫌疑不十分)は黒川前東京高検検事長の事件と同じく、検察審査会でひっくり返される可能性がある。年明け以降も延々と続く話なのだ。

驚いたのは、立憲民主党の辻元清美議員が夕食会の明細書の再発行をホテルに求め、国会に提出するよう要求したことに対して、次のように答えたことだ。「検察側は明細書等をしっかり把握したうえで今回の判断をしている。明細書の中がどうあれ、検察側の判断は変わらない。私たちがことさら明細書を隠さないといけない立場ではない」。

幼稚な言い訳である。検察が明細書などをしっかり調べて結論を出したのだから、もうそれ以上、中身を知って何の意味があるのか、国会に提出する必要があるのか、と反論しているに等しい。これこそが、まさに安倍さんの最大の勘違いなのである。

◾検察では裁ききれない安倍さんの犯した「大罪」

検察の捜査はあくまでも刑事処分のために行われるものだ。安倍さんにとっては自分が公職選挙法違反や政治資金規正法違反に問われるかどうかが最大の関心事だったと思う。だが、それが不起訴で終わったからといって、政治的、社会的に許されるわけではない。安倍さんが犯した最大の罪は、公職選挙法違反や政治資金規正法違反といった小さなことではない。国民の代表が集まる国権の最高機関としての国会に対して行政府の長として少なくとも118回もの虚偽答弁をしたということなのだ。これは検察の捜査とは関係なく、事実として確定している。

安倍さんは、そのことの重大性をまるで理解していないように見える。

「私が知らないところで(補填が)行われていた」「秘書に確認をして、当時認識していたことを答えた」「結果として、事実と異なる答弁をしてしまった」といった言い訳を繰り返し、「道義的責任を痛感している」と言いながら、その責任は取らないというのである。根底にあるのは、総理大臣経験者でありながら国会とは何であるかが理解できていないということだ。

わが国は憲法によって国民主権が定められている。しかし、いちいち国民全員の意見を聞いて政策を決めるわけにはいかないので、選挙で選ばれた議員が主権者に代わって議論をする。国会では、国会議員によって国政に関する議論が行われる。国会議員は与野党問わず国民の代表だ(なんてことぐらいは安倍さんも知っていると思うが……)。

国会議員は国民に代わって政府に対してさまざまな質問をする。国民が疑問に思うであろうことを代わって質す役割がある。とくに野党議員は、その政策が本当に国民全体の利益になるのか、国政が一部の人たちに私物化されていないかといった観点から厳しくチェックする。政府はそれに対して正々堂々と真実を語らなければならない。当たり前だ。

その、国家の大原則が総理大臣(当時)によって汚されたのだ。憲政史上最大の不祥事と言っても過言ではない。「秘書が嘘をついたから、私も結果として事実と異なる答弁をしてしまった」で許される問題ではない。内閣総理大臣として国家で答弁する以上、その内容が真実かどうかは総理大臣自身はもちろん、側近スタッフをあげてあらゆる角度からチェックをして、完全無欠なものを出さなければならないのは当然だ。

ところが、安倍さんは「執務室から秘書に電話で確認」しただけで、以後、夕食会は参加者とホテルが直接契約したもの、会費5000円はホテル側が設定した、事務所は金銭の出入りに一切関与していない、参加者にはホテルから宛名のない領収書が渡された、補填などするはずがない、明細書は存在しない……などの事実と違う答弁を1年に渡って繰り返した。

野党からさんざん矛盾点を指摘されても、秘書の言うストーリーが正しいと信じ続けたというのだろうか。ホテルに1本電話をするか、別の秘書に確認させることはしなかったのだろうか。官邸や党(自民党)にも優秀なスタッフもいたはずだ。このことによって無駄にした時間はあまりにも大きい。

◾野党を“言い負かす”のが国会だと思っているのか?

安倍さんは、国会での説明は国民に対する説明だと考えたことはなかったのか。もし、そのことが理解されていたら、あんな杜撰なことはしなかったはずだ。安倍さんの答弁を見ると、国会は国民に説明をする場ではなく、野党を“言い負かす場”だと思っているようだ。

25日の国会での説明も、緊張感がなく準備不足が明らかだった。過去の答弁を訂正したいとう自らの申し入れによって開かれた委員会なのに、驚いたことに、どの答弁のどこが間違いだったかの正誤表すら用意していなかった。さらに、自らの政策第一秘書の政治資金収支報告書の不記載が問われているという場面にもかかわらず、修正された収支報告書すら見ずに出てきたことが辻本議員の質問によってバレた。

辻元議員は、不祥事を起こした民間企業の社長が公の場で100回以上、事実と違う説明をして、「社員に騙された」では済まないだろうとも迫った。例えば、原発事故を起こした電力会社の社長が、部下から虚偽の報告を受け、1年に渡って事実と違うことを会見などで公表し続けたとしたら、その社長は社長の座に留まれるだろうか。よく考えてみてほしい。無理だろう。

野党は今後、安倍さんの国会での証人喚問を求めるようだが、それだけでは足りない。どうせまた嘘と誤魔化しを繰り返すことが明らかだからだ。最低でも略式起訴された公設第一秘書をはじめとする事務所関係者、ホテルの営業担当者らを参考人でいいので呼ぶ必要があるだろう。さらに、国会として第三者委員会を立ち上げ、真相究明の後、再発防止策を国民に示すくらいのことはやるべきだ。民間企業なら最低でもこれはやる。

ポイントは、いつからどういう経緯で差額補填が始まったのか。政治資金収支報告書へ記載しないと決めたのは誰か。動機は何か。意思決定の経緯を詳らかにする必要がある。さらに、いちばん重要なのが、安倍さんは本当に知らなかったのか。知らなかったとしたら、誰の判断で誰が安倍さんに嘘の報告をして、虚偽答弁をさせたのか。動機は何か、の解明だ。さらに、事態が発覚したときの状況など。これらは検察の捜査では何ひとつ明らかにされていないのだ。

安倍さんが犯した「大罪」は検察では裁ききれない。有権者がきっちりケジメをつけるしかないのである。(つづく)