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もっと声を!「ISによる日本人人質事件に対する声明」について豊田直巳氏、古居みずえ氏からのメッセージ

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

日本ビジュアル・ジャーナリスト協会( JVJA )は1月20日「IS(イスラム国)による日本人人質事件に対する声明」を発表しました。

メンバーの一人で後藤健二さんとも面識のある『パレスチナの子供たち』『「イラク戦争」の30日』の著者、豊田直巳さんと、『ガーダ パレスチナの詩』『ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち』などの作品を発表し、イスラムに詳しいフォト・ジャーナリスト、映画監督の古居みずえさんにお話を伺いました。

◆まだできることはある。まずは「拡散」を!

「まず拡散していただきたいと思います。そしてあちらこちらで声を上げていくことが今は急務だと思います」。とにかく多くの人が真剣に事態を捉える必要があります。インターネットではおもしろ半分の投稿や誠意のない記事も見かけますが、現地を知っているジャーナリストは軒並み事態を重く見ている傾向があります。もし人質が助からなければ、その先があることを想像しなければなりません。もしイスラム国に敵対視されたならば、それで終わりではないはずです。

「24時間を切った今ではすることは限られていますが、それでもやることはあると思います」。古居さんによれば、イスラム国はネットをよく見ているといいます。ですから、多くの日本人が誠意ある発信をすることで、少しでも事態を良い方へ向けられるように、ネットを利用した活動が望まれます。

◆とにかく「人命第一」を政府に訴えるべき

古居さんは、政府に対して署名や嘆願文で、たくさんの人たちが「人命第一」という声を上げていくべきだと訴えます。「政府は「人命第一」と言っていますが、その一方でテロには屈しないと逆なでをするようなことを言っています。政府の強硬姿勢をぜひ変えるべきです」。

その際、イスラム国の広報部に見られるように英語やアラビア語で,「人命第一」を呼びかける声明文なり、嘆願文を載せることが出来れば、彼らに届く可能性があります。ふざけ半分で作られたコラージュですら、イスラム国に届き、彼らの怒りを買っている状況です。豊田さんは「イスラム国に通じる可能性のあるルートのある方々には、JVJAのメッセージだけでなく、自分の素朴な平和への願いや祈りを届ける努力を払って欲しい」と、古居さんは「それらはどこかで彼らに届くと思う」といいます。

豊田さんは、日本語の読者には、日本政府に「イスラム国と戦う周辺国への支援」を、直ちに撤回するように要望する声を届けて欲しい、また、具体的な声の上げ方として、「イスラム国との、人質解放に向けての交渉役を名乗り出ている中田考氏、常岡浩介さんに、政府として公式に交渉を依頼する要望の声を 集中して欲しい。 その上で、イスラムに対するだけでなく、他者に対する理解を深めようとする努力をすると表明して欲しい。他者を非難する前に」と訴えます。

以下の声明文を読まれて共感されましたら、是非拡散にご協力頂ければ幸いです。一人一人の力は微力ですが、決して無力ではありません。こういうときほど、ネットの力を利用して、国民の権利を主張すべきなのではないかと考えます。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

◆IS(イスラム国)による日本人人質事件に対する声明

IS(イスラム国)による日本人人質事件に対する声明

日本ビジュアル・ジャーナリスト協会( JVJA )はフォトジャーナリストやビデオジャーナリストの団体です。

私たちは、イラク戦争とその後の占領下において、米英軍を中心とした有志連合軍による攻撃がイラク市民にどんな災禍をもたらされたかを取材、テレビや新聞などで報道してきました。また、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への無差別攻撃に晒された市民を取材し、テレビや新聞等で報道してきました。私たちの報道はけっしてアメリカやイスラエルの攻撃を肯定するものではありませんでした。

私たちは現在の安倍政権の戦争を肯定するかのような政策を、報道を通して批判しています。イスラエルのガザ攻撃に対しても、私たちは強く批判してきました。

今まで日本は中東では好意的に見られていました。しかし安部政権は中東を新たなビジネスチャンスとして、経済政策を進めようとしています。今回の日本政府の行動は多大な責任があります。今や日本ははっきりと欧米側として区分けされたといえます。

現在、IS(イスラム国)が拘束している後藤健二さんには、取材の現場で会ったことがあります。後藤健二さんもまた、イラクやシリアでの戦火に苦しむ市民の現状をテレビやインターネットで報道してきました数少ないジャーナリストです。湯川遥菜さんは、私たちと直接の接点はありませんでしたが、報道によると個人的な興味から「イスラム国」に入ったようです。

私たちは、IS(イスラム国)の皆さんに呼びかけます。日本人の後藤さんと湯川さんの2人を殺さないように呼びかけます。人の命は他の何ものにも代え難いものです。

私たちは、同時に日本政府にも呼びかけます。あらゆる中東地域への軍事的な介入に日本政府が加担することなく、反対し、外交的手段によって解決する道を選ぶようにと。

2015年1月20日

日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)

出典:『IS(イスラム国)による日本人人質事件に対する声明』(JVJA)

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アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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