宝塚家族四人殺傷事件の犯罪心理学

写真はイメージ:宝塚南口駅前広場(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

<解決されない恨みの感情が増幅すると、恐ろしいエネルギーになる。武器が人が殺すのではなく人が人を殺すが、武器がなければ起きなかった犯罪も多い。>

■兵庫県宝塚市家族四人ボーガン殺傷事件

ショッキングな事件が発生した。

兵庫県宝塚市の民家で4人がボーガンで襲撃され3人が死亡、1人が負傷した事件で、5本の矢が4人の首や頭に刺さっていたことが5日、県警への取材で分かった。

 貫通していた矢もあり、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された自称大学生の野津英滉容疑者(23)は近い距離から頭部を狙って矢を放ったとみられる。県警宝塚署捜査本部は強い恨みがあったとみて、動機やトラブルの有無を調べる。

出典:逮捕の男、家族に強い恨みか 4人の頭部に矢5本 兵庫県警 6/5時事通信Y!

■家族皆殺しの心理

一般に、その家庭の子供による家族全員の殺害を狙った犯罪は、その青年の追い詰められた心が原因とされる。金目当ての犯行でもないし、単純なケンカでもない。

目の前の一人への殺意なら、ケンカなどで瞬間的に湧き上がることもあるだろう。しかし、大量殺人「みな殺し」といった殺意は、一般的に長い時間をかけて醸成される。

彼らは、親や祖父母が、自分の頭の上の巨大な岩のように感じ、普通の抗議や反発程度ではどうしようもないと思い込む。

多くの場合は、積み重ねられた重い気持ちが、あるきっかけで爆発する。たとえば、過去の犯罪事例では、父親は自分を締め付ける存在だたが、母親はかばってくれる存在だった。ところが、その日、母親までもが自分に冷たい態度をとった。その夜、息子は金属バットで家族皆殺しを図った。

多くの極端な犯罪行動は、準備状態の高まりと直接のきっけによって生じる。

親を殺害する若者は、現実的な逃亡計画を持たないことが多い。大量殺人者は、自分の現実的な将来を考えてはいない。家族を殺害した後、まるで偉大なことを成し遂げたように堂々と振る舞っていた少年もいた。

たいていの場合は、その青年の直接の怒りや不満の対象は、家族の中の一人か二人なのだが、問題解決のために家族を巻き込むこともある。

また、たとえば優しかったはずの祖母なども、結局は「あちら側」の人間、悪い家族の一員と見て、全員殺害を狙うこともある。

■恨みの感情とは

「恨み」は、しばしば弱者の感情と言われる。不愉快な思いをしたときにすぐに効果的な反撃ができる人は、恨みの感情を持たなくて済む。

また、恨みの感情を持っても、多くの場合は、他の楽しいことなどで次第に薄れていくことが多い。多くの思春期青年期の子供たちは、両親や祖父母に反発心を持つ。彼らは、その思いを友人同士で共有する。

友達にぐちをこぼし、思いを共有してもらい、親子の対立はどこの家にもあることだと理解し、心がほぐれていく。子供若者にとって、本音で話せる友人は大切だ。

ほとんどの子供たちは、憎い嫌な親のイメージと、愛してくれる良い親のイメージの両方を持ち、二つのイメージは成長と共に融合していく。親に文句はあるけれど、感謝もしているという気持ちである。

しかし時に、悪い親のイメージだけが膨れ上がってしまうことがある。

また、たとえば中高生の時に嫌な思いをして復讐心を持ったとしても、その後の人生が上手う行くと、復讐心は薄れていく。復讐など馬鹿らしいと感じて、過去のことよりも、今を頑張ろうと思えるのだ。

しかし、逆にそのあとも思い通りにならない嫌なことが続くこと、何もかもが、あのことが原因がと強く感じて、むしろ恨みの感情が増幅されることもある。

増幅された恨みのエネルギーはすさまじく、恨みを晴らすことに意識が集中してしまうこともある。

■凶器、ボーガン(クロスボウ)

大量殺人を考える人々は、しばしば「力」にあこがれる。体を鍛える人もいるし、ナイフや銃を集める人もいる。すぐに実際に使う気持ちはなくても、その武器を身に着けたり、かっこよくかまえてポーズをとったりすることで、自分が強くなった気分を味わうのだ。

強いストレスがたまったときに、そのナイフやバットを振り回し、何かを壊すことでストレス発散する人もいる。

ただ、健全な激しい行為(ボールを思い切り蹴ったり、大声でカラオケを歌ったり、許される場所で許されるものを壊すなど)はストレス発散になるが、家を壊しても、あとになればかえってストレスが増すこともある。

動物などを狙う人もいるが、次第に動物では満足が得られなくなり、人間をターゲットにする人もいる。

ボーガン(クロスボウ)は、本来はスポーツ用品だが、簡単に入手できて強力な強力な凶器にもなりうるものだ。

アメリカの銃規制の話題の時には、「凶器が人を殺すのではく、人が人を殺す」と銃規制反対派はよく主張する。だが、凶器の存在は重要だ。その凶器がなければ起きなかった犯罪もあるだろう。

強い殺意があっても、殺意を実行に移すためには、背中を押す道具やきっかけが必要だ。犯行が実行されるその前に、止めることができたチャンスがいくつもあったこちだろう。

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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