帰宅困難区域・住居制限区域・避難指示解除準備区域の違いとは:ふくしまと共に原子力災害に負けず
ニュースで毎日のように耳にする言葉ですが、区別できますでしょうか。ニュースでは聞きますけれども、福島県の方には申し訳ないのですが、県外の人間にとっては日常的に使う言葉ではありませんから、私も混乱しそうです。福島県を支援するためにも、少し復習しましょう。
帰宅困難、住居制限、避難指示解除準備の3区域合わせて「避難指示区域」です。
■避難指示とは・避難指示区域とは
「避難指示」とは、避難命令ではありませんが、避難勧告よりも強い言葉で、避難しなさいということです。日本では、法的な「避難命令」はなく、避難指示が出て避難しなくても罰則はありませんが、「警戒区域」に無断で入れば罰則もあります。といったことが、災害対策基本法に書かれています。<避難せよ:避難勧告・避難指示・避難命令:私達の命を守るために>
原子力事故の場合は原子力災害対策特別措置法に書かれています。避難指示が出ている区域が「避難指示区域」です。
■警戒区域とは・計画的避難区域とは(以前の区域設定)
警戒区域とは、災害による危険を防ぐために、許可を得た者以外の出入を禁止したり、制限したりしている区域です。天災の場合にも、人災の場合にも、警戒区域は設定されます。
福島第一原発事故後、以前の区域見直し前は、避難指示区域の中に「警戒区域」と「計画的避難区域」がありました。
2013年5月28日までは、福島第一原子力発電所から半径20km以内は、警戒区域でした。検問があって、そこから先は行けませんでした。
計画的避難区域とは、当時の20km圏内よりは遠いのでが、区域の指定から約1か月の間に避難のため立ち退くことを求めた区域です。そこに住むと、放射線の年間積算線量(1年間に受ける放射線量の合計)が20ミリシーベルトに達する恐れがあるとされた地域です。
■区域設定見直し(2012年4月から現在)
福島第一原発の原子炉が冷温停止状態になったあと、区域設定の見直しが行われ、2012年4月から区域が再編されました。
以前は、避難指示地域を警戒区域と計画的避難区域に分けていましたが、現在は避難指示区域を「帰宅困難区域」・「住居制限区域」・「避難指示解除準備区域」に分けています。
■帰宅困難区域とは
特別な許可がなければ、立ち入りできない地域が、帰宅困難区域です。立ち入り禁止です。国道には検問があります。現在の放射線の年間積算線量が50ミリシーベルトを超えており、5年後も20ミリシーベルトを下回らない可能性のある地域です。
■住居制限区域とは
その地域に住むことはできません。許可がなければ泊まることもできません。お店を開いて商売もできません。例外的に復興作業に必要なガソリンスタンドなどは開くことができます。
ただし住居制限区域は、特別な許可がなくとも自由に入ることができます。自動車で通ることも、車から降りて歩くこともできます。たとえば、飯舘村はみなさん避難していますが、村内を通る国道はたくさんの自動車が行き来しています。富岡町の富岡駅には、大勢の見学者がやってきます。
でも、居住制限区域の店は全部閉まっています。住んでいる人もいません。
放射線の年間積算線量が20〜50ミリシーベルトの地域です。
■避難指示解除準備区域とは
この地域には、特別な許可がなくても入ることができます。特別な許可がなければ自宅などに泊まることはできませんが、会社や店を開くことはできます。
■避難者・自主避難者とは
自宅が壊れていなくても、自宅に住むことができない避難指示地域(帰宅困難区域・住居制限区域・避難指示解除準備区域)の人は、「避難者」です。
福島県内の避難指示地域以外の場所は、普通に住んでいても良いのですが、様々な不安や事情のために避難する人もいます。この人が「自主避難者」です。
■区域設定
福島第一原発の近隣地域を行くと、ここは通っても良い、ここから先はだめとか、建物の玄関が封鎖されているところとそうでないところがあります。
たとえば富岡町は、3地域が入り交じっています。小さな道路一本をへだてて、同じ避難指示地域でも、こちら側が居住制限区域(出入り自由)、あちら側が帰宅困難地域(出入り禁止)になっていたりします。ほんの数メートルで、何の違いがあるのでしょう。たしかに、どこかで線を引かなくてはならないのでしょうが。
自宅が、避難指示区域に入るかはいらないか、さらに帰宅困難区域になるかならないかで、大きな違いが出ます。立ち入りや宿泊の自由だけではなく、東京電力の対応も変わります。保証金も違います。複雑な問題も起こるでしょう。
■3年たって
原発事故から3年たって、立ち入りできない場所は以前よりも狭くなりました。それは、大変良いことです。しかしそれによって、国や東京電力の対応もかわることになります。避難者が自主避難者に変わったりします。
本当に安全になって、安心して住めて、町も以前通りになるのなら良いのですが、区域の変更が悩みを大きくすることすらあるでしょう。
■ふくしまと共に
台風や地震は、多くの地域で起きます。様々な地域の人がいろいろな災害を経験しています。でも、これほど大きな原発災害は、福島県民だけが体験しています。
見えない放射線の災害は、わかりにくい災害です。それだけに、理解されにくい苦しみが長く続くこともあるでしょう。風評被害も続いています。放射能のジョークで笑う人もいます。
地震と津波とそして原発事故で被害を受けている福島県民もたくさんいます。それでも、風化し、忘れ去られる不安もあります。
「ふくしまの復興なくして日本の復興はない」と政府は言ってきたはず。ただの言葉だけで終わらせてはいけません。福島県内の方も、県外に避難、自主避難されている方も、支援していきたいと思います。
補足
国際放射線防護委員会(ICRP)は、人が受ける年間積算線量の許容量として、平常時は1ミリシーベルト以下、原子力事故などの緊急時は20~100ミリシーベルト、事故後の復旧期は1~20ミリシーベルトとする指標を示している。
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