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そごう•西武売却。セブン&アイが労働組合員のコンビニ•スーパー•外食への雇用受け入れが今後の焦点

渡辺広明コンビニジャーナリスト/流通アナリスト
全店臨時休業の西武池袋店の店頭で主張するそごう•西武労働組合の組合員 筆者撮影

西武池袋店が日本一の売上を誇る時代の1986年にバイトさせて頂いていました。まさにセゾングループ(西武)がパルコ中心に日本カルチャーを牽引している時代でした。西武池袋店は直近でも年間7000万人が入店し日本3位の売上高を誇っています。(年間売上1768億 前年114.8%増 2022年)

今回のストライキによる全店臨時閉館は、私が小売関係者であるという事もありコロナによる閉店の時とは違う寂しさを感じました。

小売業のステークホルダーは、自社・従業員・株主・パートナー企業・お客さま(顧客)となりますが、小売業はお客さまが来店しないとビジネスが成り立たない事業のため、お客さまが最も大事なステークホルダーである事に異論がある人はいないでしょう。

今回のストライキを含む騒動は、経営側や労働組合ともに、少ない話し合回数だったとはいえ、結果あまりにも顧客不在のストライキに突入したため、今後の店舗運営に対する顧客への信頼感は著しく損なわれただろう。

そごう•西武労働組合が配るビラ 表面 筆者撮影
そごう•西武労働組合が配るビラ 表面 筆者撮影

そごう•西武労働組合が配るビラ 裏面 筆者撮影
そごう•西武労働組合が配るビラ 裏面 筆者撮影

昭和には鉄道のストライキが時折起こっていたが、代替が難しいため、ストライキ後も乗降客は元の状況にすぐ戻っていた。但し、今回のストライキ時の東武池袋店の盛況を見るに小売には代替の買い物先があるため、西武池袋店のストライキで失った顧客の信頼を取り戻して業績回復するためには、今までの店舗運営以上の努力をしなければ西武池袋店の業績回復は難しいだろう。また、同様に協業するテナントのパートナー企業に対してもストライキの1日の売上保障を含めた充分な対応や今後の丁寧な説明が必要だろう。

客数が西武池袋のストライキにより増えていると従業員が取材に答えてくれた東武池袋店のオープン前 筆者撮影
客数が西武池袋のストライキにより増えていると従業員が取材に答えてくれた東武池袋店のオープン前 筆者撮影

そごう・西武は2006年にセブン&アイホールディングスのグループとなり、事業効率化のため不採算店舗のリストラを進めた事、一般顧客が時代の流れで百貨店離れも進んでいて、何より新しい事業を構築も出来なかった事が、売上を大幅な右肩下がりに繋がり、コロナ禍もあり直近の4年連続の赤字が定着してしまった。

セブン-イレブンやヨーカドーなどの子会社の縦割り体質もあるため、シナジー効果を結局発揮する事もなく、顧客においても、そごう•西武がセブン&アイのグループ会社として認識している人も少なかった。結局売却となるに至った今、統合後の17年間の経営の責任も大きいと言わざるを得ないだろう。

但し、百貨店業界全体についてもピーク時の1991年の9.7兆円あった売上は、コロナ前には5.8兆円にまで落ちてコロナ禍の2020年には4.2兆円となり、人口減とネット通販の隆盛でもあり、外商を中心とする富裕層の強化とインバウンド顧客の獲得、西武池袋店のようなターミナル隣接店舗のデパ地下以外の全般的な百貨店のビジネスは、恒常的に厳しいビジネス環境が継続しそうな状況だ。

そんな未来の百貨店の環境を考えると、今回の労働組合による交渉でセブン&アイが雇用の維持協力を打ち出した事は労働組合の功績としては役割を充分果たしたとも言えるのではないだろうか。

一部社員は百貨店からコンビニやスーパーなどに仕事内容が変わるといえど、セブン&アイは小売や外食という顧客と向き合う仕事である事は変わりがなく、介護など全く違う業種への転職ではないため、労働組合員も一定の安堵していそうだ。

セブン&アイは雇用維持のためのグループへの転職の後押しがきっちり実行されていくのかが今後の焦点となりそうだ。

コンビニジャーナリスト/流通アナリスト

渡辺広明 1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニの店長、バイヤーとして22年間、ポーラ・TBCのマーケッターとして7年間従事。商品開発760品の経験を活かし、現在 (株)やらまいかマーケティング 代表取締役として、顧問、商品開発コンサルとして多数参画。報道からバラエティまで幅広くメディアで活動中。フジテレビ「Live News a」レギュラーコメンテーター。 「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家。全国で講演 新著「ニッポン経済の問題点を消費者目線で考えてみた」「コンビニを見たら日本経済が分かる」等も実施中。

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