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43人中17人…左腕投手が多く指名されたドラフト 理由は「野球が右回りの競技だから」

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:ロイター/アフロ)

 インターネットで検索したデータによると、日本人の左利きの人はだいたい10%くらいだそうだ。

 その割合からみると、やはり多いのは間違いない。11日に行われたプロ野球のドラフト会議。12球団が指名した投手(育成を除く)は43人だった。このうち、17人が左投手だった。全体の4割。左腕の需要の高さを改めて浮き彫りにした。

 ドラフト1位で指名された投手は9人いて、うち左腕が3人いた。筆頭格は西武が4球団競合(他は広島、ヤクルト、巨人)の末に1位で交渉権を獲得した西日本工業大の隅田知一郎投手だろう。150キロのまっすぐと6種類の変化球が魅力だという。身長は177センチと決して高くない。左腕はヤクルトのベテラン、石川雅規投手やロッテの小島和哉投手のように、上背がなくても活躍できるのも特徴だろう。

 近年、日本球界では左の好打者が多くなっている。左打者を封じるために左投手を起用するのが一つのセオリーでもある。左腕が重宝されるのは時代の流れもあるのだろう。

 そもそも、なぜ、左打者は左投手を打ちにくいのか。一つには、野球は「右回りの競技」だということが言えると思う。打者は右方向の一塁へ走ることから攻撃が始まる。左打者にとって、右回りに逆らう方向は外角のボールということになる。左腕との対戦では、外角のボールは自分から「逃げていく」イメージのボールになり、ただでさえ、遠くに見える外角のボールが逃げていくように投じられると打ちにくいというのはイメージいただけるだろう。だからといって、インコースを攻められるリスクもあるので、大胆には踏み込めない。左打者にとって、左腕、とりわけサイドスローの投手を打ちにくいのはこういう理屈があるといえる。

 同じことが右打者と右投手では言いにくいのは、右打者にとっては「右回り」に逆らうのは内角のボールになり、自分に向かってくる。少なくとも遠くに見えるボールがさらに逃げていく感覚にはない。右投手が右打者に投じる外角のボールは、打った後に自分が走っていく方向なので、「逃げていく」ように見えても、比較的追いやすいという部分もあるのだろう。このあたりは実際に右打者に感覚を聞いたほうがわかりやすいかもしれない。いずれにしても、「右回りの競技」で、好打者に左打ちが多くなれば、異彩を放つ左投手はそれだけで貴重な存在になり得る。

 今年のドラフトを見ていて、もう一つの印象は指名上位に地方の大学に在籍している選手の割合が多くなったことだ。日刊スポーツのネット記事をみていると、主な指名漏れの中には東京の名門大学の投手の顔ぶれも並んでいた。一方で、地方の大学でも練習環境が整ったことで、自分に合う大学に進学すればプロ入りの道が開けることが証明されつつある。

 話は変わるが、ドラフト前後では最速150キロ超の投手がたくさん紹介されている。しかし、プロ入り後のマウンドを見ると、本格派と言われていた投手が、実は変化球を駆使するタイプだったということは珍しくない。プロの門をたたくときに、「名刺代わり」のスピードガン表示は自分を高く売るために悪いとは思わない。ただ、スピードガンはあてにならないことも確かだ。メディアは数字に食いつくが、プロのスカウトはそこだけを見ているのではない。前評判が高くてもふたを開ければ、下位指名になる選手にはスピードガン表示以外に理由があるのかもしれない。

 プロ入りすれば、大学、社会人は「即戦力か否か」、高校生なら最速何キロよりも「のびしろがどれだけあるか」が大事になってくる。球威、制球、変化球の精度・・・、現状の自分の武器に何をプラスしていけるか。

 プロの打者がどのように「反応」するかを肌で感じ、自分の武器を磨いていってほしい。私の場合、打者の「反応」を重視したので、ブルペンでの投球に重きは置かなかった。もちろん、調整方法は人それぞれ。正解はない。あるとすれば、自分が結果を残せる調整こそが、ベストなのだと信じて突き進んでほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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