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ナイキの“薄底シューズ”はなんと あの「いだてん」がヒントになっていた!?

山口一臣THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)
見た目も美しい「ナイキ フリー5.0」は地面を直接感じる“薄底”だ(筆者撮影)

“厚底”だけじゃなかった! ナイキの新シューズ

 “厚底シューズ”のズーム ヴェイパーフライ4%で話題独占のナイキが「厚底」とはまったく違うコンセプトの「ナイキ フリー」の新モデルを昨日(4月4日)発売した。このシリーズは2004年に初代モデルが発表された素足で芝生の上を走る感覚で足のコンディションを整えるというトレーニングシューズだ。デビューから10年以上、多くのアスリートに愛用されてきたが、15年目に“原点に返る”大幅なモデルチェンジを施したという。それが、今回発売された「ナイキ フリー RN 5.0」(1万円+税)と「ナイキ フリー RN フライニット 3.0」(1万3000円+税)だ。

配色がおしゃれで普段履きにしたくなる「ナイキ フリー RN 5.0」(写真:NIKE)
配色がおしゃれで普段履きにしたくなる「ナイキ フリー RN 5.0」(写真:NIKE)
日常使用で普通に歩き回るだけで自然と筋肉が鍛えられるという](写真:NIKE)
日常使用で普通に歩き回るだけで自然と筋肉が鍛えられるという](写真:NIKE)
5.0よりさらに“薄底”で素足に近い感覚が得られる「ナイキ フリー RNフライニット 3.0」(写真:NIKE)
5.0よりさらに“薄底”で素足に近い感覚が得られる「ナイキ フリー RNフライニット 3.0」(写真:NIKE)

 走る(歩く)ときにシューズの中での足の“自然な動き”を確保することで、従来のシューズでは使うことのなかった筋肉が鍛えられる。写真を見てのとおり、配色もフォルムもなかなかオシャレで、練習用というよりは普段履きにも使いたいほどだ。実際、日常使用で歩き回るだけでも、脚の強化につながるという。ただし、フルマラソンのような長距離を走ることには適していない。レース用ではなく、あくまでもトレーニング用シューズという位置付けだ。

 このナイキ「フリー」シリーズをプロデュースしたのは、マイケル・ジョンソンやマリア・シャラポワ、タイガー・ウッズらの用品を手がけたことで知られる伝説のデザイナー、トビー・ハットフィールド氏だ。日本での発売に先立つ3月19日(日本時間20日)、米オレゴン州にあるナイキ本社で世界のメディアを集めて記者発表会が行われた。ハットフィールド氏はまず、フリー開発のきっかけから話し始めた。

素足で芝生の上を走る感覚のシューズを創ろう

 長い距離をより速く走るにはどうしたらいいか。ハットフィールド氏をはじめとする開発チームメンバーは、スタンフォード大学のランナーたちが練習後にトラックの内側の芝生の上を裸足でクールダウンしているようすを目にした。コーチが「足を健康にするために良いことだ」と指導していたのだという。ハットフィールド氏らは1年以上、追跡研究をした。その結果、突き止めたのは、素足になって足が自然に曲がるようになることで、柔軟性やバランスを養い、さらには筋力アップになるということだった。だとしたら、可能な限り裸足に近いシューズを創り出すことはできないだろうかと考えた。これがナイキ フリーのスタートだった。

 それからランナーの足に関するデータの蓄積、科学的知見の積み重ね、試行錯誤の末にいく通りもの試作品がつくられたという。ハットフィールド氏がフリーに対する熱い思いを語り、初期の試作品を見せてくれた。筆者は思わず目を見張った。彼が手にしたフリーの試作品は、まさに日本の足袋そのもののように見えたからだ(写真下)。フリーの原型は日本の足袋だったのか?

