山口県周南市5人殺害事件と津山30人殺し事件:大量殺人の心理
重要参考人の男性確保
山口県周南市の小さな集落で発生した、5人が殺害された事件。集落からわずか1キロの山中で、7月26日朝、事件解明の鍵を握るとみられる重要参考人の男(63)の身柄が確保されました。
事件の詳細については、不明です。ただ、小さな集落での大量殺人事件として、有名な「津山30人殺し」が思い出されます。
「津山30人殺し」事件(「八つ墓村」)
岡山で昭和13年に発生した事件です。小説や映画(「八つ墓村」)にもなり、有名な事件となりました。犯人は、この村に住む青年でした。この男性は、客観的に見ればそれほどの理由は見当たらないのに、激しく村人達を恨みつづけていました。
事件の日の未明、彼は電線を切り、暗闇となった村で、犯行に及びます。
黒装束に、頭の左右には巻きつけられた2本の懐中電灯。腰には日本刀、手には銃。その姿はさながら鬼のようだったといいます。この事件では、犯人の青年は村人から阻害されていると感じ、復讐に燃え、わずか1時間半ほどの間に30名の村人を殺害しました。
犯人は犯行後、遺書を残して自殺しています。彼は、もともとは乱暴な人間などではなく、子ども好きの文学青年であり、遺書の文章も立派なものでした。
彼は遺書の中で病気にかかったつらさ、そのため徴兵検査に落ち、周囲から馬鹿にされた(「恥辱を受けた」)辛さを語っています。女性関係でも傷つきます。彼はしだいに生きる希望をなくしていったと述べています。
彼は遺書の中で、このように書いています。
「僕がこの書物を残すのは、自分が精神異常者ではなくて、前もって覚悟の死であることを世の人に認めてもらいたいためである。~復讐のために死するのである~実際、弱いのにこりた。今度は強い人に生まれてこよう。~実際僕は不幸な人生だった。今度は幸福に生まれてこよう。」
大量殺人の心理
殺人は、めったに起きることではありませんが、その中でも、複数殺人はまれで、日本では殺人全体の1パーセントほどです(アメリカではもう少し割合が高いが)。だからこそ、大きなニュースになります。
同じ複数殺人でも、「連続殺人」は、冷静で逮捕されないように犯行を続けます。一方、一度に大勢の人を殺害する大量殺人は、すぐに捕まるような犯行です。
自分も、この世の中も、どうなっても良いという発想なのです。しばしば、大量殺人者は、恨みの感情を持ち、また正義の気持ちを持ちます。逆恨みなのですが、悪いのはあいつらであり、自分は正義の鉄拳を下すという発想です。
大量殺人者は、何らかの心の病を抱えていると考える研究者もいます。たしかに異常な妄想を持っていた犯人もいます。ただ、すべてがそうではないでしょう。また大量殺人者の多くは、本来は乱暴ではなく、むしろおとなしく、優秀である場合も多くあります。しかし、思うような人生を歩めず、絶望の末に犯行に至っています。
兵庫加古川7人殺害事件(2004)、大分一家6人殺傷事件(2000)、長崎スポーツクラブ乱射事件(2007)、バージニア工科大学銃乱射事件(2007)、秋葉原無差別殺傷事件(2008)など、大量殺人として同様の特徴が見られます。
今回の事件では、何が起きたのか、取り調べと供述を待ちたいと思います。
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容疑者逮捕と、容疑を認める供述を受け→