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「くすぶる選手にチャンス」実現する?プロ野球現役ドラフトへの上原浩治の疑問

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:ロイター/アフロ)

 日本球界で、現役ドラフトが始動することになった。

 新聞でも大きく取り上げられていたが、仕組みの解説や図解が記事の大半を占めていた。それだけ、対象となる選手には制限が多いということだろう。

 要約すると、各球団が2人以上の選手をリストとして提出し、最も多くの獲得希望を集めた選手をリストに入れた球団が最初に他球団のリストから選手を選ぶことができる。その後は指名を受けた球団が次に指名をし、また指名された球団が他球団のリストから選手を選ぶということを繰り返す。各球団は最低でも1人の選手を獲得し、1人の選手が他球団に移籍するという流れになる。提出リストは1人を除いて、年俸5000万円未満の選手で、FA資格のある選手や複数年契約の選手、育成選手などは対象外となる。

 仕組みを理解しつつも、「あっ、この選手がリストに入るかもしれないな」とパッと頭に思い浮かぶ選手がいないというのが第一印象だ。現役ドラフトの本来の目的は、チーム編成などの関係でくすぶってしまっている選手が他球団に移籍することで、活躍の場を広げる可能性を生むことである。ただ、簡単ではない。ファン目線では「買い殺し」「2軍でくすぶっている」と思っても、選手を保有する球団はドラフトなどで獲得した「戦力」として支配下登録をしている。大事なバックアップ要員を、他球団ならレギュラーで活躍できるからと、簡単に手放すわけにはいかないだろう。

 一方で、選手からすれば限られた現役生活。できる限り、出場機会のチャンスをつかみたいというのが本音である。

 制度としては、「他球団なら活躍できそうな、くすぶっている選手」がリストに並ばないと活性化していかない。たとえば、2軍で数年前にタイトルを獲得したにもかかわらず、その後のシーズンで1軍に定着できていないような選手や、1軍での出場試合数がキャリアハイから数年経過して半分程度に減少しているような選手をお互いにリストに入れるように対象選手を絞り、獲得した球団は翌シーズンに1軍で〇日以上(故障は除く)登録するなどのルールがあってもいいのではないだろうか。

 もちろん、球団と選手会が協議を重ねて合意した制度なのだから、最初から文句を言っても仕方がない。まずはやってみて、継続した協議があればいいと思う。ルールだけ決めて、制度化されても、活用の余地が乏しいということは避けてほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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