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中学受験「後半戦」をどう戦うか?

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

東京・神奈川の中学受験も初日・2日目を終え、悲喜こもごもである。現在3日目の午前受験の終了を戦々恐々としながら待っている保護者も多いだろう。受験生の保護者世代の中学受験では合否の結果が分からないまま3日くらいまで受け続けることができたが、現在はその日のうちに合格発表がある学校も多い。その分、合格がとれていない場合は、精神的に引きずったまま翌日の受験に臨むこともあるだろう。受験生本人よりも、保護者の方が動転してしまっているケースも散見する。後半戦をうまく運ぶためには、どうしても親子揃って切り替えが必要である。今回はそのためのアドバイスをまとめてみた。

●後半の方が実力を発揮しやすいことを認識する

初日・2日目で「思ったより緊張してしまった」という受験生は多い。生まれて初めての受験である受験生が大半だ。何度も模擬テストを受けているとは言え、やはり本番とは違う。1月中に「お試し受験」をしている受験生も多いが、やはり本当に通うつもりがある学校を受験するのとはわけが違う。そのことを十分理解した上で、3日以降の戦略を立てるべきだろう。

当然のことながら、緊張しやすい受験生が実力を発揮するには慣れが必要だ。ようやく慣れてくるのが3日目以降という受験生は多い。まだ合格がとれていないからといって、及び腰になって受験校を変えるべきかどうかは慎重な判断が必要だ。では、どのように判断をすれば良いだろうか。

●複数回受験のメリットを確認する

まず、志望校が複数回受験を実施している場合、複数回受験(出願)による加点など優遇措置があるかどうかを確認する。その場合は、事前に学校側からの公表がある。「オフィシャルに発表はないが印象が良くなるのでは?」という声も聞くが、一般的には、優遇措置の公表がない場合は、1回ごとの試験結果で公平に合否が判断される。

ただし、たとえ優遇措置がなかったとしても、複数回受験のある学校では、2回目や3回目の試験の傾向が分かることがある。しっかりテストの復習をして、できなかった問題を克服することで、次の試験で有利になる。実際に今年の入試でも2回目以降で数字違いのほぼ同じ出題をしている学校もある。全く問題に歯が立たないのならば再考すべきだが、ある程度問題も解け、第一志望なのであれば、できる限り受け続けることでチャンスを広げたいところだ。その上で、他に受験できる学校を探すのが良いだろう。「あと1回受けていれば……」という悔いを残さないことも中学受験において大切な経験になる。

●なぜ中学受験なのかをもう一度確認する

次に、中学受験をする動機について改めて確認したい。将来の夢を叶えるためや、どうしてもその学校通いたいというポジティブな目標があるのなら、少々偏差値や倍率が高くてもチャレンジする意義がある。もしうまくいかなければ、高校受験や大学受験で巻き返せば良い。しかし、地元の公立中学にどうしても行きたくない、などネガティブな動機が強いのであれば、予定を変えてでも3日か4日で確実に合格できる学校を押さえておきたいところだ。3日・4日の午後受験は、願書を受験直前まで受け付ける学校もある。ここで合格をとっておけば、5日に難関校にチャレンジするという選択肢もできる。6日目以降に受験できる学校は極端に少ないので、このタイミングでの最適な判断が求められる。

今まで多くの受験生に関わってきたが、動機がネガティブであるケースはかなり多く、またその場合、受験生の気持ちを保護者や塾講師がくみ取れていないことも多い。家族にだから言えないということもある。もう一度話し合う機会を作って、主体的に選択させてあげたいところだ。

以上、東京・神奈川の中学受験の後半戦の戦い方について考えてみた。もちろん体力や精神力などが尽きてしまえば元も子もないが、多くの中学受験生は、長時間の勉強に取り組む練習をしてきている。周囲の理解と応援があれば、しっかり乗り切ることができる受験生が多いだろう。泣いても笑っても一週間で決着がつくのが中学受験の良いところでもある。どんな結果も将来の糧にできるように、周囲の大人がどっしりと構えて、見守ってあげることが重要だ。1人でも多くの受験生にとって、今年の受験が意義ある経験となるように願う。(矢萩邦彦/知窓学舎教養の未来研究所

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アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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