アナと雪の女王 『雪だるまつくろう』の歌詞と映像の意味を心理学で解説
■『アナと雪の女王』のもう一つの名曲 「雪だるまつくろう」:歌、歌詞、映像
アバター越えの大ヒットを記録している『アナと雪の女王』(『アナと雪の女王』 3D映画国内1位 興行収入200億円も視野に:THE PAGE 5月7日)。
主題歌の「レット・イット・ゴー:ありのままで」も大ヒットですが、もう一つの名曲が、「雪だるま作ろう」。
自分の魔法の力におびえ、ドアを閉ざして部屋から出て来ない姉のエルサに向かって、妹のアナが歌います。
アナと雪の女王 『雪だるまつくろう』
日本語版では、アナの成長と共に稲葉菜月さん、 諸星すみれさん、神田沙也加さんが歌っています。
心にしみますね。
■雪だるま作ろう
寒い冷たい雪ですが、子どもたちは元気です。ニコニコ笑いながら、力を思いっきり出して、想像力の翼を広げ、汗をかきながら、大きな雪だるまを作ります。
アナと雪の女王「雪だるまつくろう」の歌詞、
「♪雪だるま作ろう」は、辛いことがあって元気いっぱい生きていこうという気持ちの表現でしょう。
「♪大きな雪だるまー」は、自分の力を試してみようという呼びかけでしょう。
■手袋
間奏の間に、エルサは手袋をします。本当はすばらしい力、個性なのに、エルサも両親もその力を恐れ、個性を封印します。
■自転車に乗ろう
歌詞「♪雪だるま作ろう」「♪自転車に乗ろう」。
みなさんは、どのようにして自転車に乗れるようになりましたか。あんな細いタイヤで倒れないで走れるなんて、自転車に乗れない人から見れば、魔法のようです。
どのように練習をしましたか? たぶん多くの人の思い出にあると思います。最初はひっくり返って痛い目にあった思い出もあるでしょうか。それでもあなたは、くじけませんでした。
自転車に乗れるようになれば、子どもはさらに難しい技や冒険を行います。手放し運転や、坂道での猛スピードなど(道交法違反や本当に事故になっては困りますが)、曲乗りをしたり、競争したり、遠くまででかけたり。自転車は、怖くて危ないけれど、子どもの可能性を広げる魔法の道具です。
「自転車に乗ろう」という歌詞は、「雪だるま作ろう」と同様に、自分の可能性を試そう、冒険をしようという象徴でしょう。映画の映像では、アナはずいぶん無茶で危ない乗り方をしていますね(アニメですから大怪我はしませんが)。
■「壁の絵とおしゃべりしちゃう」
歌詞「♪ずっと一人でいると、壁の絵とおしゃべりしちゃう」。
お城の門は閉ざされ、仲良しのエルサとも遊べない。元気で積極的なアナですが、遊び相手がいなくて、さびしい毎日を送っています。アナのように天真爛漫で明るい子も、ずっと一人でいると、壁の絵とおしゃべりしてしまうのですね。
現代人が、二次元の世界やネットの世界にのめり込むことがあるように。
■「がんばれ、ジャンヌ」
歌詞の中のセリフです。
映画では、偶然目に入った「ジャンヌ・ダルク」の絵に向かって、ひっくり返ったアナが言います。「がんばれ、ジャンヌ」。
アナは何気なく言ったのでしょうが、ジャンヌ・ダルクは、フランスを救った国民的英雄である少女、ヒロインです。ジャンヌ・ダルクは、大きな困難に勇敢に立ち向かう女性の象徴です。
革命的なすばらしい挑戦をする女性を、「日本のジャンヌ・ダルク」とか「21世紀のジャンヌ・ダルク」と言ったりしますね。
「がんばれ、ジャンヌ」は、すばらしい個性と大きな力をもった姉エルサへのエールでしょう。そして、毎日がんばっている自分自身へのエールでしょう。アナも、ユニークな女の子ですから。お姫様としては、かなり自由でおてんばですね。
■寂しい部屋で、柱時計見てたりするの
心理学的に言うと、人は「時間の構造化」をしたいと願っています。何もない、ただ漠然と過ぎていく時間は、人間にとって耐えられないのです。人と話がしたい、愛し合いたい、やりがいのあることをしたい、楽しいことをしたいと願っています。
