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オープン戦6本塁打の阪神・佐藤輝明はプロの壁にぶち当たったのか?投手から見た弱点と覚醒のポイント

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

「エースと4番は育てられない」。私自身も数多くの著書を読ませていただいた名将、野村克也さんの言葉だ。

 生まれ持った「大器」の片鱗をのぞかせているのが、阪神の佐藤輝明選手だろう。187センチ、94キロの左のスラッガー。恵まれた体格と強靭な肉体から繰り出す豪快なフルスイングは、誰もがマネをできるものではない。

 「6番・右翼」で先発出場した14日の広島戦。4回に森下暢仁投手のカーブを完璧にとらえた。右中間に飛び込む2ランは出場16試合で4本目。オープン戦の新人最多本塁打記録(ドラフト制以降)を49年ぶりに塗り替える6本塁打を放ったパワーが光る。

 前回のコラムでも書いた通り、シーズンが開幕すれば、投手も「本気度」が一気に増す。なかなか、「自分の形」では打たせてくれないのがプロの世界。どれほどのパワーがあっても、バットでとらえることをさせなければ、ホームランはおろかヒットすら打てない。この日の試合前までは打率・196、三振も24を数えた。本塁打は順調に数を伸ばす一方で、打率は低迷した。

 現状での弱点であるインコース高めに対して、攻略できていない印象がある。同じ内角でも低め(インロー)は腕が伸びるが、高め(インハイ)は腕が伸びずに窮屈な打撃になる。内角を意識すると、体が開いてしまう。そうなれば、外のボールで打ち取れる。投手から見た場合の一つのセオリーだ。ここに対応できてないのが、現状の佐藤選手だろう。

 対策として、まずはボール球に手を出さないこと。自分のストライクゾーンを広げないことだ。その上で、失投を逃さないことだろう。松井秀喜さんや同級生の高橋由伸氏を見ていても、失投をとらえることで数字を伸ばしていた。その意味で、森下から放った一発は見事だった。

 打率が上がらないからと、小さくまとまって当てにいくような打撃は魅力を失ってしまうと思う。彼の魅力はあのフルスイング。マウンドの投手にとっても脅威だろう。そこはなくさないほうがいいと私は思っている。「壁」を打ち破れば、本塁打だけでなく、打率も自然と上昇していくはずだ。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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