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【野球】巨人からBC富山へ 二岡智宏監督「NPBに1人でも多くの選手を送り出したい」

若林朋子北陸発のライター/元新聞記者
BCリーグ・富山GRNサンダーバーズの二岡智宏新監督(筆者撮影)

 プロ野球独立リーグ・BCリーグの富山GRNサンダーバーズ監督に二岡智宏さん(42)が就任した。二岡さんは球団事務所がある富山県高岡市内のホテルで会見し、「NPB(日本プロ野球機構)へ1人でも多くの選手を送り出したい」と決意を述べた。現役時代は走攻守そろった内野手として活躍し、引退後は巨人で打撃コーチを務めるなどして指導者としての経験を積んできた。独立リーグの野球について「かねてから、若い選手を育てる場として、BCリーグに興味を抱いていた」と話す。新天地・富山でどんなチーム作りを目指すのか?

選手とともに成長できるよう精進したい

 ――まず富山GRNサンダーバーズの監督に就任されるにあたり、意気込みをお願いします。

 BCリーグのレベルが年々上がっていることを体感し、さらに上(NPB)を目指す選手たちと「いつか一緒に汗を流したい」と思っていた。選手・コーチとしての経験を伝え、役立ててもらえればと思っている。選手とともに成長できるよう精進していきたい。

新天地・富山で野球人生初の監督業をスタートする二岡さん
新天地・富山で野球人生初の監督業をスタートする二岡さん

 ――二岡監督の現役時代は「走攻守そろった名選手」でした。「二岡二世」を富山で育てていただきたいと願っています。ご自身は、どんな選手を育てたいと考えておられますか? 

 まだ富山の選手を見ていないので分からないが、「自分みたいな」という思いはない。そもそも、自分が名選手だったとは思わないので……。目指すべき選手というよりは、それぞれの選手の特性を見極め、いい部分を伸ばしていきたい。

 チームが勝てば、それに越したことはないが、最優先すべきは「NPBへ1人でも多くの選手を送り出す」という目標。とにかくミスの少ないチームにしたい。「派手なプレー」は要らない。取るべきアウトを必ず取る。それがチームにとっても、選手にとっても大切でしょう。

高い意識で野球に打ち込み、高いレベルに到達してほしい

 ――今季は2選手が富山GRNサンダーバーズからNPBへ行きます。前任の伊藤智仁監督も東北楽天の1軍投手チーフコーチ就任が決まりました。そういう意味ではBCリーグが、NPBを目指す人材の育成の場になっていると感じます。

 何よりもNPBへ行く選手を育てることが大切だと思っている。しかし、NPBに入っただけで満足してはいけない。1軍で活躍できないとダメだから。富山の選手は高い意識で野球に打ち込み、高いレベルに到達してほしい。

 ――独立リーグに興味を抱き、ご自身からBCリーグへ就任の意志があることを伝えられたと聞きました。その経緯についてお話しくださいますでしょうか。

 引退した翌年の2014年に巨人の国際部の仕事で、富山の試合を見たのがBCリーグとの出会い。「どんな選手が、NPBへ来るのだろう」と興味を持った。18年10月中旬から富山と就任に向けての話し合いがスタートし、11月上旬には富山県高岡市に足を運んで球場を見学。同月10、11日にはBCリーグのトライアウトも視察した。

 地方の独立リーグのチームについて「野球をする環境は厳しい」と聞いている。でも「やってみたい」と思う。だから挑戦する。肌で感じて勉強させていただきたい。それが就任を決めた理由です。

目指す野球について「取るべきアウトを確実に取る」と話した
目指す野球について「取るべきアウトを確実に取る」と話した

自分の体が動くうちは選手と一緒に汗をかく

 ――野球人生初の監督業ですね。巨人、日本ハムでの選手経験はもちろん、解説者として外から野球を見たこと、巨人でのコーチとしての日々、いずれも富山での指導の糧になるのではないでしょうか?

 巨人と日本ハムはチームとしてのあり方が全く違っていた。どっちがいいというわけではなく、違うということ。二つのチームを経験できてよかった。日本ハムは地域密着型の姿勢に徹していた。そういう点は独立リーグと似ていたので、富山で生かせる気がする。

 巨人で指導をしている時は、うまくなっていく選手を見て楽しみを感じた。「結果が出なくても頑張る」という過程を選手と共有することにも、やりがいがあった。いい勉強をさせてもらったと思う。自分の体が動くうちは、選手と一緒に汗をかきながら実技を示し、いろいろ教えていきたい。

 ――富山という場所とはこれまで縁があったのですか? BCリーグはファンとの距離が近く、地域貢献も期待されるでしょう。

 現役のころ、巨人・日本ハム時代それぞれで1度ずつ、試合で富山へ来たことがある。しかし、これまで直接的な縁はなかった。家族を都内に残しての単身赴任となるので、「ちょっと遠いなぁ」とは思う。

 ファンの方々と触れ合うことも楽しみ。富山県人はおとなしい方が多いように感じるが、実際はどうなのか。フレンドリーに接してもらえればと思う。応援よろしくお願いします。

    ◇       ◇

 富山GRNサンダーバーズの永森茂社長によると、選手の顔ぶれは年内にほぼ 8割が決まり、2月に行われるBCリーグのトライアウトと外国人選手獲得によって残りの戦力を補うとのこと。1月上旬に富山県内で行われる新入団選手の会見には二岡監督も同席し、2月ごろから選手が集まって練習をスタートするので、そのころにはすべての選手との顔合わせが実現する見通しである。

 二岡監督の指導を受けて富山GRNサンダーバーズの選手がどう進化するのか。2019年シーズンの戦いに期待したい。

永森茂球団社長(右)と握手する二岡監督
永森茂球団社長(右)と握手する二岡監督

 二岡 智宏(におか・ともひろ) 1976年4月生まれ、広島県出身。42歳。広陵高(広島)から近大を経て1999年、ドラフト2位で巨人へ。1年目から強打の遊撃手として活躍し、2002年の日本シリーズでMVP、03年にはベストナインに選出された。08年まで巨人、09年から13年まで日本ハムでプレー。NPBの通算成績は1457試合に出場し、4666打数、1314安打、173本塁打、622打点、48盗塁、打率2割8分2厘。引退後は巨人の国際部、解説者を経て、16年は巨人2軍打撃コーチ、17年から2年間は同1軍の打撃コーチを務めた。

※写真/筆者撮影

※富山GRNサンダーバーズの公式ホームページ

http://www.t-thunderbirds.jp/

※ルートインBCリーグの公式ホームページ

http://www.bc-l.jp/

北陸発のライター/元新聞記者

1971年富山市生まれ、同市在住。元北國・富山新聞記者。1993年から2000年までスポーツ、2001年以降は教育・研究・医療などを担当した。2012年に退社しフリーランスとなる。雑誌・書籍・Webメディアで執筆。ニュースサイトは医療者向けの「m3.com」、動物愛護の「sippo」、「東洋経済オンライン」、「AERA dot.」など。広報誌「里親だより」(全国里親会発行)の編集にも携わる。富山を拠点に各地へ出かけ、気になるテーマ・人物を取材している。近年、興味を持って取り組んでいるテーマは児童福祉、性教育、医療・介護、動物愛護など。魅力的な人・場所・出来事との出会いを記事にしていきたい。

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