でも何もないと、つまらないことでもして時間をつぶそうとします。歌詞にあるように、柱時計の振り子の動きをぼんやりと眺めるように。
■口を鳴らすアナ
柱時計の音にあわせて、アナは口(舌)を鳴らします。軽い自己刺激ですね。ひまなときや、寂しい時など、人は自分の手や顔をさわるセルフタッチングをしたり、鉛筆でトントンと軽く頭を叩いたりします。その感覚や音で、ささやかな気晴らしをします。
本当は、アナはエルサと一緒に大きな雪だるまを作ったり、自転車に乗りたいのに。
■両親の死:不安と自律
間奏の間に、大きななったエルサがさらに自分の魔法の力におびえ、人間関係に不安を持つシーンが出てきます。そして、両親への信頼を感じさせるシーンもありますね。
ところが、その両親、王様とお后さまは、事故で亡くなります。エルサは、自律して王位を継がざるを得ない立場に追い込まれます。
こんなことがなければ、自律はまだ先で良かったのですが、物語はテンポ良く、エルサを人生の次のステージへと向かわせます。
暗い怖い映像、重い音楽で、私たちの心にも不安が芽生えます。荒波と航海は、苦しい人生の象徴でしょうか。
■「ねえ、ドアをあけて」
アナは、幼いころから、歌い続け、語りかけ続けています。歌詞「♪ドアを開けて」。ドアは閉ざされた心の象徴でしょう。心を開いてと、幼いころは明るく元気に、大人になった今は深い思いを込めて、アナは歌います。「♪ねえ、ドアを開けて」。
■「そばにいれば支えあえる」
歌詞「♪心配してるの」「♪そばにいればささえあえる」。アナとエルサにとって、両親の死は、親の死というだけではなく、これからの王国のことを考えねばならない事態でもあります。
アナも不安でしょう。それでもアナは、エルサのことを心配しています。けれども、上から目線で援助をしようというわけではありません。自分の不安も認めつつ、「支えあえる」と語りかけます。「そばにいれば」と。
二人の間にはドアがあるだけです。声も聞こえます。でも心の距離は遠く離れています。支えあうためには、そばにいることが必要です。
近づけば、傷つけあうこともあるかもしれませんが(かつて魔法でエルサがアナを傷つけてしまったように)、でも傷つけあいながらも、そばにいる必要があります。
私たちも傷ついいたり、傷つけたりしたことで、人間関係に距離をとってしまいますが、でも誰かと一緒に、そばにいることが必要です。
■背中合わせの二人と氷の部屋
たった数センチのドアを隔てて、同じように不安なを抱えた二人は、同じポーズでしゃがみこんでいます。実は同じ思いなのに、それでもまだ心を開きドアを開けないエルサの部屋(心)は、冷たい雪と氷で覆われています。
ささやくような声で歌われる「♪雪だるまつくろう」が、心にしみます。
■この先の物語へ
さて、このあといろいろあり(ネタバレになるので書きませんが)、エルサは山に上り、「レット・イット・ゴー:ありのままで」を歌い上げます。
「雪だるまつくろう」と見事なコントラストで、エルサは手袋を脱ぎ捨て、自律し、ありのままの自分を好きになって、自分の力を試し、チャレンジします。
雪だるまも作りますね。エルサが作った雪だるま「オラフ」を、アナが育て、みんなで大冒険が始まります!
『雪だるまつくろう』の歌詞を理解して、『アナと雪の女王』の主題歌『レット・イット・ゴー:ありのままで』の歌詞を聞くと、感動倍増です(まあ、あんまりごちゃごちゃ考えなくてもいいですけどね)。
そして、あなたの心のドアをノックしている人も、きっといると思うのです。「雪だるまつくろう」「自転車に乗ろう」と。
雪だるまつくろう (アナと雪の女王 歌詞付)♪みんなで歌おう♪
レット・イット・ゴー:ありのままで(松たかこ)
『アナと雪の女王』の心理学:レリゴーと個性の本当の意味を読み解く