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もっと嘘をつこう:エイプリルフールに考える人間関係の心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
アメリカのエイプリルフール。乗ると若返るMini発表。(写真:ロイター/アフロ)

こんにちは。以下に書いてあることは嘘ではなく本当です(4月1日筆者)。

■嘘とは

嘘とは、事実ではないことを言うことです。人間は3歳ごろから上手な嘘をつき始めます。嘘がつけないとは、心の中を全て読まれてしまうことになるので、人間関係が築けません。

子どもに「嘘をついてはいけません」と教える親も、子どもが近所の太めのおばさんに向かって「おばさん、太ってるね」などと語れば、子どもを叱りつけるでしょう。

こんな心理学の実験があります。

悪いオオカミがヒツジを追いかけてくる。ヒツジは物陰に隠れて、この人形劇を見ている子どもたちに「オオカミには内緒だよ」と言います。そこへオオカミ登場。「ヒツジはどこだ!?」と子どもたちに質問します。

3歳未満の子どもだと正直に答えてしまったりするのですが、3歳を過ぎる頃になると、上手に嘘がつけます。子どもの嘘を信じたオオカミが右往左往する姿を見て、楽しそうに笑うことができます。

おじいちゃんからプレゼントされたおもちゃが、もうすでに持っている場合、幼稚園児でも演技をして嬉しそうに「ありがとう」と言うことがでるのです。

■事件になってしまう嘘

先日、「寝坊の言い訳は「知らない男に拉致された」…22歳消防士を減給処分」というニュースが流れました。

このニュース報道に対して、「小学生でも、もうちょっと気の利いた言い訳考えると思うけど」といったコメントも寄せられていました。

ただあまりニュースにはなりませんが、何かをごまかすために不審者の作り話をする子どもはいます。大抵は話の不自然さに大人が気づき、大ごとにはならずに済んでいます。

寝坊という事実は、確かに言いにくいでしょう。「寝坊」は100パーセントその人が悪く、その人の怠惰さやいい加減さを強調してしまうからです。

■ウソの上手なつき方

私たちはその時々に、嘘や理由づけを行います。心理学の研究によれば、人は何らかの理由づけを行うだけでも、話に納得しやすくなることがわかっています。

たとえば、誰かに何かを誘われた時、本音で言えば「あんたとなんか行きたくない」だとしても、「ちょっと忙しくて」などと理由付けを行うのが、普通です。

寝坊にしても、体調不良の理由を付け加えたり、前の晩飲みすぎた話などを付け加えたほうが、話はスムーズに行くものです。その理由づけが事実かどうかまでは、確認されないことが多いでしょう。

もちろん遅刻に対する罰は覚悟しなければなりません。人はしばしば小さな罰を恐れすぎ、些細な失敗をごまかそうとして、大きな問題を起こしてしまいます。

嘘も時には必要ですが、必要最低限の嘘をだけをついて、素直に謝罪もできることが、人間関係には必要でしょう。

■「嘘」が通用する社会を

もちろん、詐欺のような嘘は困ります。犯罪になってしまうような嘘はダメです。信じられないような嘘を平気でつけてしまう人もいますが、その人たちは嘘に良心の呵責を感じないので、自信を持って具体的に語れてしまいます。そんな嘘はともかくとして、人間関係を良くする意味での嘘は必要です。

数学や裁判ではないので、人は他の人の言葉の正確さをそれほど求めていません。互いに気持ちよく、そして仕事がスムーズに進めば、それで良いでしょう。忙しくなさそうな人に仕事を頼むときにも、「忙しいのに悪いんだけど」と言った方が、上手くいくでしょう。もちろん「悪い」とも思っていないわけですが。

人間関係をより良くするための嘘は、ある程度お互いにわかっている嘘です。結婚式の新郎新婦紹介のようなものです。互いの信頼と、共通の価値観と、心の余裕があるからこそ、婉曲な表現や、演出と言えるような嘘が通用するし、ジョークも楽しめます。

世界では、大企業や国営放送までエイプリールフールを楽しみます。イギリス国営放送BBCのエイプリルフールは有名ですね。

  • ロンドン塔の大時計ベッグベンがデジタル時計になる。
  • 空飛ぶペンギン発見。
  • 一時的に地球の重力が低くなり、浮遊感が得られる。

その時代時代に合った楽しいエイプリルフールを毎年行なっています。嘘を信じて真面目に問い合わせしてくる人もたくさんいるそうです。

ヤフージャパンも、数年前まではエイプリールフールを行なっていました。しかし現在では行なっていません。私の記憶では、大きな影響を持ちうるということを配慮して中止したかと思います。「ヤフーはネット界のNHK」と言う人もいるそうです。だから、ふざけてはいけないわけです。

でもBBCもイギリスの国営放送なのですけれどもね。ただNHKでは、女王様までジョークにしてしまう『モンティーバイソン』のような番組は作れないのでしょう(番組は女王を侮辱などしておらず、むしろ敬愛し、イギリス社会もそれを受け入れるのでしょう)。

日本のヤフージャパンやNHKが悪いというわけではありません。私たちが、その嘘を受け入れるか、楽しめるかということです。真面目な日本社会でも、みんなでエイプリルフールを楽しめるときは来るのでしょうか。

今年は、昨年の米大統領選のさなかに発生した「偽ニュース」現象の影響で、「北欧メディアがエープリルフールを自粛」と言った悲しいニュースも流れています。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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