トビー・ハットフィールド氏が手にした初期の試作品に注目! 日本の足袋そっくりだ(筆者撮影)
トビー・ハットフィールド氏が手にした初期の試作品に注目! 日本の足袋そっくりだ(筆者撮影)

「マラソンと足袋」といえば、まさしくいまNHK大河ドラマで絶賛放送中の「いだてん」の世界ではないか。観ていない読者のために説明すると、明治45(1912)年に日本人として初めてオリンピック(スウェーデン・ストックホルム大会)に出場した日本のマラソンの父、金栗四三(かなくり・しそう)は足袋を履いてフルマラソンに挑んでいた。ハットフィールド氏は日本の足袋を知っているのか? フリーの開発になんらかの影響を与えたのか? 気になって仕方がなかった。プレゼンテーション後に本人に直接、聞いてみた。ハットフィールド氏は開口一番、こう言った。

「オー、イエス! もちろん、日本の足袋は知っていますよ。親指が分かれている靴ですね。日本では職人や農家の人が仕事で履いていると聞いています。いずれにせよ、足が自由に動くという意味でフリーに似ています。私も、日本の足袋から多くのインスピレーションをもらいました」

 やっぱりそうだったのか! またひとつ、ナイキと日本の不思議な「縁」を感じたが、それについては機会を改めて書こうと思う。

練習でかたくなった筋肉をほぐす効果も!

 こうして出来上がったフリーは、裸足のような感覚を得るため、ソールのクッション材を固めにして、足裏で地面を感じつつ走れるようになっている。“厚底シューズ“の真逆である。ただ、単純な“薄底シューズ”と決定的に違うのはソールだ。下の写真のように縦横に切れ込みを入れることで足の自由な動きを妨げないようになっている。地面の凹凸もこのソールを通じて直接、足裏に伝わってくる感じである。

ナイキの研究によって足が動いているときに足裏にかかる圧はSの字を描くように、かかとからつま先に移動することがわかったという。ソールの切れ込みのパターンはこうした研究成果に基づいている
ナイキの研究によって足が動いているときに足裏にかかる圧はSの字を描くように、かかとからつま先に移動することがわかったという。ソールの切れ込みのパターンはこうした研究成果に基づいている
開発にあたってはこうしたイラストが何枚も描かれたという
開発にあたってはこうしたイラストが何枚も描かれたという

 会場に来ていたリオデジャネイロ五輪の金メダル・トライアスリート、グウェン・ジョーゲンセンさん(写真中央)にナイキ フリーの使い方について聞いた。

ナイキの発表会に集まったトップアスリートたち(写真:NIKE)
ナイキの発表会に集まったトップアスリートたち(写真:NIKE)

「新モデルのフリーは屈曲性がよくなっていて、地面をしっかりつかむ感覚で走れます。大変気に入っています。私は、長距離を走った後のクールダウンなどでよく履いています。ハードなワークアウトでかたくなった足の筋肉をフリーがほぐしてくれるんです。足の健康状態をよくしてくれます。その他、ジムでのトレーニングや、普段の買い物などでも使っています。オフに履いてもいいと思います」

 普通に履いて歩き回るだけでも筋力が向上するという。今より速くなりたい人は、ぜひお試しあれ!

(参考記事)NIKE新シューズは「裸足感覚」 歩き回るだけで筋力向上

THE POWER NEWS代表(ジャーナリスト)

1961年東京生まれ。ランナー&ゴルファー(フルマラソンの自己ベストは3時間41分19秒)。早稲田大学第一文学部卒、週刊ゴルフダイジェスト記者を経て朝日新聞社へ中途入社。週刊朝日記者として9.11テロを、同誌編集長として3.11大震災を取材する。週刊誌歴約30年。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。2016年11月末で朝日新聞社を退職し、東京・新橋で株式会社POWER NEWSを起業。政治、経済、事件、ランニングのほか、最近は新技術や技術系ベンチャーの取材にハマっている。ほか、公益社団法人日本ジャーナリスト協会運営委員、宣伝会議「編集ライター養成講座」専任講師など。

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