「ディープフェイク」なるものが脅威となる時代を迎えようとしているらしい。生成AIを使うことで、本物の人物と見分けがつかないほど巧妙な偽の動画を作成できるそうだ。そんな技術を使わなくても、「切り抜き」によって、発言や趣旨を変えてしまうことがいくらでもできてしまう時代でもある。

　YouTubeチャンネル「雑談魂」では毎回、野球界を中心にたくさんの方々をゲストに招いて楽しくトークをさせていただいている。以前から話しているように、私もゲストもこの番組の中で、たくさんの視聴者に楽しんでもらいたいと思っている。たくさんの人たちの応援もあり、登録者数は75万人を超えた。大変ありがたく思っている。

　しかし、悪質なケースも後を絶たない。チャンネル動画の一部を切り抜き、私とは無関係のYouTubeに違法にアップしているケースが散見される。「雑談魂」やコラボレーションで出演させていただくYouTubeチャンネルでは、お互いが場の雰囲気などでくだけた冗談を言い合ったりするケースもたくさんある。しかし、こうした番組の一部を無断で切り取った上で、発言の趣旨をゆがめるような動画があるのは、とても残念なことである。

　今月、所属するマネジメント会社「スポーツバックス」からリリースが出た。「雑談魂」の切り抜き動画と肖像使用に関してのものである。

　趣旨としては、「雑談魂」が掲載している写真や動画、そのほかコンテンツの肖像、著作などについては、第三者による無断使用を一切認めていないという点である。悪質な無断使用が判明した場合には、法的措置も含めた対応を取るということである。

　「肖像権」と同時に「誹謗中傷」に頭を悩ませているのは、私だけではない。昨今、著名人や芸能人、スポーツ選手に関する「肖像権の侵害」や、インターネット上の「誹謗中傷」にさらされている。

　私自身も身近な出来事の発信や、応援してくれる人たちへの告知などでＳＮＳを活用している。このことで、たくさんの人たちのダイレクトな声を聞くことができるようになった。以前にも書いたかもしれないが、きっかけはメジャーで中継ぎに回ったころ、新聞メディアで報道される機会が激減したことだった。マスメディアが報じてくれないなら、自分から発信しようと思った試みに、たくさんのファンがアクセスしてくれるようになって現在までＳＮＳを続けている。

　しかし、昨今はネット上での「誹謗中傷」に加え、私の「雑談魂」内での発言を無断で切り取って悪意に満ちた内容に編集した動画をアップする人がいる。明らかな違法行為について、これ以上は見過ごすことができなくなったというのが本音である。

　「誹謗中傷」や「肖像権の侵害」に苦しむのは、私だけではない。現役のプロ野球選手もかつてのヤジとは違い、顔の見えない人たちからの「攻撃」に苦しめられている。日本野球機構（NPB）と12球団、および日本プロ野球選手会が今年3月、誹謗中傷等に対しては発信者情報開示請求等の法的措置を講じ、専門家や警察などの関係機関と連携するなどの方針を公表した際にも、今回と同様のコラムをアップした。

　親しい人たちも「放っておけばいい」「相手にしないほうがいい」「イタチごっこに付き合わないほうがいい」という言葉をかけてくれる。しかし、事態はいっこうに好転しない。マネジメント会社が顧問弁護士とも相談してリリースを出してくれたことで、擁護する声が届いているという。

　自らが身を置いた野球界に対し、あるいは自分の経験から現役の選手たちの活躍に対し、自分の考えを発信しており、これからもスタンスを変えるつもりはない。以前にも書いた通り、建設的な議論はいつでもウエルカムである。こうしたリリースを出すことで批判の声を封じたいわけではない。「雑談魂」が作成した動画の一部、画像の一部を使って自らのYouTubeなどで再生回数を稼ぐという「権利侵害」はビジネス面で、こうした動画やネット上での「誹謗中傷」は人格面で取り返しのつかないことになるということを肝に銘じて欲しい。私自身も周囲の心配の声はうれしいが、「放っておく」ということはできない。毅然とした態度を取ると決めた覚悟にブレはない。