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上原浩治とは真逆のタイプ…巨人背番号19の後輩・山崎伊織投手の伸びしろ

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:ロイター/アフロ)

 背番号19の後輩が成長の階段を上がっている。巨人の山崎伊織投手が18日の広島戦で東京ドーム初勝利を挙げた。シュートとスライダーで効果的にホームベースの「左右」を広く使う投球スタイルにみえる。私の主な球種はまっすぐとフォーク。ホームベースに対して「上下」を使って投げるスタイルだったので、正反対のタイプともいえる。

 左右を広く使える投手の場合、打者はスイングするために踏み込んだ後、ボールが右か左かどちらに曲がるかを見極めないといけない。横への変化にスイングの軌道を合わせないといけないので、バットの芯でとらえることが難しい。まっすぐの球威もあれば、緩急で打者のタイミングも外しやすい。

 一方で、たとえばリーチの長い外国人選手なら外へ逃げるスライダーにもバットが届く。そういう意味で右打者のインコースにシュートを投げる勇気と、際どいコースに投げ切るコントロールが求められる。シュートを駆使できるのは強みだろう。

 プロ入り前の大学4年時に右肘の靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた。2021年ドラフト2位入団も今季が実質的に「プロ1年目」だ。球団の「待つ覚悟」と本人が地道なリハビリに耐えてこその開花だろう。

 今季は登板間隔をある程度空けて、球数も制限した起用になっている。このあたりは、ご自身もトミー・ジョン手術を経験した桑田さんの存在が大きいのではないか。「経験」に勝る「情報」はないと思っている。自分が経験したからこそ、伝えられること、注意できるところがあるはずだ。

 ただ、まだ5月で右足がつっての降板というのは、スタミナ不足という点は否めない。夏場になると、水分不足や疲れで足がつることもあるが、まだシーズン序盤。投げ込みなどをして「投げるスタミナ」をつけてほしい。試合の球数はブルペンの「3倍」に匹敵すると思っている。相手打者との駆け引きや緊迫感などがまるで違うからだ。もちろん、肘の負担を考慮した上での練習になるだろうが、「投げるスタミナ」がついてくれば、プロの体ができていくだろう。

 明け渡した背番号はもう本人のものだとわかった上で、やっぱり19番を背負う投手のことは気になるし、応援もしたくなる。先発ローテーションの一角を担う投手がつけてくれたらいいなと思っている。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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