【野球】投手・古田敦也&捕手・伊藤智仁「バッテリー」が富山で始球式
2018年6月23日、富山市の富山県営球場で行われたBCリーグ後期開幕戦に、元ヤクルトの古田敦也さん(52)が姿を見せた。そして、ヤクルト時代のチームメイトで、今季から富山GRNサンダーバーズの指揮を執る伊藤智仁監督(47)と始球式を行った。「投手・古田、捕手・伊藤」と、現役時代のポジションを入れ替えた「バッテリー」のパフォーマンスに、詰めかけたヤクルトファンは大喜び。後期の開幕ダッシュを期す富山の選手やファンへエールを送った。
「スライダーを初めて受けた時は衝撃でした」
始球式に先立ってトークショーが行われ、古田さんは巧みな話術で会場を湧かせた。ヤクルト時代に教育係を務めていたころ、若い選手へ生活面でもアドバイスを送っていたという。「トモ(伊藤)はちゃんとしていましたよ。でも言うこときかんかったことも、あったなあ」と言うと、ベンチ前で整列していた伊藤監督は苦笑い。一方で、投手としての資質には最上級の賛辞を惜しまない。
「スライダーを初めて受けた時は衝撃でした。オールスターや日本代表の機会に多くの投手の球を受けてきたけれど、野球人生で受けた投手の中で、(伊藤の)スライダーはナンバーワンだと思います」
「ダルビッシュ(有)は受けたことないけれど、もっとすごいかも……。大谷翔平の球を受けてみたいなあ」などと日本人メジャーリーガーの話題を織り交ぜ、ファンを喜ばせた。トークの終盤には、BCリーグの選手やスタンドの野球少年へ力強いメッセージも。
「最近、いろんな情報があふれているから、かえって迷うかもしれません。でも大事なのは『小手先ではなく、しっかりした芯を持って野球に取り組む』ということ。そのためにはしっかり食べ、まずは身体を大きくしてほしい。BCリーグの選手は『NPB(日本プロ野球機構)へ行ってやる』という気持ちを忘れないでください」
古田さん「やや、ボール球でした」
続いて「投手・古田、捕手・伊藤」による始球式が行われた。富山GRNサンダーバーズのユニホームを着た古田さんが登板すると歓声が起こる。マウンドに上がった感想は「やっぱり投手の方がいい。捕手はいつも投手や打者を見上げていましたから……」とのこと。「捕手・伊藤」のミット目がけて投げ込み、「やや、ボール球でした」と振り返った。
古田さんによると、富山GRNサンダーバーズの監督に就任する報告を受けた際、「自分の野球の幅が広がるから、やったほうがいいよ。監督は日々勉強できる」と背中を押したらしい。独立リーグというNPBとは違う環境で指導にあたる経験や、地域貢献に携わることも今後の野球人生のプラスになると期待している。
始球式を終えた伊藤監督は「先輩の古田さんを、ずっと自分の野球の先生だと思っている」と話した。ヤクルト時代に受けた教えを、富山での指導に生かしている。例えば、地元の学童野球の指導者を対象とした講習会で「投手と走者の攻防」について解説した折、次のように語った。
「投手が動き始めてから、クイックモーションで投げた球が捕手のミットに到達するにはNPBの選手なら平均1.20秒です。二盗を狙う走者を阻止するために捕手が二塁へ送球する際、捕球してから二塁にボールが到達するまでの時間は平均で約2.00秒。つまり、投球と送球にかかる3.20秒、この隙を突いて走者は盗塁を狙います。走者がリードした位置から二塁に到達するまでは平均3.20~3.30秒。リードの幅やスライディング、帰塁のタイミングが成否を分けます」
ここから伊藤監督は「捕手・古田のすごさ」を力説する。
「自分は現役時代、投球に1.25秒かかっていました。平均値をオーバーしている。古田さんの送球は1.80秒なので、カバーしてもらっていました」
具体的な数字に興味をそそられた受講者は、身を乗り出して話を聴いていた。
「打者・古田のすごさ」も忘れてはいけない。通算8回もシーズン打率3割以上を記録した。捕手の中ではプロ野球史上最多である。通算打率は2割9分4厘。1991年に首位打者を獲得し、2005年には通算2000本安打を達成している。野村克也監督直伝の「配球を読むバッティング」が印象深い。
伊藤監督、古田さんに打順の決め方など助言仰ぐ
BCリーグ前期、西地区の富山GRNサンダーバーズは5チーム中4位に終わった。打撃の強化がチームの課題である。伊藤監督は始球式の前日、富山入りした古田さんに助言を求め、打順の決め方や打席でのボールの待ち方などについて質問したという。
後期開幕戦となったこの日の信濃グランセローズ戦、富山GRNサンダーバーズはエース乾真大の奮闘により2-1で逃げ切った。古田さんから伝授された打撃向上の秘策によって効果が表れるのは、これからだろう。
「優勝したらビールでも送ろう」という古田さんの言葉に、「ビールを持って、また来てください」と伊藤監督。古田・伊藤バッテリーを、富山でもう一度見てみたい。
※写真/筆者撮影
※伊藤監督については、こんな記事も書いています。
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