■社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)とは

社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)とは、公衆衛生上で使われるときには、感染拡大を防ぐために意図的に人と人との距離を保つことを表します。

日本でも2メートルほど離れましょうということになっています。人と離れることは大きなストレスになりますが、感染予防のためには大切なことです。

人が人と離れるストレス:集会中止、休校、テレワーク、社会的距離ソーシャル・ディスタンスの心理

ただ、人と離れるためには、お互いの協力が必要です。こちらが離れても、相手が近づいてきたら、社会的距離はとれません。

でも、「あっち行って!」「離れて!」なんて、言えませんよね。ではどうすれば良いでしょうか。

■離れることを上手に伝えよう

大切なのは良いコミュニケーション、上手な言い方です。

アメリカの「パーソナリティ・社会心理学会」が、悩みみなさんにアドバイスをしています。そのアドバイスを日本心理学会が翻訳して公開しています。

社会的距離を保つよう、感じよくお願いする方法:日本心理学会

私たちは、だれかに何かをしてもらいと思うことがあります。でも、そのお願いや指示や命令は、相手の自由を奪うことにもなります。

だから、私たちは他人に無理な要求をしません。そんなことをしたら、ケンカになります。誰だって、人から無理なことを言われたくはありません。

「依頼内容が明確であるほど、強要的で、不快で、脅迫のように聞こえる可能性は高くなります」。

日本人だけでなく、アメリカ人も、同じように感じるようです。けれども、社会的距離を保つことははっきりお願いしなければならないことです。けれども、摩擦や衝突は避けたいものです。

「脅迫的でない言い回しとしては、何をしてほしいのか、間接的なヒントを盛り込むやり方があります」。

日本人は婉曲なものの言い方をしますが、英語でも丁寧ない方ほど、文章が長くなります。

「窓開けて」とはっきり言わずに、「少し部屋が暑いですね」と言って、相手に気づいてもらう方法もあります。

「もし、ご迷惑でなければ、少し窓を開けていただいてもよろしでしょうか」という、長くて丁寧な言い方もあります。

ビジネスマナーでは、クッション言葉などと言われますが、「これ、コピー三枚!」ではなく、「忙しいとところ悪いんだけど、これコピーを三枚とってきてくれるかな」と言った表現です。

■「ポジティブ・ポライトネス」:上手な言い方の心理学

日本心理学会が紹介しているのは、「ポジティブ・ポライトネス」です。

聞きなれない言葉ですが、これは「相手にあなたの言うとおりにしろと要求するのではなく、お互い安全に、と共通の目標があることをを伝える」方法です。

社会的距離をとってほしいなら、「お互いに安全を確保しましょう。距離を取りましょうね!」といった言い方です。

依頼内容が明確になると同時に、礼儀正しく伝える方法とも言えるでしょう。

人は自分が否定されたように感じると、怒りがわいてきます。社会的距離をとりましょうという依頼は、決してあなたを否定しているわけではないと、わかってもらう必要があります。

ポジティブ・ポライトネスの研究者は、その方法として、「冗談をいったり、方言をつかったり、仲間言葉をつかったりすること」をあげています。

これは、大人でも子供でも、人間関係が器用な人は使っています。誰かを叱ったり、注意したりするときも、ちょっと冗談めかして、友好的な態度で、やわらかな言葉を使える人たちです。

露骨に言われたら怒る人も、こんなふうに上手に言われると、言うことを聞いてくれやすくなるでしょう。

それは、友人知人に対してだけでなく、初対面の人にも効果的です。

■良い人間関係を保とう

新型コロナウイルスは、私たち全員に大きなストレスを与えています。その結果人間関係が悪くなれば、ますますストレスが増えます。

思ったままを口にする、正しいことをズバリ指摘する。みんながイライラしているときに、そのやり方は上手くないでしょう。

社会的距離の問題に限りません。こんな時だからこそ、危機を乗り越えるためには、しなやかな人間関係を作っていくことが大切でしょう。

「ていねいな言葉を使え!」ではなく、

「お互いのために、あなたもちょっと工夫してみましょう」。

「心理学的にいえばポジティブ・ポライトネスが大切です」ではなく、

「そうだよね。ライラしてもしょうがないしさ。みんなで仲良くやっていこうよ」。