知的障害の被告女性に女児遺棄で有罪判決:障害者と犯罪と私たちからの支援

イラストはイメージ:裁かれるべきは誰か(提供:アフロ)

<知的障害者でも犯罪者は犯罪者。しかし、私たちの支援で、悲劇を防ぐことはできるはず。>

■赤ん坊をトイレに生み落とし遺棄 した軽度知的障害の被告に有罪判決

自宅のくみ取り式トイレに女児を産み落としたとして、死体遺棄の罪に問われた女性被告(24)~懲役1年2月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)~「精神年齢8歳9カ月」~「被告は軽度の知的障害があるものの、妊娠・出産の意味は理解していた。体内から女児がいなくなったことに妊婦自身が気付かなかったはずがない」

出典:軽度の知的障害の被告に有罪判決 妊娠相談できず 女児死体遺棄 佐賀地裁 8/27(木)毎日新聞Y!

被告は罪を犯したとして、有罪判決が出ました。ただし、「適切な対応を取るのが難しく、周囲から十分な支援を受けられなかった面もある」として、執行猶予となりました。

■罪を犯す障害者

知的障害者や精神疾患があるからといって、犯罪者なるわけではありません。知的な障害があっても、順法意識がとても高く、社会に適応している人もたくさんいます。

しかしその一方、刑務所に入っている人の4人に1人には知的障害があるとも言われています。

ドラマに出てくる犯罪者は、しばしば社会的地位が高く、巧みな犯罪計画を練りますが、実際の受刑者たちは違います。

■累犯障害者

私たちが目をつぶっていたこの問題に光を当てたのが、元衆院議員である山本譲司氏の著作「累犯障害者」でした(2009年、新潮文庫)。

この本の中には、犯行発覚の2001年当時「レッサーパンダ帽の男」と呼ばれた、女子短大生刺殺事件の加害者なども登場します。

被害は極めて深刻です。事件報道の当初は、血も涙もない極悪人として報道されたように思います。しかし、彼には知的障害と発達障害がありました。

軽微な犯罪を繰り返し、前科もあり、頼りになる支援者もいないまま、女性に馬鹿にされたと誤解した末の犯行でした。この事件では、障害はあるものの完全責任能力があると判断され、無期懲役の判決がでました。

障害があっても、犯罪者は犯罪者です。責任能力があれば、制裁を受けるできです。しかし、もしも大きな犯罪を犯す前に、障害者として適切な支援をけていれば、悲劇は防げていたかもしれません。

■弱者としての犯罪者

鑑別所、少年院、少年刑務所、刑務所。それぞれ、訪問したことがあります。所内には、国立大学を卒業した人もいますが、読み書きも満足にできない人もいます。

障害の問題と恵まれない環境の問題が絡んで、適切な支援を受けないままに人生を送ってきた人達が大勢います。

生活保護も、労災も、理解していない人がいます。言葉は知っていても、どのように手続きをしたら良いかがわかりません。手伝ってくれる人もいません。

一生懸命働いていたのに、雇い主に良いように扱われ、労働者としての権利も守られず、貧困の中で犯罪を繰り返してきた人もいます。

刑務所だけが安住の地だと言う人もいます。

■私たちからの支援を

障害があっても、人間関係が上手で、人に好かれやすく、また家族環境に恵まれている人たちもいます。

知的障害者の親たちらによって作られた「手をつなぐ育成会」の方々とお話しすると、本当に素晴らしい人たちだと思います。

自分の子供たちの働く場を作るために、親たちが奔走し、地域に作業所を作るような人たちもいます。各地域の、全国の障害を持った人たちのために、日々奮闘しています。

知的障害者による「スペシャルオリンピックス」に参加する選手や家族たちも、素晴らしい人たちです。

スペシャルオリンピックス:And you?:知的障害者のスポーツ大会、そしてあなたは

けれども、このような環境に恵まれていない人たちもいます。

国は現在、刑務所などの矯正施設から退所したものの、障害や高齢のために生活が困難な人たちを福祉支援につなげるための「地域生活定着支援センター」を、全国各地で設置し始めています。

少しずつ、改善は進んでいます。しかし、すべてを法律や行政でまかなうことはできません。私たち一人ひとりの支援が必要ではないでしょうか。

障害者を支援し、障害者を支援する人々を支援したいと思います。

犯罪者を安易にかばうことはできません。被害者は苦しんでいます。しかし、孤立している障害者を支援することが、犯罪防止になり、被害防止にもなることでしょう。

~~~~~~~

NHK バリバラ:罪をくり返す障害者

刑務所に12回入った73歳が語ったこと:47NEWS

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

有料ニュースの定期購読

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法サンプル記事
月額550円(初月無料)
週1回程度
心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。

  1. 1
    <朝ドラ「エール」と史実>「夜は飲みつづけ、日中は寝つづけ」佐藤久志のモデルも酒浸り…どう復活した?辻田真佐憲10/27(火) 8:30
  2. 2
    実質タダ?【GoToホテル】非常識な裏技への違和感瀧澤信秋10/28(水) 8:34
  3. 3
    麻生太郎財務大臣 今度は「お金に困っている方の数は少ない」 いやいや困っている方ばかりです藤田孝典10/27(火) 6:00
  4. 4
    岡村隆史さんの結婚と風俗発言と予期されていた深刻な女性の貧困問題藤田孝典10/23(金) 5:00
  5. 5
    「コロナ感染者」は韓国が全体で2万5千人なのに東京だけで3万人を突破! ソウルの5倍で大丈夫か?辺真一10/25(日) 19:00
  6. 6
    愛国に燃える「戦狼」留学生の恐怖 中国共産党からの「学問の自由」を全く議論しない日本メディアの不思議木村正人10/28(水) 20:27
  7. 7
    富士山の宝永噴火49日前に発生した宝永地震と安倍川餅饒村曜10/28(水) 4:00
  8. 8
    少人数学級はなにに効果的なのか? 財務省と文科省の攻防、両者が見落としているもの妹尾昌俊10/28(水) 17:32
  9. 9
    不登校は子どもの責任ではない、子どもたちの「生き生き」を奪っているのは誰なのか前屋毅10/28(水) 7:00
  10. 10
    消えた背番号10 イスラム教徒に「表現の自由」は認められない プロスポーツは中国の圧力に屈したのか木村正人10/27(火) 16:24