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新庄監督の開幕投手新人抜擢は奇策なのか!?巧妙な狙いと成功へのポイントを上原浩治が分析

上原浩治元メジャーリーガー
現役時代からトリッキーなプレーが魅力だった新庄監督(写真:ロイター/アフロ)

 いきなりの〝奇策〟は、いかにも新庄さんらしい。

 日本ハムは25日の開幕投手に新人の北山亘基投手を抜擢した。ドラフト8位入団の22歳はオープン戦で好結果を残しているといっても5試合全てがリリーフ登板。自身のインスタグラムで開幕投手を発表したことも合わせて異例づくしだ。

 開幕は「143分の1」なのか、「特別」なのか。私は意義付けをする必要はないと思っている。現役時代は開幕戦に勝てば「この一勝は大きい。チームに勢いがつく」とプラスにとらえ、負けたら「143試合の中の1つ。勝っても5勝もらえるわけじゃない」と割り切った。先発時代には「開幕」を特別視するよりも、1年間投げ続けられることのほうが大事だと思っていた。もちろん、エース級投手の考えも様々だろう。チームで1人しか選ばれない大役という考えもある。一方で投手にとっては、相手が苦手チームかどうかということも気になる。

 新庄剛志監督は開幕カードでエース級同士の対決を回避し、相手が3、4番手の投手を送り込む2カード目を重視する意向を示唆してきた。昨季12勝(6敗)の上沢直之投手は2カード目に回りそうだ。開幕カードがソフトバンクの本拠地で組まれ、北海道での本拠地開幕が2カード目になることも影響したかもしれない。開幕カードは総力戦でぶつかり、2カード目にエースを起用して勝率を高める。一理ある戦術であり、どういう結果になるかで評価は割れるだろう。

 功を奏するかは、プレーする選手たちが趣旨を理解していることが前提になると考える。開幕戦を「チームで一番勝てる確率の高い投手が投げる特別な試合」ととらえ、準備してきた投手らに「北山抜擢」の意図をきちんと伝えているか。開幕に照準を合わせてきた野手たちが「投げるのはエースじゃないの」と違和感を持たないようにできているか。

 相手の千賀滉大投手にとってはどうだろう。相手がエース級でないとなったとき、「負けられない」という過度な重圧はかかるか。私はそうは思わない。投手はあくまで打者と対戦するわけであって、相手投手と対決するわけではない。私自身も相手の開幕投手が誰かは試合前こそ気になっていたが、試合が始まれば相手打線しか気にならなくなった。千賀投手の闘志はあくまで自分の投球に向けたものであり、自軍の勝利のためのものになるだろう。

 北山投手は新人ながら抑え候補と言われているほどで、短いイニングでの勝負に集中できるかが鍵を握るだろう。先発というよりは最初に投げるオープナーとして、1イニングはもちろん、2イニング目を抑えることができれば役目を果たしたといえる。「立ち上がり」と「2イニング目のマウンドに立てるか」に注目したい。2番手に誰を持ってくるかも新庄流になるだろう。先発タイプを起用するのか、それとも小刻みな継投で勝負するのか。勝っても負けても、開幕戦の主役は日本ハムになりそうだ。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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