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アシックスの厚底シューズがアップデート。日本代表の高機能ウエアにも注目!

和田悟志フリーランスライター
スペインで開催されたMeta : Time : Trials(写真/アシックス)

 陸上の世界選手権オレゴン大会の開幕が1カ月後と迫り、各メーカーから新作シューズが続々と発表されている。

昨年話題を集めた厚底シューズ「METASPEED」がアップデート

 アシックスは、6月14日に新たなレーシングシューズの「METASPEED+」シリーズを発売した。

 以前は、厚底レーシングシューズといえば、ナイキ社のシューズの代名詞のようなものだった。昨年(2021年)の箱根駅伝では約96%の大学生ランナーが同社のシューズを履いて箱根路に臨んだほどだ。一方で、その年にアシックス社のシューズを着用した選手はまさかの0人と、差を開けられていた。

 ところが、昨年3月にアシックスから「METASPEED」シリーズが登場すると、じわじわと支持を集め、駅伝やマラソンなどロードレースで存在感を示し始めた。そして、今年の箱根駅伝ではシェア率11%(24人が着用)まで盛り返した。

この「METASPEED」シリーズがアップデートされたのが、「METASPEED+」シリーズだ。

 発売に先立って、今年4月には、スペインのマラガで大々的に新作発表イベントが開催された。

 そのイベントの一環として、世界陸連公認レース「Meta : Time : Trials」が行われ、世界各地から集結した79人のトップランナーが「METASPEED+」シリーズを着用し、ハーフマラソン、10km、5kmの各種目で自己ベストを目指して走った。

 昨年の東京五輪に5000mと10000mの2種目で出場したエイリッシュ・マッコルガン(英国)が、女子5kmで、欧州記録にあと1秒と迫る14分45秒の英国新記録を樹立したのをはじめ、出場79人のうち27人が自己新記録をマーク。さらには4つのナショナルレコードが打ち立てられた。レースの模様は、世界中に配信され、シューズの性能も実証された。

女子5kmでは、エイリッシュ・マッコルガンが14分45秒の英国新記録を樹立した(写真/アシックス)
女子5kmでは、エイリッシュ・マッコルガンが14分45秒の英国新記録を樹立した(写真/アシックス)

 また、この「META:Time:Trials」をベースコンセプトとし、日本国内の一般ランナーが5000mに挑む「META : Time : Trials Japan Series」というレースも、リアルとバーチャルの両方で開催中だ。

 こんなところからも、このシューズに対するアシックスの本気度を窺い知ることができる。

 「METASPEED+」シリーズには、ストライド型走法に対応するMETASPEED SKY+(メタスピードスカイプラス)と、ピッチ型走法に対応するMETASPEED EDGE+(メタスピードエッジプラス)とがある。自分の走り方に適したモデルを選ぶことで、自身のパフォーマンスをいっそう引き出すことができるというのが、このシリーズのコンセプトだ。

 いずれのシューズも、ミッドソールには、アシックスが独自に開発した軽量ミッドソールフォーム材の中で最も優れた反発性を持つ素材「FF BLAST TURBO」を全面に採用し、前作よりもSKY+は約4%、EDGE+は約16%も増量している。さらには、カーボンプレートが配置されている位置が大きく変わり、それぞれに適した走法により対応できるようになった。

グリーンとイエローは、世界選手権の会場のあるオレゴン大学のスクールカラーをイメージ。写真はMETASPEED SKY+(写真/アシックス)
グリーンとイエローは、世界選手権の会場のあるオレゴン大学のスクールカラーをイメージ。写真はMETASPEED SKY+(写真/アシックス)

 オレゴン世界選手権で、アシックスがサポートする選手は、「METASPEED+」シリーズのほか、トラックでは短距離用の「METASPRINT」、長距離用の「METASPEED LD」を着用する。それらのシューズは、キーカラーであるグリーンとイエローが印象的だ。これは、会場のヘイワード・フィールドがあるオレゴン大学のスクールカラーをイメージしているという。

シューズだけでなく、ウエアも高機能

 シューズばかりに注目が集まるが、アシックスが提供する日本代表のユニフォームにも注目したい。

 日本陸上競技選手権の翌日、6月13日に行われた日本代表会見では、オレゴン世界選手権で日本代表選手が着用するユニフォームが初披露された。

日本代表会見では、選手たちがオレゴン世界選手権で着用する新ユニフォームが披露された
日本代表会見では、選手たちがオレゴン世界選手権で着用する新ユニフォームが披露された

 デザイン面では、2015年から日本代表ユニフォームに採用されている「サンライズレッド」(朝日が昇る力強さをイメージ)をベースに、頂上を意味する新デザイン「CJ LINE」が新たなグラフィックとして採用し、アスリート一人一人が目指す「頂」や「志」を表現している。

「”頂き”をイメージしているので、世界一を目指すのにふさわしいユニフォームだと思います。着てみて、身の引き締まる思いです」

 昨年の東京オリンピック男子走幅跳で6位に入賞した橋岡優輝(富士通)は、ユニフォームに袖を通し、率直な思いを口にした。

 ユニフォームの機能面のコンセプトは「IN THE ZONE」。アスリートが様々な動作で感じる不具合や不快感を取り除くことで、より競技に集中し、優れたパフォーマンスを発揮できるように設計されている。

 例えば、短距離選手が着用するシングレットは、2019年ドーハ大会のものは78g、昨夏の東京五輪のものは62gだったが、一気に51gにまで軽量化することに成功した。

 また、主にマラソンや競歩の選手が着用するシングレットには、体温が上昇しやすい場所を特定し、湿度を効果的に下げるようにしたアシックス独自の機能構造「ACTIBREEZE(アクティブリーズ)」が用いられている。

 東京オリンピックの前には、日本の高温多湿の環境下における暑熱対策として様々な研究がなされており、このACTIBREEZEはその中で誕生した。さらに、1枚のパーツで作製されているのも特徴だろう。縫製箇所を少なくすることで、着用時のストレスを軽減した。また、深い袖ぐり設計により、肩甲骨や肩周りの不快感を軽減してくれる。

「自分の競技の特性上、水に濡れるので、そういったところも考慮されていて、良いものだなと思いました。このユニフォームに見合った走りがしたいと思います」と、3000m障害の三浦龍司(順天堂大)。その着心地は、選手たちに好評だ。

 これらの高機能のユニフォームは、日本代表の選手だけでなく、戦禍に見舞われているウクライナなど、アシックスがサポートする各国の選手が着用するという。

 ついつい見過ごされがちだが、アスリートが0.1秒でも速く走るため、また、1cmでも遠くに跳ぶため、飛ばすために、ウエアにも様々な工夫が凝らされているのだ。

<参照>

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フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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