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【緊急分析】8年ぶりの楽天復帰…田中将大投手は日本の野球に再び対応できるのか?

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米大リーグ、ヤンキースからフリーエージェント(FA)になっていた田中将大投手の楽天復帰が、決まった。8年ぶりの日本球界復帰で、年俸も日本歴代最高の9億円(推定)で2年契約。昨季は開幕前に頭部に打球を受けた影響で3勝(3敗)止まりになったものの、メジャーの一線級で投げる全盛期にある。超大型契約で舞い戻る「マー君」が、どんな投球を見せてくれるのか、今季の楽しみが一つ増えた。

 一番の注目点は、契約時期だろう。春季キャンプ前の1月下旬ということで、決断のタイミングが良かったと思う。私が巨人に戻ったときは18年3月。キャンプは終わり、すでにオープン戦に入っていて、急ピッチで仕上げないとという焦りがあった。さらに言えば、日米にはボールとマウンドの違いがある。現役終盤を迎えていた私の経験なので、田中投手と状況が異なることは最初に断っておきたい。その上で、少しでも違いを知りたい読者には読み進めてほしい。

 まずはボールの違い。言い古された表現だが、メジャーのボールは間違いなく滑りやすい。私の場合は、日本のボールはフォークが投げやすすぎた。よく落ちるからいいとかではない。自分のイメージ、感覚と球筋が合致しなければいけない。アジャストにすごく苦労した。

 ただ、私が外から見ている印象で言えば、私とはフォークの握りが違う。私は深く挟むタイプなので、投球時に滑るボールだとコントロールがしづらかった。田中投手は浅めにボールを握っているように見える。感覚は本人に確認していないので、あくまで想像だが、握りが浅い分だけボールが滑る影響は受けづらいはずだ。

 マウンドも同じく使い古された言葉だけど、メジャーのマウンドは掘れない。硬い。対する日本のマウンドは最近は東京ドームなどがメジャー仕様になってきたが、柔らかいマウンドは多い。

 メジャー時代の私はハムストリング(太もも裏)への負担を考慮し、投球時に踏み出した左足を前方に跳ね上げるフォームで投げていた。硬いマウンドの反発で力を生んでいた。日本のマウンドは柔らかいので跳ね上げるフォームから、足に負担がかからないように修正が必要だった。

 田中投手のフォームは踏み出した左足がマウンドに着地した後は、ほとんど動かない。後ろに大きく引いたり、前に跳ね上げたりしないので、ボールの握りと同様に日本のマウンドにもアジャストしやすいフォームと言える。投球フォームも10人の投手がいたら、投げ方も十色。確信的なコメントはできないが、苦労は少ないと思う。

 先発投手の場合は、メジャーは中4日、日本は中5~7日。試合に向けての調整の仕方も変わってくる。アメリカで長く過ごせば、刻まれた体内時計に修正は必要だろう。

 とはいえ、田中投手の年齢は32歳。2年契約を終えても、まだ私のメジャー1年目の34歳だ。今季はコロナ禍という異例の状況だったとはいえ、ポスティングシステムで若くに海を渡った選手は、力を落とさない年齢で日本に戻ることができる。ポスティングシステムの利点だろう。

 1年目から少なくとも2桁が勝てる投手の加入で、先発陣が揃う楽天は、ソフトバンクの強さが際立つパ・リーグの勢力図も変えるかもしれない。日本球界全体を見渡しても、今オフ最大の補強と言える。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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